3ヶ月前、東堂に好きだといわれた。 なかば叫ぶように言われ、直後に東堂は自分の行動に呆然としたように、今度は小声で 「…そうか…オレは…巻ちゃんを好きだったんだ」と呟いていた。 これは、告白なのだろうか? いや違っていても、このチャンスを逃すつもりはない。 ――だって、自分も東堂をずっと、好きだったのだから。 ここが街中や学校の近くでなくて、よかったと思う。 山頂という自分の一番大好きな場所で、二人きりというシチュエーションのおかげで、変な意地も張らなくてすむ。 東堂の台詞と同時に、急激に高鳴り始めた心臓は、もうすぐゴール近くのヒルクライムなみに、胸の奥をきゅっとさせる。 言葉が、出ない。 恐る恐る、といった様子で東堂が 「巻ちゃん…?」と覗き込んできた。 自信満々で、鬱陶しいぐらいに前向きで、うるさいぐらいに付き纏うこの男のこんな顔、見たことがない。 視界がぼんやり曇って、ようやく自分が涙ぐんでいると、巻島は気づいた。 何か、言わなくては。 だが言葉にするより先に、もう一度東堂が切なそうに眉を寄せ、巻島へと向き直る。 「…友達としてでもいい、オレと、これからも一緒にいてくれないか」 どこか力の抜けた、それでも真摯な東堂の声。 気の廻る東堂の事だ、自分の涙を勘違いして、告白されてショックを受けたのだなんて勘違いをしかねない。 …いや、あの表情はもはや、してしまっているのかもしれない。 早く、早く何か言わなくては。 「…うん」 幾らなんでも、これだけでは駄目だ。 下手くそだと自覚していても、こんな場合は笑うべきだろう。 無理やり口端を上げて、笑おうとしたら涙がこぼれ出た。 「あの…東堂……嬉し…いっショ……」 溢れた涙のせいで頬がむず痒くって、拭おうとした瞬間、東堂にぎゅっと抱きしめられた。 あの瞬間目にした青空を、自分は決して忘れないだろう。 ―――ここまでは、成就した遅い初恋の、甘酸っぱいいい一場面だ。 問題は現在だ。 「なんで東堂は、キスの一つもしてこねえっショ!?」 女の子への接し方は抜群で、旅館業という家業のせいかエスコートをしようとすれば、完璧なエスコートをしてみせる。 少し我侭を言ってみれば「仕方がないなあ」と苦笑しながらも、それを聞き届けてくれ『ああもう、なんだよお前! 完璧すぎっショ!!』と こちらが内心で頭を抱えて転がりまわっているというのに、東堂はいまだ、一度手を握ってきたきりなのだ。 告白をしてくる前は、平気で肩を抱いてきたり、抱きついてきたりしていたくせに、あの告白以降、それもない。 (…ひょっとして…東堂、告白……後悔してるっショ…?) ―ありうる話だ。 あの時の東堂は、思わずと言った風情で、勢いに負けてしまったように見えた。 ついつい言ってしまったけれど、今となってはなんで男の自分相手に、告白してしまったのだろうかと…悔やんでいるのではないだろうか。 だが、望みはまだあった。 個人練習以外で、街へ遊びに行こうと東堂は声をかけてくるし、その際は練習用ではない、気合の入った服装をしてきている。 …もっとも東堂は、カチューシャを自分のアイデンティティだと主張しているレベルの、残念なセンスだ。 レースジャージや普通のジャージ姿の方が10倍男マシだと伝えた事があったが、その時ばかりは流石に東堂も「いや…巻ちゃんにセンスの話は……」と 言ってきていたので、お互いさまなのかもしれない。 だがまあ、それは、さておき。 今日は絶好の山登り日和である点だけが、勿体無くも感じるが、東堂との街中デートという事で、巻島には目標が一つあった。 【なんとか今日中に、東堂とキスをする】 そのためにわざわざ、前売りでテレビでも話題になっている『ビルの中に存在する、日本で最も恐ろしいお化け屋敷』入場券まで、ゲットしてきているのだから。 東堂を誘う時は勿論 「招待券を二枚手に入れたっショ 金城と田所っち、一人しか誘えねえのは不公平だから、東堂行かねェ?」とタダ券を手に入れたからのように言ってある。 たかがお化け屋敷ではあるが、それなりの金額なので購入したといえば東堂は、きちんとお金を出すに違いない。 だが今日は自分の計画につきあわせるのだから、自分より限られた小遣い制限のある東堂に、無理はさせたくなかった。 