「いつも… 世話になってる例なんだが…
よかったら 受けとってくれないか」

人妻へと、貴金属をプレゼントする行為への
後ろめたさからか、目線を外し ジュエリーケースを
差出す俊樹。

高級そうなベルベット張りと、縁に金の細工が
見覚えのあるものであった花月は
少し首を傾げる。
(十兵衛が この前プレゼントしてくれた指輪の
ケースとよく似てるけど… ちょっとこっちの方が
大きいみたい)
「お礼といっても…僕は俊樹に何もしてないよ?」
むしろ、日頃から色々と持ってきてもらっている
のだから、お世話になってるというなら
こちらの方が大きい。
「…お前が 用意してくれる食事や、
疲れているときに見せてくれる 笑顔は
…俺にとって 何より大事なんだ」

少し恥かしいセリフを、今度はまっすぐに
花月の瞳をみつめ、返す俊樹。

断っては、かえって傷つけるかもしれないと
そっとケースを開ける 花月。
「…これ…」
「お前に、似合うと思って」

ケースの中央には、細い鎖のネックレス。
モチーフは、華と月。
つい先日、十兵衛から受け取ったものと
同じだった。
確か、十兵衛もプレゼントをしてくれる時
同じような事を言っていた。

十兵衛と俊樹 昔は反目していたが
やはりどこか似ているのかもしれない。
そう思った花月が クスリと笑う。
「…どうかしたか?」
「ううん、素敵なプレゼント ありがとう。
…よかったら つけてくれる?」
言いながら、長い髪を片側に流し
細い首筋を 俊樹へ晒す花月。

白く、まろみを帯びた肩の線に
俊樹が 思わずゴクリと喉を鳴らした。
「…? 俊樹どうかした」
「あ、いや」


「よく、似合っている」
「ありがとう」
お礼に、と昼食に誘われた俊樹は
その後1週間、大変な幸福に包まれていた。

******************
すごいです!40回突破です。
それもこれも 厭きずに付合ってくださる
ふーかさんの おかげです♪
40回記念と言う事で、俊樹をちょっと
幸せにしてみました。…が、描いたイラスト
違う意味の昼メロっぽく…(笑)
有閑マダムとツバメ?