成行きむかし話

昔むかし 有るところに、健気な一人の少女がおりました。
 彼女は 義理の親と姉妹に虐げられながらも
 まっすぐ明るく、苦しい時にも笑顔を忘れない
キョーコシンデレラと言いました。

 だが、そんなキョーコは ある日
森で出遭った ショウ王子へと恋に落ち…
弄ばれて 棄てられてしまいました。
 彼女の復讐は ここから始まります。

「…王子様って、ステキよね?」
街で売られている、王子の絵姿を抱きしめた義理の姉
ミモリは 幸せそうに、絵に見入っています。

(…自分のブロマイド(絵姿)を
街で売らせる 王子なんて、ナルシストもいいとこよ)
 瞳を輝かせ、純粋に王子を思う 姉の姿に
キョーコは胸を痛めつつも、傷つけたくなく 黙っていました。
 
 だが、義理の父親であるレンは 鋭く
シンデレラの背後の怨オーラに、気付いたようです。

「…家の中に、外の恨みを持ち込むのは
やめて欲しいね」

 言葉遣いだけなら、頼みごとのような
命令文を使ってキョーコを見下ろすレン。
 何も知らないくせに、と言い返したくても、
周囲の女性を 見るだけで恍惚とさせる
圧倒的な美貌が、キョーコを萎縮させます。

そんな ある日。
「お城の 舞踏会への招待状よv
王子様が、お誕生日をきっかけに
傍に仕えるメイドを探してるのですって」

ウレシさにクルクル廻る姉を、どう留めようか
迷うキョーコ。
(ダメよっ! どう考えたって
それは あの男が 自分のステキさを
周囲にアピールしたいがと同時に
美味しそうな女の人がいないか
探すためのイベントよっ!)
…等とは、さすがに 口にできません。
 逡巡しているウチに、ミモリは素早く身支度を
すませ、あっという間にお城に向かってしまいました。

 自分のおこづかいを、ほぼ王子様に貢いでしまっていた
キョーコには、舞踏会へ来て行くドレスがありません。
「あぁ…みすみす、あの男の毒牙に
かかる、女の子を見捨てるなんて…」

キョーコが思わず くやし泣きをしている時でした。
ボワンッという 間の抜けた破裂音とともに、
 全身黒いローブ姿の、良い人そうですが
あやしいスタイルの青年が、立っていました。
 
「えー マネージャ…じゃなくて、
社という魔法使いです。お話の展開上、メイクアップ姿を
僕がプレゼントしますね」
 
 生まれてこの方、化粧などしたことなかった
キョーコは、着飾った己の姿を、鏡に映し
美しくなった 自分の姿に呆然とします。

「これで… あの男も見返せるし、
舞踏会にだって乗り込めるわ!」
 ドレスを掲げ、玄関へと向うシンデレラ。

だが、その扉の前には、レンがいました。
 美しくなったキョーコの姿に、短く 息を呑み
それでも 立ちふさがるレン。
「…まだ、あの男の事が好きなのか…?」

「…え?…」

 レンは、王子と自分の関係を知っていたのです。
そして、華麗な姿で舞踏会へ行こうとしている
キョーコを見て、誤解したのでしょう。

「こ、これは ちがっ…」

 キョーコの台詞が 終るより先に。
レンの逞しい腕が、キョーコを抱き締めました。

「俺は… 昔から 君を見ていた…
今までに した事もない
そんな装いまでして… まだ…」

ショウを、思っているのか との言葉は
続きませんでした。
 逃げられない強い力で、レンが更に
腕に力を込めたからです。
そして その少し乱暴な動作と裏腹の
途切れがちな声。 身震いしそうな、
優しさと 今までしらなかったレンの独占欲に曝された
キョーコは、頭が真っ白になりました。

「俺を、見てくれ」
促す声に、キョーコは頭を上げます。
 腰から離れた、レンの片手が
優しく 顎へと伸びました。

その一瞬。
 二人の唇が 淡く…それでも
確かに 重なりました。




「だからっ! あの時は
ミモリちゃんを 助けにっ」

「そう」
にこやかに 笑ったレンは
それ以上会話を続けさせてくれません。 
「もうっ!ミモリちゃんが
傷ついて 泣いてきたらどうするんですっ!?」

「…俺はね。 優しい人だと
周囲に思われてるらしいけど、 …どうでもいい相手には
適当に相手が望む 返事をしているだけなんだ。
実際は独占欲が深い、ワガママな男なんだよ」
「だから?」
「彼女の様子を、もう調査済み。
王子と恋人ではないけど、尽くす事で幸せに
やってるらしい。
…だから、人の心配ばかりしないで
俺にも もう少し笑顔を見せてくれないと
どんな行動するか、わからないよ」

 涼しげな笑顔で、サラリと脅迫を述べるレン。
確かに、これでは 自分の安全を考える事が
第一の 生活になりそうだ、と思いつつ。
 なぜか 頬が 紅くなるのを押さえきれない
シンデレラがおりましたとさ。

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 10万hitリク1 蓮香さんより
ミモリとキョーコ、蓮とショウとのリクです。
ありがとうございました。
…しまった 尚が名前だけで、実際にお話
登場してません…。 しかも、お笑い系の話なのに
今まででコレが一番 ラブラブな蓮キョってどうよと
自分でも思います(笑)