プレゼント

「何か 欲しいものはあるか?」
十兵衛の 何気ない問いは
誕生日の事だろうと、見当がつく。
久しぶりのHONKYTONKでの逢瀬は、
何故か知人フルメンバー
(コンプリート済)に 囲まれてのモノだった。

周囲も耳を欹てているので、
うかつなことは言えない。

「えっとね…身に付けられるモノが
嬉しいな」
(ホントは、皆がそろって お祝いしてくれるだけで
充分なんだけどね)
聡い花月には、この不自然な集いも
自分の為であるとすぐに悟れた。
 あまり物質に 執着のなさそうな花月に、
何をプレゼントしたら良いか
悩んだ挙句、十兵衛を使って
呼び寄せたのだろう。

 花月の言葉が終わるや否や、ほぼ
全員が扉へと殺到したのだから
語るに及ばず、である。
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「花月、誕生日おめでとう」
俊樹が差し出したのは、半透明なジュエリーケースに
納められた髪留めだった。
プラチナを主体に、中央に
小粒だが質良いピンクスタールビーが
埋め込まれ、唐草紋様の透かし彫りが 施されている。
 花月をイメージして、作らせたというのだから
わざわざオーダーしたのだろう。
 早速 留められたそれは、豊かな黒髪に
映え、よく似合ったいた。

「えぇ!? 身に付けるものって
そーいう意味だったんですか?」
看板娘二人組、夏実とレナが困ったように
顔を見合わせ、可愛くラッピングされた
袋を差し出した。
「…中国服です。」
「ありがとう」
微笑む花月に、決まり悪そうに
二人がぎこちなく、笑う。
「えーワイは …白い服」
「お、俺と蛮ちゃんからは 『身に付けるもの!』」
「…元々は 海で着てた服よ」
笑師・銀次・ヘヴンと 何故か揃って
花月と目を合わさぬように、
一斉にプレゼントを渡す。



プレゼントを渡し終えた後は、
いつも通りの雰囲気に戻り、
和やかなまま パーティは終わった。

 帰宅後、プレゼントを開いた花月が
見たものは、包装紙の下から
表れる チャイナ服・ナース服・ふりふりエプロン
・セーラー服…。

震える手で、絡まりあったリボンを
引っ張る花月。
 ブチッと 鋭い音が響いた。
「………みんな… 僕を 
 どーいう イメージで……」

 己の外見が悪いのかと、
これみよがしにプロテインを多量に
服用する花月の姿と、それを視界から外し
見ないフリを行う他のメンバー。

喫茶HONKYTONKは、とめるに停められぬ
花月のおかげで、しばらく
満員御礼状態が続いたらしい。