【東巻】にとっての非公式とは



皆様こんにちは、気付いた時にはすでにオタ。湖鳥大好きヒ〜メヒメ♪
オタも長すぎるとショタユリ・ケモナー大丈夫、BLだって受け入れられちゃうよ、
腐男子とまではいかないけれど、心を広く見守りますを合言葉に、『東巻を見守る会副会長』(すみません敬愛する先輩方に
敬称をつけないのは恐縮ですが、会の名前ですのでご了承ください)小野田坂道がお送りいたします。

え?モブレや汚おじ監禁ものはどうか???なんですかそれ、ボク18歳以下だからわかりません!
ボクの年代はBLでもプラトニックです、そもそもプラトニックとは古代哲学者プラトンが、同性愛を謳ったものですので、本来の意味でも東巻OKですね!

「うむ…なかなかだな副会長、メガネくん だがもっと本来の意味でのプラトンの言葉は純潔の恋愛がプラトニックと言う意味ではないぞ」
これは…、すでにいらっしゃっていたのですね!
東巻を見守る会、当事者でありながらなぜか会長東堂尽八さん、ようこそお越しくださいました。
えっと…会話に戻しますが、性的関係がないのがプラトニックではないというお言葉でしたが…?

「そうだメガネくん プラトンのもともとの言葉は【魂よりも肉体のほうをより多く愛するような“愛人”は卑俗だ】
つまり見かけや躰に惹かれての恋より、魂の結びつきを愛する恋こそ…本物であり素晴らしいと言っているのだよ」

おおおおおおお…!それは…まさに東巻…!!
「そうだろう、君もそう思うだろう!?よく解っているじゃないか、メガネくんは!」

「…あのー、ワイらなんでここにおるん?」
「小野田が、先輩を応援するためにと召集されたんだが…箱学のエースクライマーの人しかいないようだが」
ああ、ごめんね鳴子くん今泉くん。
本日はようこそ【東巻を見守る会を普及させるための集い】へ!
今日の議題は『ここまで公式になっている東巻で、告白シーンをまだ見ていないのはおかしいのではないか』です。
皆様奮ってのご参加、よろしくお願いいたします。



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事の成行きは、なにげない鳴子の「ヤンデレ」って何という一言だった。
それに関しては得意分野です、ぜひともお任せくださいの小野田が、身近な人に例えて説明を始めた。
その際に取り上げられたのは、全員がよく知る人物、TとMだ。

Mは無意識な天然。
目を離すとまっすぐに…いや違うぐにゃぐにゃと曲がりながら、どこへたどり着くのか検討もつかぬ方向へ、飛び去ってしまう上、連絡不精。
そのくせ何気ない一言で、Tを天国にも地獄にも叩き込むという、最強かつ最凶な小悪魔だった。

会話が盛り立てば立つほど、Tが不憫になっていく実例的例文。
結果、身近な人代表であるTが、Mに対して、ヤンデレ的行為を行ってしまうのではやむないのではないかというのは総意となり、今に至っている。

「ですが…ここで重大な発表があります」
机の上で、両肘をつき拳を重ねて、口元を隠す小野田がキッと顔を上げた。
「英国と日本 距離があっても連絡を取り 夜中に一方的に『来るだろ?』『勿論だ!』というお二人ですが…未だに付き合っておりません!!」

「な…なんやてーーっ!」
大げさにのけぞり、なぜかウルトラマンのビームを出すポーズで固まった鳴子。
しかし数秒後、何かを思いついたように首を傾げる。
「それって…もう見込みないっちゅー「そ ん な 事 は だ ん じ て な い な っ !」」
鳴子が言い切る前に、遮った人物は、言うまでもない。

「いやしかし…オレと鳴子は、確かに巻島先輩が少々鈍いのかもしれないと思い、東堂さんを応援する気持ちを持ちました」
「そうそう…せやけどなあ…」
何かを言いたげに、目線をあわせる鳴子と今泉。
どちらか言葉にするかを、たがいに無言で押し付け合い、どうやら負けたらしい今泉が、渋々と口を開く。

「あの…ですね… そもそも巻島さんが、本気でまったく…東堂さんをその対象と見ていない場合……」
「単に天然で、ああなだけで…その、なぁ…?」
「それはないよ、今泉くん!!!鳴子くん!!!」
「「え」」
今度も東堂が遮るかと思いきや、今回の否定の主はなんと、勢いをつけ立ち上がった小野田坂道であった。
両拳を握った小野田は、机の上をごんっと一つ叩き巻物調の長い紙を、全面的に開く。
そこに書かれていたのは『公式 東巻の歴史』

