【東巻】そろそろオレはぶち切れても許されるべき




ツイッターで、思いついたことをネタ的に書いているのですが、その中から思いついたもの
ギャグなのですが、アダルトグッズが出てくるのでR-15指定とさせて頂きます

*毎回タグやメッセージ、感想や評価などなど色々ありがとうございます
特にこれの二つ前の作品は、今までにないメッセージ数を頂き、とても嬉しかったです

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東堂尽八の表情というのは、非常にわかりやすい。
楽しければ全力で笑顔であるし、怒りを持てば見る人が凍りつくような鋭い眼差しを向ける。
気に食わないことがあれば、率直にそれを態度にも言葉にも出すし、落ち込むことがあれば、これ以上はないほど暗いオーラを漂わせている。

だから、今のような状態は非常に珍しいことだった。
彼自身の記憶を遡ってみても、彼の周囲にいるものに聞いてみても、彼を生まれる前から知っている親に尋ねてみても、見たことがないだろう。
現在の東堂は、菩薩のような笑顔を浮かべながら、内心でブチ切れていた。

ことの発端は、二週間前の夜の事だった。
彼独自のトレーニングということで、総北の巻島と山へ昇るを理由に休部届けを出し、そのまま週末であったのを理由に泊めてもらう。
今日は両親がいないから、もてなせねえぞという巻島相手に、巻ちゃんがいるだけで充分なもてなしだと東堂は返す。

「サラッとくせェこと言うなショ…」
そう言った、巻島の頬はかすかに紅い。
面映そうなその表情に惹かれ、東堂はそっと自分の唇を乗せた。
「んっ……」
かすかに身をこわばらせたものの、東堂が腰に手を廻せば、恥じらいに耐えるように、きゅっと東堂の胸元を掴む。

――かわいい、愛おしい、食べてしまいたい。

そんなさまざまな感情が渦巻くが、巻島は現役の自転車乗りだ。
男同士の交わりは、軽く調べただけでも腰や尻への負担がケガレベルでシャレにならないという。
巻島は愛しい人ではあるが、単に蹂躙し喰らい尽くしてしまいたいだけの相手ではない。
その能力を尊重し、自他共に認めるライバルとして、迂闊な事は出来ぬのだと、東堂は耐えた。

絡ませた舌のぬめりや、粘膜の柔らかさは、ヤケドしてしまいそうなのに、夢中にさせる。
ぴちゃぴちゃと、淫らな水音を立てて、その口腔を味わっているうちに、巻島の目はとろんと霞みがかったようになり、全身ですがり付いてくる。
「ふ…んんっ…」
鼻にかかった、甘い声。
おずおずと巻島からも、舌を絡めてきたのが嬉しくて、無意識に巻島の襟元から東堂は指を差し入れた。

服の下の滑らかな肌は、外気で冷たくなっている指の温度に反応をしたのだろう。
びくんと反射的に、巻島が小さく震えたことで、東堂も自我を取り戻した。
「巻ちゃん……好きだよ」
そう言って、手を止めた東堂を、巻島は泣きそうな目で見つめ返す。

両親が不在だと告げたのは、巻島にとっての精一杯のアピールだった。
だが東堂は、キスだけで巻島を求めるのをやめてしまい、少し頭を冷やすと、風呂へ向ってしまった。
日頃の態度からも、その言葉からもけして東堂は巻島を嫌っているのではない。
今の口接けだって、ゆっくりと皮膚を伝った硬い指先だって、疎い自分にも解る情欲の色を湛えていた。

――なのに、何故。
その夜は結局、東堂の後を追って、お風呂に入った巻島が出てきた頃には東堂は別に用意しておいた布団で寝入っていた。
少し前であれば、東堂は狭くてもいいから自分のベッドに寝ると言い張って、こちらが拒んでもなし崩しに、押し入っていたというのに。
翌朝の別れには、いつもの東堂だった。

鬱陶しいほどの思いを告げ、好きだといい、キスをしているのに何もしてこない。
自分に魅力がないからだと、そういった理由ならば諦めもつくが、東堂がふと無言になった時に振り返ると、そこにあるのは餓えたような目だ。
日頃口数が多いと文句を言っているが、黙られていると非常に居心地が悪い。
好きだといわれて、あれが求められる視線かと、ようやく理解をしたのに…何故、東堂は求めてこないのだろう。

