宝物



 じゃれる
「大佐ー」
「んー。」

折角の休日、肌寒くなってきたこの時期に、お日様はぴっかり輝いて
ぽかぽかと暖かい。

こんな日はお弁当でも持ってピクニックとかにでもしゃれ込んで日がな
一日大佐の寝顔を眺めていたいのに。
「大佐、大佐。それ急ぎなんですか?」

「そう言うわけではないが、探していた資料がやっと手に入ったから、
今のうちにまとめておきたくてな…。」

書類仕事が嫌いで現場好きの大佐でも、やっぱり研究者ってのは一個の
ものに集中しだすと他が目に入らないらしい。家にこもってオレのことを
ほっぽらかして紙っきれに首っ丈。
正直むかつくんだけどそういうふうに何かに夢中になってる大佐を見てる
のも嫌いじゃない。嫌いじゃないけど、さ、やっぱこっちも向いて欲しいじゃん?

どうにかこっちを見て欲しくてコーヒーを煎れに立ち上がった。
コーヒーといっても大佐の好きなミルクがたっぷり入った甘めのやつを。

外からの雑音もあまりないせいで豆を挽く音がよく響く。
コンロにミルクをセットしといてから、フィルターに豆をいれて平らにならす
とお湯を垂らしてやる。豆を蒸らすとコーヒーの良い香りが部屋中に広がる。
コーヒーの香りで大佐が釣れないかとかちょっとだけ思うけどそう都合よく
釣れないよな。

ゆっくりと少しずつ湯を注いで、ちょっと濃い目にして、ミルクを
たっぷり入れてもコーヒーのうまさが飛んでしまわないように。
せっかちでつい湯をどっぱりと入れてしまうオレに、笑いながら
コーヒーの煎れ方を教えてくれたのは大佐だ。おかげさまで今じゃ
オレの入れ方も及第点になったらしい。よく職場でもコーヒーを
頼まれるようになった。

たっぷりの砂糖とミルク入りと、自分用にブラックを入れて大佐のところ
に戻るとやっぱり大佐は書類とにらめっこの真っ最中で、やれやれと
思いながら机の上にコーヒーを置く。

「ありがとう、ハボック。」
「まだ熱いんで気をつけてくださいね。」

ああ、と返事をしながらもそのまま口付けようとする大佐を止めようとしたが
遅かったようで、冷ましてこなかったことを後悔する。
「あー……。」
「火傷しちゃいました?」
「そんなに酷くはないが、ちょっとひりひりするかな。」

しょうがないな、とカップを取り上げて、大佐の頬に手を添えてちゅっと
口を合わせる。
びくっと大佐の身体が震えたが、そのまま舌を絡ませて少しでも大佐の
傷が癒せるようにゆっくりと口内を彷徨わせていると、大佐の鼻にかかった
声が聞こえて堪らなくなってくる。
やっぱ、この人えろいよなぁ…とか言ったら殴られそうだけど、仕方ないよ
なぁ、うん。
そっと口を放したら小さなため息と一緒に透明な筋が二人の間を繋いでいく。

「…ハボ、お前は…、」
肩で息をしながら大佐がぎろりとにらんでくる。上気した顔がやらしいな
とか思ってたら身体が勝手に動いて大佐の腰に手が回ってた。

「せっかちは嫌われるぞ。」

綺麗な真っ黒の瞳がゆっくりと閉じられていく。誘われるまま口付けを繰り
返し、そのままでがまんができるわけもなく。
ひょいと大佐を抱え上げると当初の“オレの予定”とはちょっと変わって
しまって緑のベットではなくなったが、大佐の寝顔をゆっくりと堪能するために
がんばろうと心で小さくガッツポーズを作った。

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キリング様 5万hitニアピンキリリクで「じゃれる」お題のハボロイ拝見させて
くださいとお願いしてステキ絵&お話まで付けていただきGET!
お題どおりの「かまってーーー」とじゃれつくわんこのようで幸せ!
ご主人様ロイ 他の人に邪魔されたら絶対不機嫌になりそうなのにハボ相手
だとしょうがないなあといった雰囲気で許しちゃうところも、そのままキスに
持ち込んじゃうハボックも大好物です ありがとうございました