「メガネくん…これは…!」
さっと一読をしただけで、内容を把握したらしい東堂の喜びに満ちた声が響く。
「はいっ!副会長である自分の渾身の力作!!東巻の出会いから現在までを綴った記録です!!」

「まずは二人の出会いから知って欲しい!」
そこに最初に記されていたのは【出会い編】
東堂と巻島は2年生の4月、奥秩山ヒルクライムにて出会う。
という一文から始まっていた。

自分は天才だ、何者にも阻まれず、しかも顔も良く山に愛された存在と、自画自賛していた東堂。
そこで軽く肩がぶつかり、小さな言い合いとなったのは、東堂にとって眉を顰める理解の対象外のビジュアルを持つ男。
しかもその相手は、トップクライマーとして名を上げている自分を知らず、さらには
「カチューシャ、ダサいっショ」とまでの、暴言を吐いていた。

「はい今泉くんっおさらいです!偶然ぶつかってしかも互いの初対面の印象は最悪!これは……」
「えっと…トースト咥えて走ってく街角でぶつかって、お前気をつけろよ!そっちこそ…の出会いフラグ?」
「そうっ!まさにそれ!!」

「せやったら…まあ…出逢い編はクリアやな」
まだまだ小野田、次点今泉には及ばないが、さすがに少女マンガ的お約束『やーん遅刻遅刻!』の法則ぐらいは知っている鳴子が、軽く頷いた。

「そう…そして最悪の出会いをしたオレ達だったが…オレは一目惚れとも言っていい、魂の衝撃ともいえる敗北で…巻ちゃんを見る目が変った」
書かれている文字を指で辿る東堂は、懐かしむように、目を瞑り回想をしているのだろう。
「そう…あの出会いのおかげで、オレの世界は広がった…」
「あ、それは雑誌インタビューで神(と書いて、原作者様と読む)がおっしゃっていた言葉ですね!」
(別冊spoon2Di vol.49 渡辺航12000字インタビュー)
「その通り!世界を変えてしまうほどの出会いだぞ これ以上のめぐり合わせはあるまい!」

「次は…会っている回数か、小野田?」
「回数も重要だけど、『あの』巻島さんが自分の休日を潰して、その人と一緒に居る時間を選択しているというのは重要だよね!」
うんうんと頷く小野田が、コミックスを並べ、なにやら巻物と照らし合わせていた。
「やはり…間違いありません、お二人が出会ってから約14か月 その期間で15回同じレースに出走し、二人だけの競争もしている様子が窺えます」
神奈川と千葉という距離、しかも平地はあまり好きではないという巻島が『東堂がそのレースにいる』という理由で出向くのだ。
「なんという…クールデレ…」
声を震わせる小野田に、東堂が重々しく頷いた。

「えー…せやけど、二人で約束しとらへんのやろ?偶然とか……」
「…偶然で一ヶ月に一回以上同じレースで毎回、出会っているのか?」
冷静な今泉の問いかけに、そっちの方が怖いの結論に至った鳴子は、せやな、と小さく返す。

「ところで小野田、お前はそれだけ巻島さんの事を好きなのに、あー…その、他人とのカップリング?とか平気なのか?」
東堂の目が、スッと細められたのを見た今泉が、戦いたように一歩引く。
しかし当人は
「ぼくは巻島さん大好きだけど、むしろ信者だから!!」
と最大限の笑顔だ。

「し…信者?」
「そう…いわば、巻島教…巻島さんの素晴らしさをたたえ、巻島さんの美しさに感涙し、巻島さんの笑顔に心震わせ、巻島さんの幸せを祈りつつ、
巻島さんのすべてで幸せになれる…!」
その巻島が、誰にも見せない待遇をしているのが東堂だと、小野田は指折り数えた。
電話一本でも嫌がりそうなのに、待ち受けが全部その人物で並ぶほどの鬼電を許している(アニメCパート)
基本人を悪く言わない人なのに、巻島さんは東堂さんだけ『カチューシャ』という呼び方をしている。
「しかし…巻ちゃんの可愛らしい点は、一般的にカチューシャという呼び方は悪口でも何でもないという事だな」
腕を組み、うんうんと頷く東堂はついでとばかり、髪が短かった頃の巻島の愛らしさを語る。