思い悩んだ巻島が頼るのは、ネットの情報だった。
色々なキーワードを試し、情報の海を探索した結果、巻島が得た結論は、
『東堂はEDをわずらっているに違いない』というものだった。

ED…すなわち、勃起機能の低下である。
ティーンズ雑誌でも、稀にみかけるのは「初体験で緊張をしすぎて、勃たずに失敗してしまった…」という相談だ。
東堂も、それなのだろう。
相談者の多くは、自分のふがいなさを悔やみ、彼女に呆れられていないかを案ずるものだった。

(東堂……イケメンなのに 気の毒ショォ……)

まがりなりにも、自分は東堂の恋人なのだ。
その悩みを解決すべく、自分にできることをしようと、巻島は新たなページをクリックした。

そして、冒頭に戻る。
東堂にとっては運良くというか、運が悪くというか、本日も巻島両親は不在だった。
今日は下山後に雨に降られたので、帰宅してすぐに互いにシャワーも済ませている。
話があるショォと、ベッドの上で正座した巻島が、東堂に正面を向いて、こちらに来いと招く。

ベッドの上で、誘いをかけられるという非常に魅惑的、かつ自制心が要求されるシチュエーションに、東堂はくらりと眩暈がした。
どこまで自分を煽ればすむのだ、この小悪魔は……いや…天使か……!
「無心……無心になるのだ 東堂尽八……耐えろ……っ!!」
「何をブツブツ言ってるショ?」
巻島の正面に、座らされた東堂。
その東堂の膝に、乗りかかるように巻島が身を乗り出し、上目遣いに覗き込む。
風呂上りのシトラス系の爽やかな香りが、東堂の鼻腔をくすぐり、大きく開いた襟元からは、胸先の尖りがほんの少し、見えてしまった。

「………〜般〜若〜波〜羅〜蜜〜多〜心〜経〜観〜自〜在〜菩〜薩〜行〜……耐えろオレッ!!!耐えるんだ……!!!」
いきなり般若心経を唱えだした東堂に、巻島は目をぱちくりと見開いて、何度か瞬きをした。
(東堂ォ…かわいそうショォ……宗教に頼りたいほど、困ってるショォ…)
だが安心して欲しい、自分は色々足りないところもあるかもしれない人間だが、できることはやるのだ。
一通りのお経を唱え、荒い息をしている東堂に、巻島はこれ以上はないほど、優しく微笑みかけた。

「つらいショ…?東堂 もう大丈夫だからな」
まるで聖母のようだと、穢れた自分を東堂は反省をした。
巻島は、自分のよこしまさに気が付き、受け入れてくれようとしているのだろうか。
その真っ白な笑顔のまま、巻島は大きな羽枕の下をさぐっている。

「東堂、これ…よかったら使ってほしいショ」
巻島が袋から取り出して、一つ一つ並べているのは、……いわゆる大人のオモチャ、アダルトグッズというものだ。
「……ま、巻……ちゃん……?」
「箱学は寮だもんなァ こういうの、手に入れにくいし保管とかにも困るよな」
気が付かなくてすまなかったとばかりに、詫びるその姿は愛らしさの塊だが…手にしているのは、かなり妖しいシロモノである。

「……巻ちゃん、この薬は?」
「バイアグラっショ あ、大丈夫だぜよくある偽物とかじゃなくて、ちゃんとしたものだから」
いやいやいやいや!?偽物とか、ちゃんとしたとかそういう事が聞きたいのではないのだが…と、聞き返すには、東堂はあまりに混乱していた。
だがこの薬の一つで、理解した。
巻島裕介は、東堂がEDで悩み手を出せずにいると、解釈をしたのだと。

並べられている品物は、あきらかにエログッズとわかるものと、なにやら医療器具的なマークがついているものとがある。
左から、ケガ防止用のローションに、前立腺用のバイブ機能付きローター、直接刺激するための指用コンドーム、そしてエネマグラだと巻島は説明をした。
「え、えねまぐら?」
「説明書を見ると、ケツに入れて前立腺を刺激するらしいぜ?なんか…慣れたらすげえ気持ちいいみたいな感想もあったから、東堂も大丈夫っショ!」