巻島の脳内プランとしては、こうだ。 日本一怖いお化け屋敷に入る。 「こわいッショ〜」と東堂の腕にすがりつく。 ↓ 「東堂が『大丈夫だよ巻ちゃん オレがついているから』と自分の肩を抱く」 ↓ 「感激したように『東堂……あ、えっと…ここ…誰もいないッショ…いまだけ…尽八って…呼んでもいいッショ?』と東堂を見る」 ↓ 「東堂も感激して、オレを裕介って呼んで、盛り上がってそっと暗闇にまぎれてキスをしてくる」 ……完璧っショォ!! 思わずガッツポーズで構えていたところで、東堂が「すまん!遅れたか?」と走ってくるのが目に入り、巻島は首を振った。 「あ、いや 今日はオレ早めに着いたっショ」 「そうか…それでもまたせてしまったな、すまない」 遅刻してきたわけでもないのに、待たせたからと謝るなんて、イイ男過ぎるっショ… 感嘆の眼差しで、まじまじと東堂を見つめていたら、どうやら照れたらしく目線を外されてしまった。 その反応は嬉しくもあったが、巻島に一つの懸念を懐かせてしまう。 初々しいと言ってもいい東堂の反応は、初めて目にしたものだった。 (…あれ…?オレ東堂に抱かれる側の覚悟を持ってたけど、ひょっとして東堂、抱かれたい方だったっショ……!?) それならば、辻褄があってしまう。 好きだと言ってきておきながら、何故か微妙な距離感を持つ。 巻島の言動一つ一つを、嬉しそうにしながら、目線をあわせない。 「東堂……そ、そうだったっショ!?」 「え」 「あ、いや…悪ィ ちょっと…色々……」 会話を断ち切ってしまう台詞だと思ったが、まさか続けるわけには行くまい。 もごもごと口ごもる巻島を見て、東堂は楽しそうに笑った。 (えっと…じゃあ…プラン変更っショ……えっと…えっと…だだ、大丈夫っショオレはイレギュラーに強いっショ!!) 一人拳を握って、思考に耽る巻島をさりげなくリードし、東堂はあっという間に目的地を見つけてしまった。 「え…もう着いたっショ…?」 「なんだ巻ちゃん、自分が誘う時 駅から五分もかからねえ場所だって言ってたのに、もう忘れたのか?」 「…ショ……」 いやその言葉を記憶はしているが、もう五分経ったとはまるで思えなかったのだ。 (ああもう!こうなりゃヤケっショ!!最後の場面をオレが肩抱いてキスすればいいッショォォォ!) 有名なアトラクションではあるが、時間指定有りプラチナチケットを購入したせいで、すんなりと入れてしまった。 …せっかくならば、二人で行列を楽しむ方向もありだったなと、今更ながら残念に思う。 東堂も同様だったようで、 「巻ちゃんと走らず並ぶというのも、面白いかもしれんな」と行列を軽く振り返り、そう話しかけてきている。 ――今っショ! 「と、……東堂…オレ…実はお化け屋敷……怖いっショ……」 「えっ!?」 「え?って… まさか……」 「ごめん巻ちゃん…オレ…リアリストの巻ちゃんはお化け屋敷とか全然平気かと… あ、いや…!大丈夫だ巻ちゃんっ!オレが先に行くからなっ」 そう言って無理やり東堂は、笑おうとするが確実にその行動は失敗だった。 カクカクと、不出来なマリオネットのように東堂の動きは、不自然になる。 中での行動は、お察しの通りとしか言うべき言葉はない。 いきなり真っ暗というのではなく、入口から徐々に暗くなっていく道筋。 ギィと重たい音を立て、扉が閉まると同時、上からどろどろに崩れた顔半面の長い髪の女が、さかさまにぶら下がってきて 「キィィィィイィィィッ!!!」と叫ぶ。 (おーよく出来てる人形っショォ…) 思わずまじまじと、その造詣を眺めていれば、東堂が「うわああああああっ!!!」と全力で巻島の腰にすがり付いて来ていた。 「巻ちゃんっ 巻ちゃん大丈夫か!?平気だからなっ オレがついているから!」 説得力は、まったくないが、巻島の脳内プラン『東堂が自分の肩を抱く』が『腰に抱きつく』に変わったのだと思えばいい。 「…だいじょぶッショォ …こわいッショォ」 と言ってはみるが、われながらこれほど訴求力のない訴えは、あるだろうか。慌てて脳内プランを思い出し 「えっと、怖いから尽八って呼んでもいいッショ?」 と付け加えてみたが、ますます意味不明な言動になってしまった。 「もも、もち、勿論だ巻きちゃ…うぎゃああああっ!」 