「ふぉぉお…ショートカットの巻島さん…見てみたかったです!」
「オレら知ってる巻島さんは、髪が腰の…… ん?おかしないか??お二人の初対面って高2…」
「皆まで言うな、鳴子」
どんだけ髪伸びとんねーんっ!というツッコミを、今泉が目で制した。
髪が早く伸びる=俗説でえっちだとかすけべだとか言われてる=…巻ちゃんがオレに出会ってすけべに!?
なんて方角に向われては、もはや立ち向かう術がないからだ。

「あの、巻島さんが流されているだけで、実は東堂さんをその…大変言いにくいのですが好きではあるけれど、あくまで友人としてで、
その…やはりそういった対象として特に意識されていないという可能性は…」
恐る恐る言い出した、今泉。
東堂にそんな筈はないと、怒鳴られる覚悟をしていたようだが、とうの東堂は涼しい笑みのままだった。
「あの…怒らへんのですか?」
意外だと隠さぬ鳴子に、東堂は「あまりに的外れだからな」と本気で怒った様子もなく返した。

「鳴子くん、今泉くん…見て欲しい」
そこに小野田が差し出したのは、「弱虫ペダル SCHOOL LIFE」
肩を並べる二人の構図…というだけなら、ありがちだ。
だが通常と大いに異なるのが、なぜか東堂は巻島の髪を首筋近くでまとめ握っているという箇所だろう。
「…とある4コマ漫画によると、髪に触れるのは、実は肉体的接触を済ませた後の親密さだという説があるんだ…」

「それに…!巻島さんのもはや嫁としか発言できない証拠がこちらです!」
『小説版弱虫ペダル 巻島・東堂二人の約束』
以前東堂、巻島と競り合ったという相手に、東堂は「誰だお前」発言をし、本気で覚えていなかったようなのだが…。
なぜかその東堂の無礼に対し、「悪かったっショ」と謝ったのは、巻島だったのだ。

「巻島さんが!?」
「他人のことを、自分が謝った!!」
フフと微笑み、髪を梳きあげる東堂の得意げな表情、極まりない。
だがその自信に満ちた態度の裏づけが、これでもかと並ぶというのであれば納得だ。


「えっと、初対面からのフラグとその回収は問題なしと判明されました では次に問題になるのは…」
「はい」
「どうぞ、今泉くん」
「…その、言いにくいのだが…大人の事情で、スポンサーが二人の仲の成立を問題視しているという可能性は…」
少女マンガなどでは、ヒロインとヒーローがくっつくまでの盛り上がりがメイン。
二人がそうそう簡単に恋人関係として成立せぬよう、スポンサーが邪魔をしているのではないかと今泉は言う。
「それはないよ、今泉くん」
「フ…そうだな、まずはこれを見てもらおう」

用意されたのは、弱虫ペダル in コラボメニュー

・東堂尽八特製、牛とん包入り鯛茶漬け〜for 巻ちゃん〜
・絡み合う二人の思いスムージー「最後の対決を願う2人の思いが混ざり合うように、スムージーを混ぜ合わせました」
・山神イチコロドリンク 「色は玉虫色ですが、味は爽やか!これで山神もイチコロです☆」
・巻島、東堂の絡み合う2人の想いスムージー 2016ver
・巻ちゃん!ようこそ東堂庵へ!これがおすすめのぜんざいセットだ「東堂庵へ招待された巻島の元へ東堂が持ってきたぜんざいセット」

「…すごいな…」
親友同士という設定でありながら、絡み合う二人の思いだの、イチコロだの、なぜか実家にご招待時に出されたメニューが普通に並んでしまえば、
もうどうしていいのかわからない。
これが恋人同士という設定の二人の、コラボメニューであれば、納得だ。
…だが現時点では違うというのが、謎でしかないという小野田の主張に、今泉もようやくなるほどと、同意を示した。
「確かに…これはスポンサーも認めている、としか判断できないな」
いつの間にか机の上にあったノートに、チェック項目が書かれ、今泉は『公式OK』と書き足している。

