昼メロ劇場15
イラストはNeoDoll 碧空りいむ様♪

「…その、今日はすまなかったな」
台所で、カチャカチャと食器を洗う音に
まぎれぬ様、十兵衛が花月へと語りかけた。
「え?楽しかったよ」
手は休めずに、そのまま帰ってくる返答は
弾んでいて、気を使ってのものでも
なさそうだった。
「しかし、準備もたいへんだったろう」
尚も言う十兵衛に、軽く笑い声が返る。
「あれだけ、気持ちよく食べてくれたら
作り甲斐もあるし、…気持ちいいよ」
 実際、料理した側としては
何を食べても
「コレおいしいーー あ、
蛮ちゃんずるい!それ俺のだってっばっ」
と口一杯に頬張る銀次と、
一言
「…美味ぇ」とだけ呟いて
銀次に負けず劣らずもくもくと
食べつづけた蛮の反応は、
 嬉しいものだった。 
「また、遊びにきてくれると嬉しいな」
 十兵衛の座る食卓に花月の手に、
少し大ぶりな茶碗が載っている。
「はい、簡単なものしか作れなかったけど。
…十兵衛、二人に負けて食べ損ねちゃったもんね」
 コトリと置かれた、お茶漬け。
それでも 出来合いのものではなく
きちんとほぐしたシャケに、香ばしく焼いた皮を
細かく刻み、炙った海苔と山葵に
三つ葉が添えられている。
(…良い嫁をもらった…)
 常日頃から、そうは思っているが
特に十兵衛が強く思うのは、こういった
何も言わずに 準備しておいてくれる
花月の気配りだった。
「うまい」
「そう? …良いお米使ってるからかな」
「そうか…米なんて、そうそう
味は変わらんだろうと思っていたが…」

(…どうして、俊樹から貰った…って
言いそびれちゃったんだろう…。
十兵衛だって、きっと再会したら
喜ぶと思うのに…)
 
 
 コンッ…軽く1回ノックのあと
コンコン…と2回扉を叩く音。
 何度かの来訪で、これが俊樹の音だと
判っている花月は、そのまま扉を開ける。
「ちょうど 良かった
お米 切れかかってて頼みたいと思ってたんだ」
「あ…いや、その手ぶらじゃ
何かと思って…今日も手土産に
持って来たんだが…」
 どさり、と差し出された袋。
花月の顔に、軽い躊躇が浮かぶ。
「これ… 僕が普段買ってるのと違って…
高いやつでしょう? そんな毎回…
貰ったら 悪いよ」

 財布を握っている花月は、高級品の米が
意外と高いものであると知っている。
「大したものじゃない。
…それより、花月が笑顔で受け取って
くれる方が…数倍 俺は嬉しい」
 それでも、少しためらう花月だったが、
強引に運び込まれてしまった、
それに、ようやく諦めがついたようだ。
「うん、本当はね…助かるし、
嬉しい ありがとう」

 無邪気な花月の笑顔に、遠い過去を重ねる俊樹。
既に、手の届かぬ人かと 諦めてはいたが、
こうして近くに居ると、…胸が痛い。
(俺も…案外 未練がましいな)
ただ…傍にいられるだけで…
 こんなにも幸せな気分で、いられる。
もうしばらく、このままの関係でいたい。
 そう望んでしまう、俊樹だった。

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今回はりいむ様から頂いた 耀く笑顔の花月v
に葉月が駄文を付けさせて頂きました。
 俊樹は未練がましくてこそ俊樹!
表舞台一流企業の若手部長になっても、
花月を欲しがる俊樹ですもの♪
…相変わらず、俊樹スキーを自称してるクセに
ひどいこと言ってる葉月でした。