花月へのプレゼントを選び、仕事後街を歩いていた十兵衛。
ふと顔を上げると、偶然通りがかったらしい笑師と目が合った。
「おや 十兵衛はん 買い物でっか? ウィンドウショッピングっちゅう
訳でも あらへんやろうし… ははぁ〜ん 奥さんにプレゼントやな。
ほんま 仲良ぉて ええなぁ」
「う…いや、まぁ」
別に、後ろめたい事など何一つないのだが、古風な躾で育てられた十兵衛は
そういったことを態度で示すのは、気恥ずかしく それとなく話題をかわす。
「それより、その顔はどうかしたのか?」
 十兵衛が尋ねたのは もっともな事で。
笑師の顔の一部には傷テープ。また、それが貼られてない個所にも 引掻き傷やら
目立たないが 薄い鬱血が表れていた。

「あ〜昨日なんやけどな」
笑師は またしても、ヘルプでクラブに出ていたのだが、
客とのいざこざに まきこまれたという。
「まぁ、ライ…あ、これは銀次ハンの源氏名なんやけど、
熱狂的なFANが多くてなぁ。
中でも昨日は、ずっと銀次ハンを独占しとった医者の所に、カオル姐さん
が偶々来てしもて」
 カオル、というのは 近所の店で働いているため 夜半遅く出ないと
来店する事はないのだが、 昨日は非番だったらしい。
「…で、まぁ その 間に 挟まれてもうたのが 俺やねん」

 以下 夕べの再現。
「ちょっと!そこの あんた!!離れなさいよっ ライが困ってるのが
わからないの!?」
金切り声で、睨み付けるカオルの声に、煩わしげに僅かだが眉を潜める赤屍。

「遊び場のマナーもわきまえない方は、見苦しいですね。目障りですよ」
「ね、姐さん 今日はこちらが ライを独占指名 しとりますねん
慌てて入る、笑師まで 憎憎しげに睨むカオル。
「そう…客として、ね。なら そっちの男以上の 金額を出せばライは
私のものね!? ちょっと、アンタ! リシャール3本入れるわ!」
 息を潜め、成行きを眺めていた周囲から おぉ…と どよめきがわく。
リシャールとは 一般売り20万ほどの、 ボトルはバカラ製という超高級酒である_。
一般で20万なのだから、こういった夜の店でのキープでは35万はするだろう。

「…で、そしたら 今度は医者のほうが 万札で作られたバラとかいうのを
『この場を 騒がした迷惑代』
チップとかいうて 店に渡して… まぁ、姐さん気が短いからなぁ
暴れ出して 大変やったわ」
「…その間 店長はどうしてたんだ?」
「あン人は、 おもしろがっとるだけや。 もっとも さすがに
客商売のプロやな。
客に迷惑かけた お詫びっちゅーて、その場に居た客の支払いは 
一切受け取らんかったわ。…おかげで ライは
また貧乏になったらしいけどな」
「…何故だ? 客がいっぱい金を使ったのだろう?」
「客同志を うまく捌けへんホストから、ペナルティー
取るんは 当たり前でっせ。 姐さんが暴れたせいで
リシャールは5本ぐらい、割れてしもうたし…
まぁ、わいは ケガ代の名目で 給料 弾んでもろうたから
えぇけど」

…銀次が貧乏なのは、超高級酒を三本入れる代りに、五本割っていくような
客に 好かれているからなのだな、と妙に納得をする 十兵衛だった。

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昼メロ ついに30突破です! …めでたい回なのに、
新妻も米屋もいません。 旦那も文章にしか…。
確か 20回の時は、銀次+花月ペア(笑)

カオル姐さんvs赤屍さん 怖くて尻ゴミしていたのですが
ふーかさんが、OK出してくれたので、調子に乗って
描いちゃいました。
あ、彼女はテレビオリジナルキャラです。
原作にはいないですよ〜。