男らしい二人

「銀次さん〜っ」
 とてとてと、遠方から手を振って近づく影に、
銀次が満面の笑みを浮かべる。

「あ、カヅっちゃんだー 久しぶりぃ」
「はい、久々に会えて
嬉しいです」
「俺も 俺もー」

 語尾にハートマークが付きかねない
女子高生のような会話に、横にいた蛮が
顔をしかめている。

「…おめーらな、どう考えても
いい年のヤロー同士が交わす挨拶じゃねーだろ」
「えー?でも俺とカヅっちゃんが

『久しぶりだな、花月』
『あぁ… 逢いたかったぜ』
…なんて男らしい会話する方が寒いじゃん。」
「……」
 タバコを銜え直した、蛮の苦い顔は
その様子を想像しているのだろう。
  以下 蛮の妄想。

その1 山合の、深い崖。
崩れそうになる橋桁で、落ちていく花月。
  全身で、手を差し伸ばす銀次。
『ファイトーーッ』
『イッパーツッ!』
…って これは某CMだろ 却下。

その2 いま時 前を 開けた長ランで、
胸元はサラシ。 背後には『喧嘩上等』の
旗印がたなびいている。
 『あぁ? ヤンのか お前』
なぜか雷帝バージョンの銀次が、
同じような姿の花月へ、詰め寄り…
 あ、サラシ巻いてる胸元
覗き込みやがった。

 確かに、想像上でもサラシ姿の花月は
…男らしいというより、艶かしい。
 すかさず入る、鋭いビンタ…
…って違うっ! これじゃ単なる男女の
痴話げんかじゃねぇか…

その3 土方姿で、現場工事に
励む 銀次と花月。 この時点で既に
相当間違ってる気もするが、それは さておき。
…いきなり 現われた
サムライと遠当てが
『花月にそんな事はさせられんっ!!』とツルハシを
取り上げやがった…。
 げっ よく見ると、電柱の影には来栖と天子峰が
銀次を見守ってやがる。
 寒すぎる光景だ…

「……蛮ちゃん、どうしたの?」

 いきなり黙り込んだ蛮を、不審げに見上げる銀次。

「いや… 俺様にも…
間違いはある…」
 そう言ったきり、フラフラと進み行く蛮。
その背中には、滲み出る敗北感の文字。
 争いもせずに勝利者となった
花月と銀次は、訳もわからぬまま
無言で首をひねるばかりであった。

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みゅーのシロ様のイラスト欲しさに、
LINKお礼と銘打って押しつけさせて頂きました。
あいかわらず、うちの銀ちゃんと花ちゃんは
清くて仲良いお友達です。