桜吹雪

「二人とも、見て。ほら、満開だよ」

花月のはしゃいだような声がその場に響く
その後ろ姿を十兵衛と俊樹は追いかけた

事の始まりは2日前


「ね、MAKUBEX。十兵衛と俊樹借りてっていいかな?」
ある日、無限城に訪問した花月はマクベスにそう聞いた
「二人を?まぁ、今は無限城も落ち着いてるし別に良いけど・・・」
MAKUBEXから了承の言葉を聞くと、花月は嬉しそうに微笑む
「有り難う、MAKUBEX。」
「で、何処かに三人で行くのかい?」
「あぁ、それは・・・」
花月が答えようとしたとき、マクベスの部屋の扉ががちゃりと音を立てて開く
そこには今話の種となっていた人物がいた
「十兵衛、俊樹」
花月が優しげ声で彼らの名を呼ぶ
「「花月」」
部屋に入ってきた二人の声が重なった
そのまま二人して一瞬で花月の傍に来て、口々に問う
「花月、連絡もなしにここに来るなんて・・一体どうしたんだ?」
「まさか、何か問題でも起きたのか!?」
「何、それなら何故俺たちを呼ばなかった!」
そう言って詰め寄る二人の男に花月は苦笑しながら答える
「そういうわけじゃないって。君たちに用があったのは確かだけどね」
問題が特にないとわかると、二人は少々安心したような顔を見せ、花月から少し離れる
「まったく・・・花月クンのことになるとみょーに気が合うんだから」
ぼやくMAKUBEXにそれに苦笑する朔羅
「・・・で、用は何だ?花月」
あぁ、と花月は改めて二人の方へ向き直った
「ちょっとつき合って欲しいんだ」
「つき合う?」
「うん」
そう答えると花月はにこ、と微笑む
「つき合ってくれる?一応MAKUBEXの許可は取ったけど」
「そうか。それなら構わん」
すると花月は嬉しそうに
「ホント?じゃあ行こうか」
そういうと、スタスタと歩いて部屋を出ていった
「あ、ちょっと待て。花月」
二人も慌てて花月を追う


・・・因みに後に残されたMAKUBEXが
「それなら、っていうか僕の許可が無くても君たち花月クンと一緒に行く気満々だっ
ただろ」
とかぼやいていたのは別の話

「ここは・・・」
そこには幼い頃よく見た・・・
今はもう見なくなってしまった満開の「花」が
美しい桜が咲き乱れていた
「・・よくこんな所見つけたな」
今はどんどん自然が少なくなっているというのに
こんなにも綺麗な場所がこの町に残っていたなんて
「綺麗でしょ?我が侭かも知れないけど十兵衛と俊樹と3人でこれが見たかったん
だ」
そう言う花月の瞳は嬉しそうに細められていて
「でも、たまには・・こういうのも・・・良いんじゃないかなって思って」
あぁ、そうだな、と十兵衛が受け答える
「確かに久しぶりにこういうのもいいかもしれんな」
「あぁ、無限城ではこういうものを見る機会が無かったしな」
十兵衛の言葉に俊樹は頷く
それに・・・嬉しかったのだ
桜が綺麗、ということだけではなく
「花月」と時を過ごせるということ
無限城にいる自分たちは花月に会う機会が少ない
昔、彼は毎日自分たちの隣にあった
けれど今は違う
無限城にいることに不満があるわけじゃない
けれどもやはり願ってしまうのだ
花月の、隣を

そこが自分の居場所であると思うから

「十兵衛、俊樹」
花月が二人に声をかける
「また、来ようね」

「・・・また?」
「うん、また来よう。嫌かい?」
「嫌なわけじゃないが」
「だったらまた来よう?ね?」

・・・三人でまた来たい

花月は小さな声でそう言った

ここは自分の大切な場所だから
だから大切な人である君たちと一緒に来たい

そう、小さい声で呟いた後花月はすぐににこりと笑う
「さて、もう帰ろうか。随分時間も経っちゃったしね」
そして直ぐにくるりと方向を変え、自分から歩き出す
その後ろ姿を見ながら十兵衛は口を開く

「かなわない・・・な」
「・・・あぁ」

かなわない
自分たちは彼には、勝てない

「花月」という名の守るべき愛しい存在には

きっとずっとずっと・・かなわない


でも、だからこそ
その存在を

「護り続けよう」

俺たちの命が続く限り
そして
彼がそこにいる限り

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「Eternal Wing」の華音様より賜り品です!! 相互リンク企画・と言う事で
今なら小説差し上げますキャンペーンvの御優しいお言葉に、すぐさま跳びついて
「下さい!!」と、図々しくも、こんな 素敵な風雅小説頂いちゃいましたっ(>_<)/

 花月と共に過ごせる時間が、何より大事に思えるという親衛隊の言葉が、
私の抱いてる風雅イメージそのもので、読んだ瞬間、ツボに来ました。
 そして、ホノボノなのに、どことなく せつなげで甘い三人が、大好きです。

 この度は、LINK頂けた上、こんな 素敵なお話、
ありがとうございましたvv 心よりお礼申し上げます。
 …そして無理矢理 置き逃げ屋となって 挿絵など押し付けてしまう事
お許し下さいませ(^^;)