巻島の怖いから尽八と呼ぶという脈絡のなさも、目玉をぐるりと廻し、真円になった黒い穴を近づけてくる男の化け物の前では、気にならなかったみたいだ。 ひび割れたコンクリートみたいな手が、東堂へとゆっくり伸びる。 「うぉぉぉぉっ!! ままま、巻ちゃん……!」 「だいじょぶッショ尽八 ほら一定距離以上は近づけねえみたいだ」 巻島が、目を瞑ってぎゅっとしがみつく東堂にそう囁けば、東堂はゆっくりと巻島が指す方向へ目線をやった。 確かに、男はそれ以上追って来る様子はない。 次の血まみれ女は、遠いのに何故か耳元で囁くような距離が聴こえるという不思議さがすごかった。 そこで突如、般若真教を唱え始めた東堂の方が、正直怖ェっショと思ったが、それは口に出さずに置く。 …自分たちの声が反響して、不気味に次のカップルたちを脅かしていたら申し訳ないとは思うが。 ようやく出口が見えてきたとき、東堂はまるで生まれたての小鹿のように、下肢がガクガクと震えていた。 「東堂…大丈夫っショ」 「す、すまんな…巻ちゃん」 さりげなく肩を抱いて、お化け屋敷が入っているビルの屋上へとのぼり、東堂の震えが収まるのを待つ。 (…あれ?これオレのプランどおりっショ!凄ェっショ!!) 屋上はミニガーデンとなっていて、小さな散歩道風のレンガ道の途中途中に色々なハーブが植えられていた。 都会のど真ん中で、心安らぐ風景ではあるが、いかんせん面積が限られているからか全体的に野原の草という印象が強く、二人の他は誰もいなかった。 ベンチで並んで腰掛けていて、10分。 東堂はそろそろ落ち着いただろうかと、そっと横を窺ってみるが、まだ肘を腿に置き、手のひらで顔を覆い隠すように俯いたままだ。 …失敗、したっショォ… 勝手に盛り上がると決め付けて、東堂の意見も聞かず、お化け屋敷を選んでしまった。 もっと楽しく、二人で笑顔になれる場所を選べばよかった。 お化け屋敷が苦手らしいのに、つきあって無理をしてくれた東堂。 そんな状態の東堂につけこんで、キスをしようとするだなんて、最悪すぎる。 膨れていたワクワクは、急速に弾けてしまい、巻島もショボンと下を向く。 ――謝ろう そう決意をし、巻島が唇を開きかけた瞬間、東堂は勢いよく顔を上げた。 「あ、…えっと…」 「巻ちゃん」 「…んっ……」 気付いたら、東堂の腕が伸び後頭部を抱えられ、唇が重ねられていた。 熱いとすら感じてしまった、相手の体温。 抱き寄せられた後頭部に廻った指が、ゆっくりと首のほうに下り、一度唇は外れる。 だがすぐに、もう片方の手で顎をすくわれ、今一度東堂にキスをされた。 嬉しい、なんで、本当なのか、夢を見ているんじゃないだろうか そんな疑問が脳裏でぐるぐると渦巻いて、混乱の局地なのに切なくて、また涙で視界がにじみそうになる。 呆然と硬直をした巻島をみて、東堂は優しく…それでいてどこか泣きそうな顔で笑った。 「ごめんな、巻ちゃん」 「…ショ…?」 「巻ちゃんは…オレの勢いに負けて…つきあってくれているんだろ?それなのにキスまで奪ってしまって」 「ショッ!?」 「いいんだ、解ってる……オレがあの時つい…何も考えずに言っちまったから、優しい巻ちゃんは…」 「ふざけんな、何言ってるっショ!オレが同情だけでなんとも思ってない奴と、恋人ごっことかできるとか思ってんのかよ!第一!」 『オレも好きって言ったっショ!』と叫び返そうとしたところで、ふと記憶を回想させた。 「…あれ?」 記憶の中の東堂は、好きと伝えてきた後「友達でもいい」と言っていた。 自分はそれに対し、「うん」と答え「嬉しい」と返したはずだ。 …あれ? ――オレ、好きって言ってなかったっショ!? この流れでは、【好きという言葉を返すことはできないけれど、友達を続けられるのは嬉しい】とも取れてしまう。 いや実際、目の前の男はそう解釈をしてしまっていたらしい。 キスをして来ねぇとか、ボディーランゲージ少なくなったとか……当たり前だったっショ… 「あ、あの東堂……悪い…オレ、勘違いしてたっショォ……」 「勘違い?」 