……巻島はこれらをどのように、手に入れたのだろうか。

アダルトグッズの専門店に、この無防備さで訪れ、アナル用開発グッズを選ぶ巻ちゃん。
その艶かしい肢体を持つ高校生が、頬を赤らめながら、レジで差し出す。
すると店長は言うのだ。
『キミ…このお店は18歳以下禁止だよ それにこんなエッチな道具をどうするのかな』
『え…えっと……』
『恋人に使ってもらうのかい?それとも使うのかな どちらにしろ、いけないことだ』
『ショォ…』
『さあ学生証を出して こんなお店に入った子は学校に通報しなくてはね』
『そ…そんな…オレ、知らなかったショォ… 入っちゃいけないなら帰るから、学校にだけは……』
『そうかい…?それなら取引をしようか 君の体でこれを試させてもらえば、この学生証は返してあげるよ』
『……尽八ィ……助けて……あっいやショォ…んっ…あぁんっ……』

いきなり滂沱と泣きだした東堂は、「よし、殺してこよう」などと、物騒極まりない発言をしている。
何があったのかと、何度か肩を揺さぶれば、ようやく我に返ったようだ。

「巻ちゃん……これらは…」
「ネットの通販で買ったショ 寮とかだと届けられても困るもんなァ」
名案だろと、巻島は無邪気に微笑むが、普通自宅でも同じようなものだと思う。
巻島邸のように、隠そうと思えば無尽蔵に隠せるスペースがあるほうが、普通ではないのだ。

「なあ東堂…、オレは恋人がEDでも…軽蔑とかしないショ 勃たねえもんは仕方ねえよなあ」
可愛く優しく笑いながら、ゆっくり開発していけばいいショと巻島は告げた。

ぶちっ

自制の紐が切れる音というのを、東堂は脳内で確かに聞いた。
並べられた道具越しに、巻島をそのままベッドへと押し倒す。
「と、東堂……?」
「なあ巻ちゃん 色々とエッチな道具をオレのために集めてくれたのだな」
「……?」
礼を言うにしては、東堂の目の色は少し物騒で、巻島は小首を傾げる。
その警戒心のない巻島の耳朶に、東堂は低く腰をくすぐるような低音で
「…エロいこと調べて、興奮したか…?オレとセックスしたくて……こんなに頑張ってくれたのだろう…?」
と囁いた。
東堂のためとは思ったが、そこまでは考えていなかった巻島が、瞬時に朱で刷いたように、真っ赤になった。

そして微かにだが、調べているときに、そんなに気持ちのいいものなのかと、興奮をしていたのも事実だ。

東堂の指先が、巻島の腰のラインを辿り、そっと局部を撫でた。
「ひゃっ……」
反射的に膝を閉じれば、かえって東堂の腕を固定して、もっと触れとねだっているようになる。
「……可愛いな、巻ちゃん ……オレはEDではないよ」
その身をもって知れとばかりに、東堂が強引に閉じた膝を割って、自身の腰を押し付けてきた。

重なった箇所は、その言葉通り隆起し、固くなっているのがわかった。
「え……あの…………東堂ぉ……?」
「オレは巻ちゃんのほうが心配だぞ 人前でしれっとグラビアを見ても下半身がピクリとも反応していないではないか」
「オ、オレはグラビアアイドルのポーズとかラインが好きで……」
「その反応が、10代後半の若者として不健全だと言っているのだ」

巻島が用意した、グッズを手に、体重を使いのしかかる東堂が、にっこりと笑った。
「巻ちゃんに痛い目を味わわせたくなくて、オレは耐えてきたのだが……本人がこれほど開発道具を整えてくれたのだ」

……さあ、どれから試そうか?

――あれ?オレ何か間違えたショ??
いまだ呆然と、微塵の警戒もなく東堂を見上げる巻島は、これから数時間、泣いて許しを請うほどの快楽を与えられるとは、まだ理解していない。