甘い罠

甘ったるい香りが充満したキッチンで、 真剣な顔をした
花月が、丁寧にクリームを慣らしていた。
大片の 調理道具は 既に片付けられ
残るは 余ったクリームの残るボウルのみ。
「えっと、これで あとはイチゴに ゼラチン塗って…」

「もう 出来たのか?」
「っわ …十兵衛!い、いつのまに
来ていたの?え、っていうか どっから?」

慌てて振り返る 花月の やわらかなほっぺに
ちょこんと クリームが 跳んでいる。

「…先程 鍵を空けた時に、
あと30分は こちらに来るな、と言われたから
居間で 待っていたんだが?」
時計を見ると、すでに 約束の時間を
40分 過ぎていた。
「え? わっ やだ もうこんな時間。
… ごめんね、十兵衛 急いで支度するから
もうちょっと 待ってくれる?」

慌てて振り返ると、その躰は既に
真横に来ていた。
何気なく 見上げた顔 は見慣れていても
良い男だなぁ なんて考えるより先に、
その薄い唇が とてつもなく近くに寄ってくる。
「花月、頬が 汚れてる」
「ホント? わ、恥かし…」
拭い取ろうとした指を軽く 留め、
生温かい、濡れた感触が頬を這った。


噛み付いてやろうか、などと不埒なことが 浮かぶぐらい
ふわふわの頬を、十兵衛が 丁寧に舐め取り、
ついでとばかりに その唇を 閉じた花月の目蓋に
滑らせた。
「…甘い、な」

先程 頬へ跳んだクリームを 舐めとってくれたのと
気付き、花月の頬が 僅かに赤らむ。

「え?十兵衛の為に これでも
 甘さ控えたつもりなんだけど」
「俺は、ケーキなぞ いらないと言ったはずだが?」

とは言っても、それは 半年以上前の会話。
クリスマス こんなケーキケーキだらけだと、
さすがに イヤになるね。という
花月に、自分の誕生日には 買う必要がない、と告げたのだが。

きょとんとした花月が、首を傾げる。
「いらない、なんて言ったっけ?
…それに 銀次さんも楽しみにしてたし」

見る間に 機嫌が悪くなっていく十兵衛。
腕の中にいる花月は、目に見えそうなほど不機嫌
オーラを醸し出す、十兵衛の変わりように
恐る恐る問いかける。

「…あの 十兵衛?どうしたの」
「…どうした、だと…?」

二人の会話を忘れた上、
自分の誕生日の 手作りケーキを
楽しみにしている、他の男の為に作った、なんて聞いて
平常心でいられるものか。

ただでさえ社交的、悪く言えば八方美人な上、
一度許した者には警戒心の欠如した花月に
やきもきしつついたのだ。
なんとか押さえ込んできた嫉妬心が、激しく燃え上がる。

強引に顎を持ち上げ、心持ひらいた薄い唇に
十兵衛の舌が割りこんだ。
いきなりな口付けに 怯えて逃げ惑う舌を絡めとり、
吸い上げた。
「…あ」
 花月の膝から 力が抜け、全身を自分に
凭れさせるまで。

顎を掴んでいた手の一方が腰へ落ち、もう一方が手をとった。
十兵衛が そのまま捕らえた指先に口付ける。

ャツの裾から体の線をなぞるように指を這わせ、
胸上まで 引き上げられた。
そのまま テーブルにのる ボウルから ケーキ作りの
残った生クリームを掬う。


「ケーキが 雷帝の為だというなら 俺は
こちらを 頂こう」
 言葉を理解するより 早く 胸へと ひんやりと冷たい感触。
「やっ…冷たっ…」

瞬間的に 身じろぎし 躰を捩る花月。
それを逃れようとしての行為ととったのか、十兵衛が
ますますのしかかってきた

 熱く濡れたものが胸の先端を舐め、思わず喉をそらす。
その逃れるような動きを許さない手が
強く腰を引き、花月の唇はまたふさがれた。


何とか下がった布地を死守するとばかり
恥かしがって 胸を覆う花月の手を 無理矢理外し
今度は 布越しに 屹立した胸釦を甘噛み。

恥ずかしさを花月が訴えるより早く、舌が布地を濡らす。
湿った薄い生地越しに覗く、淡い鴇色は とてつもなく淫靡だ。

「クリーム付きのイチゴ、頂いた」
紅い乳首を 指で弾き、十兵衛が意地悪く笑った。
真っ赤になって、震える 花月。

「誰が、銀次さんの為のケーキ だって言った?」
「…お前だろう」
「違うっ!  十兵衛のために決まってるっ
それを 銀次さんが 食べてみたいって言ってただけだろ」
「…クリスマスの 会話は 忘れたのか?」
「覚えてるよ ただ、買ったのはキライだって
意味かと思ったから わざわざ 手作りしたのに…」

ならば、わざわざ 雷帝の名を出さねば良いではないか。
…そうは 思っても こちらから
謝るのも 癪に障る。
むっつりと おし黙ったままの十兵衛に
花月が折れた。

「…今回は、誕生日だから 僕が謝ってあげる。
ヘンタイ色魔とかエロ親父かとか痴漢モドキとも
…思うだけにしといてあげるよ」

いや、十分口に出しているのだが

「…でも、コレを 十兵衛の為に 作った事実は 曲げないからね」

無限城での 十兵衛の誕生パーティー。
1人1ピースの筈の ケーキの 盛付けが
十兵衛の前のみ何故か 半ホール据え置かれ。

十兵衛を うらやましがる たれ銀次を 膝にかかえ、
全部 食べ尽くすまで 優しい笑顔で 見守っていた花月。

その目が 笑っていなかったとは、 身近に居た 銀次のみが
知っている事実である。 

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玩具ぼっくす様 1万hitおめでとう小説。
「誕生日がらみで、ご馳走を用意する花月と十兵衛、
いつのまにやら 料理 されてる花月、のシチュでv
裏にいく寸前、皮一枚つながりました仕様 」

裏…じゃないですよね?コレ…
焼きもち旦那OKと 心優しいお言葉頂いてましたので
あわせて まとめてみました。

ふふふ risa様が内容に沿った旦那を
頂けると言う事ですので 揉み手をして
待ち備えておりますv
では このようなもの お受け取り頂け
ありがとうございましたv