「東堂、オレに抱かれたいのかと……」 「…何故そうなるんだ……」 「いやだって…オレがじっと見てたら、なんか照れたみたいな感じだったし…」 「そりゃ…オレが好きだと言っても気持ち悪がらないで、友達を続けてくれるという巻ちゃんを抱きしめたいとか思ったら、裏切りみたいで悪いなとか…思ったんだよ」 「あ、うん…オレ…言葉選ぶの下手で…悪かったッショォ…」 「あ、あとな」 やはり巻ちゃんの思考回路は、素晴らしくもすごいなと呟いた東堂は、まだあるのかと、もう一度巻島を見詰める。 「東堂、好き…っショ」 そういった瞬間、これ以上はない程強く抱きしめられ、視界に入ったのはあの人同じ、真っ青な気持ちよい空だった。 まったく関係のないおまけ ツイッターでのアンケートに利用しました ********** ★当主東堂×メイド巻ちゃんのお話だとどんなエンディングがいいのか教えて下さい ほんの少し前まで、裕介の生活は幸せ一色だった。 裕福な家庭、おっとりとした両親、自分を気に掛けてくれる兄。 だがその両親の鷹揚さが仇となり、友人の連帯保証人となったせいで、気づけば莫大な借金を抱えてしまっていた。 慣れぬ苦労で、父は心労からか若くして亡くなり、また母もその後を追うように命を落とした。 唯一残った兄は、本家の跡取りとなることを条件に引き取られ、かわりに借金は清算してくれたが、裕介は縁を切られるように命じられてしまっている。 未成年でなんの力もない自分に、それに逆らえるだけの力はなかった。 それに二人で返すあても期待できぬ借金を抱えているより、兄だけでもまだ生活の保障された暮らしを送ってくれた方がいい。 最後に慈悲だといって、本家は小さなアパートの一室を借りてくれた。 天涯孤独…ではないものの、実質そんな生活に投げ出された裕介は、心もとないまま呆然とその部屋に座る。 ――コンコンッ ノックが幾度か繰り返される。 もう自分を訪ねてくれる人など、いないはずなのに……。 まさかまだ、知らぬ借金があったのだろうかと、裕介が恐る恐る扉を開けると、そこにいたのは立派な身なりをした一人の高年層の男性だった。 心細げに相手を見る裕介に対し、男性はにっこりと笑顔を作った。 「はじめまして、裕介様 あなたを東堂家時期当主 東堂尽八様専属メイドに採用したくこの度はお邪魔いたしました」 「……あの、お間違え…ですっショ オレ男だし家事とか掃除とか…全然できないし…」 目をぱちくりと、それでも律儀に返答する巻島に、男の微笑みはますます深まる。 「これは素晴らしい!さすが奥様の見る目はお確かだ」 男性が言うには、巻島は東堂の監視役兼学友的な立場として、スカウトされているのだと男性は告げた。 「えっと…でも…メイド…って…?」 「そこにはこうした事情があるのです」 東堂家の坊ちゃん東堂尽八様は、顔良し頭よし、社交能力高し。 性格だってまっすぐで、女性にもモテて、スポーツ能力だって抜群で、いわば完璧な人間だ。 「ただ…そのせいで弊害がでてしまってのです…」 これだけの条件が揃っている上、しかも時期東堂家当主確約で、地位と金だって当然ついてくる。 幼い頃から女性は、すぐれた男の子相手に自覚せぬ程度の恋心を懐くことがあるだろうが、この場合は特別だ。 当人の淡い気持ち程度を、その親が汲み取るや否や、さあぜひわが子を東堂家の時期当主婚約者にと売り込みをはじめてくる。 そうなれば、東堂尽八を知らぬ娘を持つ親も 「我が家にも尽八様にお似合いな娘が丁度おりましてな」 と無理やり縁談をねじ込んでくる。 しがらみのない相手で、無理に義理立てする必要もないと断れば、今度は休日に出向いた先などで 「偶然ですな 我が家も娘とこちらに遊びにきておりまして…」と軽いお見合い状態で、娘とやらに合わされる。 「そこで尽八坊ちゃんが馬鹿息子で、地位と金しかない盆暗だったら、女性の方もお断りして下さると思うのですが…」 実際の東堂は、地位と金がなくても、充分に魅力的な男だった。 そのせいで色と欲に塗れた目、女性が両親とタッグを組んで、ターゲットオンをしてくるものが絶えぬばかりか、目の前で醜い争いが繰り広げられたことも数度ではない。 そのため、東堂尽八はすっかり女嫌いになってしまったのだと、男は言った。 「困ったことに、外から見ただけでは完璧なエスコートをされるので、女性は皆『私こそが本命よ!』と醜い罵りあいを当人の前でもはじめ…」 「ハァ…大変です…っショ…」 金に不自由していなかった頃の我が家に比べても、随分とすごい話だと、巻島は相槌を打つ。 