「はい」
「鳴子くん、どうぞ」
「えーっとなんやっけ、小野田くんの言う…萌え?とかいうのが足らんのとちやう?」
少年漫画の登場人物同士、一人は美形という肩書きであるが、もう一人は自称キモいだ。
花を添えるには、何らかの後押しがという鳴子に、小野田はそれもクリア済みだと、グッズの山を差し出した。
「まずは、これだね」
小野田が取り出したのは、?屍東堂と吸血鬼巻島という二人をデフォルメしたぬいぐるみ。
「少年漫画の登場人物でありながら、ともに永遠に死なぬという存在設定でのプライズ…!」
二人をそろえる為に、クラスタが大枚をはたき、いっそ普通に販売してくれと涙ながらに語ったという伝説の二人だ。
「そしてこれ」
そこにいたのは、ネコミミの通常ニャッショとファンクラブからニャらんよと呼ばれる、二人。
これに関しては、自分たちのアイテムも作られていたので、今泉と鳴子も知っていた。
「それからグッズではないが、神の発言で 巻ちゃんは素でメイド喫茶のメイドをこなせるとの流れがあった上で、
オレ達箱学はホストクラブを文化祭で行うという事実が生まれた」

永遠の死なぬ存在・ネコミミ・メイドにホスト…充分すぎる花であり、萌えアイテムが揃う。

「萌えがあるというのなら、最近の少年漫画でありがちな、…その…色気…とか…」
小野田から色々学んでいるとはいえ、まだまだ漫画初心者の今泉の語尾は徐々に小さくなっていく。

「色気と言えば、こちらです」
小野田がすかさず取り出したのは、1枚のDVDとCDだった。
最初にセッティングがされたのは、DVD。
流れてきた映像には 弱虫ペダル Re:RIDE の文字。

「それ、劇場版…いうても、総集編やろ?」
「ごめんね、鳴子くん今泉くん…新規追加カットもこの作品には多くあって、…そのほとんどが東堂さんと巻島さん、そしておまけにぼくなんだ…」
ポニーテールにし、太ももをあらわにしている巻島。
東堂と並んで風呂に入り、うなじも露わにした、白い肌に細い肩の巻島。
「どうです!!これが!!お色気でないとは言わせません!!更には卓球の場面では『雌雄を決する時が来た!』…オスメスですよ!!」
「そして…オレとしては、これをまだ年若い君たちに聞かせていいものかと迷うのだが…」
いやいやアンタ、ワイらとそんな年かわらへんがなと合いの手を入れるには、あまりに真剣な東堂の顔がそこにある。

「DVD10巻特典、ハイケイデンスドラマCD Vol.5 注文の多い温泉宿…ですね」
ごくりと喉を嚥下させた小野田が、そっとCDをプレイヤーにセットした。
そこから流れてきたのは、うっかり東堂の実家が経営する旅館に立ち寄った巻島が、お・も・て・な・しを受けるという話。
しかしそのおもてなしは、当然東堂尽八プロデュースだ。

もう出たいという巻島を、無理やり引きとめ風呂に浸からせる。
いらないという巻島に、いいからいいからとばかりにマッサージを施す東堂。
そしてトドメとばかりに…そっと開けられた襖の向こうには、二枚の並べられた布団!!

「え、ちょ…待ってや!こ、これええんか!?」
思わず叫んだ鳴子に、東堂が重々しく首を縦に振った。
「…そう思うだろう…しかしこれは公式だ… ちなみにこの後、巻ちゃんがオレを坊ちゃんと呼ぶというおしおきプレイ的な…ゴホッいやなんでもない」
そしてそのまま、東堂がどんと置いたフリップには達筆で

『押し切られて、無理やり入れられたときは、腹も立ったけど・・・』 by巻ちゃん

の文字。
「見てくれメガネくん コイツを…どう思う…?」
「すごく…すごいです…」
「そうだろう…オレは巻ちゃんのこの台詞部分を1GBのUSBメモリいっぱいに録音し、夜のおか…いやいや、なんでもないぞ!」
※注 本当にこの台詞はあります

恐る恐ると手をあげた今泉が、すみません色はもう納得しましたと、話題を慌てて遮ったのは良心からだろう。
「色も花もある…となると…せつなさでしょうか?」
首を傾げた小野田に、しかし東巻は最大の切なさ『卒業前のいきなり渡米』がある との指摘が返された。
更に付け加えるなら、ゲーム【明日への高回転】では東巻エンドがあり、渡英前の二人の会話として

