昼メロ劇場17


「悪ィ マジ恩にきるから!」
 片目を瞑った蛮に、
困惑ぎみの十兵衛が、ボソリと呟く。
「…俺より、もっと適役がいるだろうに…」
 あきらかに、自分のパートナーを指している
だろう言葉に、蛮が苦笑する。
「銀次の事か? あいつは確かに
接客向きの性格だし、年下好きお姉さま方の
ウケも良いんだけどよ…」
「けど 何だ?」
「…歩くごとに 何かしら
破壊してまわりやがるんだ」

「…クス この前はすごかったよね」
「そうそう、一歩目でマイセンの皿(高い)
割って、転びかけた二歩目でロイヤルコペンハーゲン
のカメオシリーズの壷を割って(高い)
最後にバカラの水差し(メチャメチャ高い)
全滅させよったしな」
笑いながら、突っ込んでくる 店長 鏡と、
同じくヘルプとして呼ばれたらしい、
笑師という青年。
 笑師は、日頃 吉本デビューを目指しているとかで、
微妙なデザインのサングラスと、微妙な衣装に
初対面の十兵衛の 印象は
(ホストと言っても、…いろんなタイプが
いるものだ)という 幾分失礼なものだった。
だが、そのグラスを外し 衣装を変え、
髪を下した姿は
標準以上のルックスで、店長の「質の高さ」を
揃える観察眼を、さすがと思わせる。
何より、笑師の軽妙な口舌は
 気軽に呑みたい女性陣に、評判が良さそうだ。
(…俺が…同じように こなせるだろうか…)
問い掛けるまでも無く、否だ。
 思考に耽り、無言で固まった十兵衛の
肩を、店長が軽く叩く。
「大丈夫、君は話術向きじゃないってのは
わかるから。今日は案内と運び 手伝ってもらえるかな?
こっちから 無理なお願いしてるからお礼も
それなりに弾むし、…あの可愛い奥さんにも
ばれないよう、戒言令出すからさ。」
「…しかし…」
それでも迷う十兵衛の袖を、笑師が
コッソリ引っ張る。
「…大丈夫でっせ。この店長 どーいうルート
持っとるのかは、不明やけど
俺らのやってること、
ばっちり逐一チェックしとんねん。
一説によると 盗撮が趣味っちゅー
やばい 噂もあるぐらい…」
 嘘か冗談かわからぬ言葉だが、
真実も含まれているのでろう。
日頃、つつましい生活を送る花月に
何かプレゼントの一つでも、買ってやりたい。
 そう思った十兵衛は、承諾をしたのだった。

++++++++++++++++++

旦那の日常パート2(笑) …おかしいな
ふーかさんにメールした時点では、
「バーテン俊樹が書いてみたい」だったのに…(^_^;)

そして!! 今回の見所 ふーかさんのホスト笑師!
素で、かっこいい…
風雅すきーなクセに、傍にいたいNO.1が何故か笑師な
所まで、好みが似ていて嬉しかった葉月でした