小さな躰で、花火に一生懸命
手を伸ばす花月。
 乗り出そうとする、その身を
俺が慌てて 抱きかかえる。
「駄目だよ、あれは 
手が 届かないんだ。
…高いところだから」
 わかったのか、わからなかったのか
きょとんとした表情で、俺を見上げる花月。
すっぽりと 俺の腕の中に納まる
体は、ふわふわと柔らかくて、とても
同じ人間だとは思えない。

甘く、優しい匂い。
そして、それが一つの記憶を呼び覚ます。

 風鳥院宗家での、打合せ。
父に付いて来た僕は、することもなく
あちこちを 探検していた。
 夕暮れの中、一人で歩くには
寂しいほどの広さだ。
 カタリ、と上り殿の向こうで 音がした。
振り向くが、そこには誰もいない。
…いや、よくみれば 足元に
子どもが一人。
(僕もまだ子供だけど、それより小さい。
…これはまだ 赤ん坊と 呼ぶのだろうか)
 にっこりと微笑み 小さな手で俺の
脚裾を ぎゅっと 掴んだ。
以前、母者が『幼子や小動物が
殊のほか可愛いのは、相手の保護本能を
刺激するからだ』と教えてくれた。
 その時は意味がわからなかったが、
今ならわかる。 このいじらしい程
小さな指先を、僕は護ってあげたいと思った。
「… はじめまして。 僕は十兵衛だよ
君は?」
 これが、二人の出会い。

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俊樹のお誕生日で、俊樹はいっぱい イイ夢見れましたので、
久々に新婚夫婦の方を。俊花が幼少期に出会ってるなら
十花は、更なる歴史 重ねたろうと…出遭いがついに
乳児期にまで遡ってしまいました(笑)