「俺の何を知ってるっショ…」
「誕生日だろ?好きなものだろ?得意科目に血液型あとは…好きな服のブランドに…お気に入りのシャンプー、それと」
「そういうことじゃないっショ…」

というやり取りが存在している。
「切ないっ!!」
握り拳で叫ぶ小野田に、頷く一同。
ゲーム内では東堂が、いかに自分は巻島の事を知っているかと主張すべく「巻ちゃんクイズ」なるものまで存在がしているのだから、尚更だ。

「ワイが思うに…ここまで来て、まだ告白がないっちゅうんは…家族の反対とか」
「それは…ないと思うよ、鳴子くん」
実家ではあっても、家業である宿泊施設の風呂は中三まで2回しか入った事がないという東堂が、友人と一緒にその風呂に入っている。
巻島はそれ以前に、『注文の多い温泉宿』で訪れているのだから、挨拶まではせずとも、顔や独特な髪は覚えられているはずだ。
息子にふさわしくないと思った相手ならば、東堂がいかに頼み込もうと、ご招待など認めなかったに違いない。
更には、そのご実家グッズを巻島のシュシュや首元ガードに使わせてまでいる。
…これは実家絡みのマーキングだろうと、小野田が東堂を見れば、東堂は否定をしなかった。

「さらに…これを見てください」
「ん?これは東堂さんと巻島さんの過去のお話を映画にしたスペアバイクのDVD特典小冊子?」
「そう…この数ページのなかで、東堂さんは巻島さんを呼び出すためだけに、元気な祖父を危篤にしてしまい、しかも巻島さんは来てしまうのです!」
「「な、なんだってーー!!」」
そんなシャレにもならない事を、やってのけるには、万が一バレても、孫息子だけでなくその相手の印象が悪くならないという、確信がなければできないものだ。
…つまり、巻島は……そういう事なのだ。

「そして…もうここまで来たら言うしかないんだけど…」
さっと小野田が差し出したのは、CDケースだった。
ジャケットには東堂と、巻島の二人。
「二人ワンセットのキャラソン… 最初は 小野田坂道 & 巻島裕介でしたが… VOL.8『ライバルクライマー』これの!ここを見てください!!」

公式からの宣伝文や曲紹介、そういったこまごまとした情報の中でアーティスト表記が巻島裕介×東堂尽八 もしくは 東堂尽八×巻島裕介と記載されていた。

「勿論ぼくは…きちんと調べました 他の組み合わせのときはどうなのかと」
その結果他キャラ同士の組み合わせは全て『&』表記だったのだと、小野田が真剣な顔で今泉を指差した。
(注:ジャケットのアーティスト表記部分は他の曲も×表記でした)
「今泉くんなら、もうわかるよね!!&じゃなくて×の意味が!!」
「あ…ああ… 確か…カップリングとかいう…やつだろ?」

「そうだ!!なのに!!何故公式がここまでされているというのに!!」
「東堂さんと巻島さんの、公式での告白場面がないのか!!!」
巻島教もしくは巻島中毒としか表現できぬ二人の叫びではあるが、鳴子と今泉にも、同意をさせるだけの証拠はすべて揃えられていた。
もっとも冷静な観点からすれば、アニメ29話・巻島が追いつく場面での音楽つきシーン。
そしてその後の山頂リザルト争奪場面は、二人の際どい台詞や荒い呼吸から、公開擬似セッ○スとまで言われた熱いもので、
あれも充分に告白といえるのだが、それでは駄目らしい。

「そうなると…オレ達の知らないところで、告白が済まされてしまっている可能性はどうだろう?」
やはり少年漫画なのだから、人気キャラといえど、主人公のラブロマンス以外は不要と切り捨てられたのではないかと、今泉が推測を述べる。
「…ここまでやっといてか?あらへんやろ」
「いいえ…鳴子くん、いいところを突いているかもしれません」
小野田のメガネが、きらりと光った。

「そう…まさにそれ、隠されている!」
「「な、なんだってー!」」
「メガネくん、どういう事だ!」

「皆さん…思い出してください 週間少年チャンピオンが少年誌だという事を」
「へ? 思い出すも何も…それは基本やろ」
「そう まさに基本!それ故に東堂さんと巻島さんの告白シーンは掲載できなかった!!それはなぜか!!」
横にあった空白のフリップを手に、小野田が勢いよくマッキーで書き殴る。
勿論マッキーは、『もえぶんコラボ企画、それぞれのイメージカラー発売東巻マッキー』の巻ちゃんバージョンだ。

