「十兵衛〜〜これ、蛮ちゃんから預かってきたよぉ〜〜〜」
と、勢いよく走ってきた銀次が、ちょっとした段差に蹴躓いて転ぶ。。
「だ、、大丈夫か???銀次。。」
「う、、、うううん、あはv。平気平気〜」
こいつは、、現場に建設にきているのか。。破壊にきているのか、、、、

「はい、、これ!」
十兵衛に茶封筒を渡す。
よく、ここまでなくさずに持ってきたと思う。。。。
(なくすと蛮ちゃんになぐられるからねv)

中味は?、、とみると、、「現金2万円」。
「をあ〜〜お金じゃん!!!」
「これは??なんなのだ?この間のホストの日給なら、もうもらったが??」
「あれ?手紙が入ってるみたいだね〜」
銀次に言われて、中の便箋に眼をやる。

中からは、店長、鏡からの手紙がでてきた。
「筧くんへ
このまえは、ヘルプありがとう。お陰で助かったよ。なかなか評判がよくてね。彼はいないのかってリピーターの客に質問されちゃたよ。なんか、まだ不慣れな感じが新鮮だったのと、水割りをつくる君の優雅な物腰が美しかったんだって!
よかったら、また来て。助けてくれないかな?待ってるよv
これは、僕から、ボーナスってとこかな」

「いいなぁ。。十兵衛、、俺なんか、、お金一銭ももらえなかったよ」
ちょ〜〜うらやましそうに銀次が見つめる。。。
そ、、そういえば、マイ?なんとかとか、、バカ?とかいう高い物を壊しまくったらしいからな、、、銀次には、払ってもらう金はあっても、、、払う金はないんだろう。。
それでも、笑師から聞いた話では、常連のしかも、上上上お得意様の医者が、銀次をすこぶる気にいっているらしいからな、、、
意外にもとはとれているのかもしれぬな、、あの店長はあなどれん、と十兵衛は思う。

花月になにかプレゼントをしたくて始めたバイトだったが。。。
何をあげたら、喜んでくれるだろう。。。
「なぁ?銀次?貴様は、美堂からもらえるとしたら、、何が欲しい?」
「えっとね!焼きそばパンもいいし、えっとねえっとね!駅前のパン屋のメロンパンもいいなぁ〜vvvあとね!」
「いや、、もうパンの話はよい、、、」
銀次に聞くのではなかったと、、反省する十兵衛。

「馬車親方、、相談があるのですが、、あの、、親方は、奥方に何をプレゼントしているのですか?」
十兵衛の真剣な顔に、、思わず、親方の頑強な顔もほころぶ、、
「お前は、本当にご内助の事を愛しておられるのだな」
思わぬことを言われて、、、耳たぶまで真っ赤になってしまった十兵衛。
その様子がとても、かわいらしかったので、ついつい笑ってしまう馬車親方。
「か、、からかわないでください」
「あはは、すまんすまん、、まぁ、お前の奥方なら、きっと、お前と一緒にいるだけで、何もいらない、、それだけで幸せだ、、と言うだろうな、、、」
確かに花月ならそう言うだろうと思う。
しかし、一度も会わせたこともないのに、、歳の功なのか?推察力はたいしたものだ。

「お前は、指輪をしていないようだが、、結婚指輪はしないのか?」
そう言われて、、そういえばと思う。
世間一般の常識など、自分達の世界では無縁のものだが、、、
常識でいうところの「普通」は、夫婦は同じ指輪を互いに左手の薬指にするものだという。
自分のごつごつした指になど、あの丸い金属が似合うとは思わないが、、、
花月の、桜貝のようなピンク色の爪がついた細長くしなやかな白魚のような指には、キラキラ光る指輪はとてもよく似合うだろう。。
それに、自分とおそろいであるということにも心惹かれる。

「ふたりで同じものを。。。。。。。。。」
実際に二人で住んで、夫婦として暮らしてはいるが、、結婚指輪を二人ではめるという行為そのものが、名実ともに夫婦として認められたって感じがするものだ。。
(とくに、自分と同じ指輪を花月がすることで、、こいつは紛れもなく俺のものなのだ、、という証を立てられる気がする)
そんな独占欲が、十兵衛の「結婚指輪」を買うぞ!という決意を駆り立てる。

よし!決めた。。。それにしよう。。。。
そう思った十兵衛であったが、実際買うとなると、2万で2つの指輪を買うのは、、金額的に困難であることに気づかされることになる。。

「どうせ買うなら、ちゃんとしたものを買ってあげたい。。」
そう思った十兵衛は、、鏡の手紙をもう一度読み返した。。。

「よかったら、また来て。助けてくれないかな?待ってるよv」
そこの1行がやけに、大きく、ふちどったように、はっきりと見えた気がした。

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銀ちゃん!パンぐらいなら 私が幾らでも…
(ウチの近所に 車で揚げたて揚げパンを1個100円で
販売しているのが来るのだが、結構盛況。しかし昔は食が
細かったので<…昔はね… あのぎとぎとパン
苦手でした。きな粉バージョンの黄金パンとか ココアまぶした
バージョンもあるらしい)

指輪〜新婚ですな! 微笑ましい…が それを
見た瞬間の俊樹の心情を考えると 憐れ(^_^;)