しかし、そこに自分がどう関わるのか、いまだまったく見当がつかないではいる。 「そこで、奥様は考えたのです 尽八様の女性観を根本から覆してくれる女性の存在を!」 「…はあ…見つかるといいですショ…?」 「見つかりました!それがアナタです!!」 「………ショ?」 恐る恐る自分を指差すと、男は大きく頷いた。 「あの…オレ、男ですっショ」 「存じております、先ほど裕介さまとお呼びしました」 東堂家の当主の妻…もっとも、婿養子の父親ではなく実質的現東堂家当主と呼ばれている、東堂尽八の母は色々な条件をつけて、息子の価値観を変えてくれる相手を探したらしい。 血筋はさほどこだわらないが、品を失わぬ家庭で育ったもの。 金銭などに卑しくなく、最高の教育を受けている者。 そして作法や上流階級の礼儀を、きちんとわきまえており、かつ息子の『女なんて、欲と金目当てでオレがほんの少し優しくすれば、誰だって恋人気取りだ』という歪んだ考えをただしてくれる者。 「そして大変失礼なのですが… この条件を満たし、かつ金銭などで雇われることを承知して下さる方が必要なのです」 その細かい目の篩にかけられて、唯一残ったのが巻島裕介だったのだ。 東堂とは少し違う西洋流の教育をうけ、おっとりとしており金銭に卑しくないが、現状の生活は困苦している。 最大ともいえる欠点は性別だが、そこはそれむしろあまりに好みの相手を見つけ、息子が血迷っても妊娠させる恐れはない。 そしてまだ、十代半ばという年齢と、生来の華奢な体躯と白い肌なのでメイド服に違和感がない。 衣食住は勿論、通常よりよい給金も保証するし、万が一メイドが務まらなくなったからといって、放りだすようなまねはしないという、寛大な条件。 ――こうして、巻島裕介は尽八坊ちゃん専属メイドとなったのである。 *************** 最初は価値観の違いや、控えめであっても絶対譲らずに主張してくる巻島に「なんだコイツ」と思っていた東堂も、折に触れ溢れてくる巻島の教養と、 不器用な思いやりに気づけば誰よりも大事な相手になっていた。 ここからの選択肢がアンケートで、お願いいたします! @自称東堂の婚約者が出てきたり、無事本家当主となったレン兄さんが「弟を取り戻しに来た!」と東堂家にやってくるが、尽八と幸せに生活をしていると知り、呼び戻すのを断念 母親も「まあ私が探してきちゃったわけだしねえ…いいわ、その代わり跡継ぎは姉さんになるわよ」「望むところだ 金と地位が欲しければオレは自分で掴む」とそのままハッピーエンド A東堂の幸せの為…と姿を消した巻ちゃん 数年立って兄の援助もあり自分の事務所を立ち上げる 大手企業の協賛があると聞いて、相手社長とアポイントメントを取ったら、それは東堂の立ち上げた新しい会社だった 「もう…逃がさんよ」 とちょっとの別れがあるけど最終ハッピーエンド B自分がいては、東堂の足枷になると悩んだ巻ちゃんは、少しずつ自立する準備を隠れてしていたが、ある日それが発覚 目が覚めたら見知らぬ部屋にいて、「黙って…どこに行くつもりだった?」と闇堂さん光臨 監禁メリバエンド (巻ちゃんは東堂家に罪悪感はあるけれど、幸せ 歪んでるけど独占できて東堂さん当然幸せ) C実は事情があって性別を偽って育てられていたけれど、巻ちゃんは実は女の子だった この秘密がばれる前に…と思っていたんだけれど、ある日ラッキースケベが起こってしまい、もう何の障害もなく結婚ハッピーエンド **************** よろしければどのパターンがいいのか教えて下さい …本当はバッドエンドパターンも入れるべきなのですが、選択肢4つまでなので… リツイートなどして下さると多くの意見が聞けて、うれしいです バッドエンド一押し!という方はコメントででも一言くださると、なるほど…と参考にさせて頂きます ご覧下さった方、ありがとうございました! 結果→1位 @40%越え ほとんど断トツ 2位 A25%程度 1回だけ1位になった 3・4位 BとCほぼ同率だけど何故か数パーセントBが上(票数的に2%上というのはどういう計算だろう…) 普段にょたを書かれている方がこのアンケートをやったら、結果違ってたろうなーと思います |