どんっと音を立て、そこに置かれたのは大きな『それは 告白シーンがR-18仕様だったから』

「そう…気付いたのは、話の流れからです…」
小野田はフリップに、時系列の流れを追記しはじめた。

箱根ラストクライム

巻島さんの渡英宣言

劇場版弱虫ペダル「熊本火の国やまなみレース」

大江戸温泉 東堂庵グッズを身に纏う巻島さん
(首筋ガード)

本誌 後輩たちの応援の東堂さん 巻島さん再会

「いいですか…この流れは重要です ラストクライム・渡英宣言・熊本レースまではぼく達も後輩として、身近でお二人をよく見ていました」
そうだよねと訴える小野田に、鳴子と今泉はこくりと頷いた。

「そのぼく達が巻島さんと一緒に走った、最後のレースといえば…あの『巻島さんが来ないと知って、道路でふてくされて寝る東堂さん事件』!」
「…そういえば、そんな事もあったかな」
フと笑う東堂に、小野田が畳み掛ける。
「大変っ!失礼ですが!! あの行動は とてつもない 童 貞 !」
「小野田…」
「小野田くん…」
「しかし!その後のお二人の再会シーンでは!!」

小野田が差し出したチャンピオン本誌では、艶やかに髪を振り乱した巻島が『クハッいつまで待たせるっショ』と微笑んでいた。
そこでのやり取りは
「返事もよこさない…勝手な女だお前は」「ウフフ…そんな私が、嫌いになれないんでしょ」「そうだな…だがお前を慕う後輩にはもう少し気を使ってやれ」
という、ドラマのワンシーンを東堂と巻島が演じてるかのような、会話が続く。

「これで わかりました!! 童貞から包容力ある大人への東堂さんの変化!」
「つまり…?」
「つまりは、やまなみレースと再会の前にすでに二人は18禁たる状況で、告白をしてしまっていたんです!!」

どうだろうこの推測、敗れるものはいまいと立ちはだかる小野田の肩を、東堂が強く握った。
「なるほど…!そういう事だったのか… オレと巻ちゃんは大人の階段を上りながら、告白シーンを済ませてしまっていた…」
「そうか…そうなると少年誌チャンピオンでは、掲載ができない…」
「深夜アニメかて、元がスポーツマンガなんやし、あかんやろうな」
家族の危篤をネタに、愛する人へ関わろうとするなど、すでにそれは妻の領域。
そして、キスマークをつけられやすい首筋を、実家の小道具で隠されるというマーキングも、出来上がっている証明でしかなかった。

「…ここで、ぼく達がこれからなすべきは、第二段階に入りました!!」

小野田が拳を握り、宣言するようにもう片方の掌を差し出した。

「先日発売された某週間少年マガ○ンのように、かつてなかった袋とじまんがをチャンピオンでも掲載すべきキャンペーンの開始です」

週刊少年マガ○ンの2016年11月16日発売で、かつてなかった性描写の激しい漫画を収録したという「袋とじ」
これは今では週間少年マガ○ンの購入者75%が成人男子であるという事から、実現した企画だったという。

「…待ってくれ、メガネくん」
思わぬストップがかかったのは、思いつめた顔をした東堂だった。
「すまない…オレは巻ちゃんとの告白シーンを、全国の皆に見せて東巻公式を知らしめたいと思ってはいる…だが…」
「だが…なんでしょう?」
「巻ちゃんのあられもないシーンを、全国の飢えた野獣どもの前に晒すなど、ならんっ!ならんよ!!」

しんと静まり返った室内に、鳴子と今泉は困った顔だ。
「わかりました…東堂さん…」
「メガネくん…」

「それでは【東巻を見守る会を普及させるための集い】 次の議題は『いかに巻島さんのあられもない姿を隠してかつR-18の告白シーンを掲載できるかですね!」

我々東巻クラスタが、二人の告白シーンを見れるのは、どうやらまだ先のようである。

注意:ここに並べられているグッズ情報他は、本当に公式のモノですが、それに対する解釈は著しく東巻クラスタ的なものとなっておりますので、ご了承ください。
なお、これを書いた時点でスペアバイク特典はまだ未読ですので、何かおかしな事をかいておりましたらご指摘ください