殿様遊戯と書いて王様ゲームと読む


「おっしゃぁ 1年の労をねぎらう宴会!
本日は 無礼講だぁっ」
 うぉーーっと 暑苦しい同意の歓声と
同時に、喧騒がはじまる。
 あちらこちらで 飛び交う酒と肴は
年に1度というだけあって、さすがに良いものが
揃えられていた。
 
 盛り上がりも頂点に達した頃

「そっれでは 恒例!! 殿様っ遊戯ぃ〜っ!」
 お調子者で有名な 隊員の一人が、
高らかに なにやら細い木札がいっぱい
入った壷を持ち上げ宣言する。

殿様遊戯 いわゆる壷に入ってる札をひき
『殿様』を引いたものが 他のものに
どのような 命令も出せる遊びである。
 本来は、男女間の密接な盛り上がりを期待して
行う遊戯であるが、それはそれ。
 ヤロー同士の おふざけが入り 毎年
鬱陶しいほどの盛り上がりを見せるので、
恒例となっているのである。

 ヤロー同士の接吻とか 刺身盛り合わせ献上とか
色々な 課題が終了された後
「おっし 次の殿は 俺だっ」
勢いよく殿様札を掲げた 一人が
立ち上がる。
「ではっ 命令! じゃじゃーんっ」
自らで効果音を付けながら、差し出したのは1冊の草紙。

「局長 秘蔵の超うはうは猥本! 開いたページ
声に出して 3番読めっ!」
 ブハッと飲んでいた酒を吹いたのは、
言わずと知れた局長。
「くぉら てめぇっ! どっから
持ってきやがったっ」
 まぁまぁ と周囲に諌められ
無礼講の一言で、仕方なく 引き下がる。
「…で、3番はどいつだ」
「あ、俺でさァ」
 答えた人物を見て、他の者が一斉に
内心で殿役を褒め称える。
『よくぞ 指名したっ!!』

 答えたのは沖田。
むさい男ども(一部例外もいるが)のなかの
一輪の花。
 たとえ再放送が見たいからという理由で、
バズーカを味方もろとも、ぶっ放そうが、
土方は呑むのが主なのをいい事に、
膳をそのまま入れ替えて、2人前分の料理を
頬ばっていようが、見た目は
可憐なお花ちゃんなのである。

「こいつですかィ?」
周囲の期待が 高まる中、一身に
視線を浴びながら、スタスタと歩み寄る沖田。
そのまま前振りもなく 草紙をひらき
口を開く。
『お茂の----(ピーーッ 発禁用語)は
 既に------であった。
滾る---に 支配された辰三は、----をその
欲のまま-------た。『---っ! 駄目よ
辰三さん----が、----しちゃ…あぁっ----しちゃうぅ!」
-----は ----の濡れそぼ…』
「やめんかーっ!」

大声で、淡々とした朗読を遮ったのは
ある意味 常識人
土方だった。
「違うだろ!? エロ話を表情も変えずに
大声で 読み上げるなっ!」
 こっそりと頷く 周囲のもの。
彼らが思い描いていたのは
草紙を開いた瞬間 頬を染める沖田。
恥ずかしそうに 朗読をする沖田。
そんな 沖田の唇から、洩れる卑猥な言葉を
揶揄する自分たち…であって、
眉一つ動かさず、読み上げていく沖田ではない。

が 
「そうは言っても、今更
この程度で 興奮しろって方が無理でさァ」
ヒラヒラと冊子を振って
 返って来た沖田の言葉に、一同凍りつく。
局長秘蔵だけあって、短い朗読ながらもかなり
エロエロといえる文章。
 感情のない 沖田の棒読みにも
前かがみになってる隊員多数。
『それを、この程度ときたか!?』

 
 あらためて、『真選組 いろんな意味での
最強NO.1』は この男であると
認識する 一同であった。