【東巻】独占おっぱい


おっぱいは男の夢だ、ロマンだ。
古来より伝わるこの言葉を言い残した偉人が誰かは、定かではない。
だが遺伝子に刻まれているものではあるのだろう、古今東西、ごく一部の幼い頃から特殊性癖に目覚めたものでもない限り、おっぱいは嫌われるものではなかった。

巻島裕介の、8歳年下の幼馴染は、それはもう、生まれながらのおっぱい魔人だった。
ふくよかなおっぱいを持つお姉さんがいれば、これ以上はない極上の笑顔で手を伸ばし、抱き上げてもらい至福の谷間に顔を埋める。
ちっぱいのお姉さんだって、それもまた良しだ。
天使のようと称される笑顔で、無邪気に顔をほころばせ、もみじのような手でおっぱいを触ってにっこりされては、怒れるものなどいるものか。

東堂尽八、恐るべし。
幼いながらも自分の外見を利用して、古今東西ありとあらゆるおっぱいを触ってきた男だった。

それを懸念したのは、東堂庵の女将である母親だった。
今はまだいい、小さい子の無邪気な行動であると、誰であれ大目に見るだろう。
だが数年後、この子がこのまま大きくなっては、へたに美形な分だけ危険だ。
犯罪的な意味でも性的な意味でも、狙い狙われ、意味も解らぬまま巻き込まれてしまうかもしれない。

そう案じた母親が出したのは、『おっぱい禁止令』だった。
とにかく女性に抱きつくな、女性の胸元を触るのは失礼なことだとこんこんと言い含められ、今までの天国をいきなり奪われた東堂は、号泣をした。
昨日までの自分と、何一つ変わっていないのに、いきなりおっぱいを触ってはいけない、無礼だと言われて、混乱をしているのだろう。

東堂が巻島家の庭を訪れたのは、巻島に泣きつくためだ。
ガラス越しに、まきぢゃーんと連呼する東堂に苦笑して、巻島はガラス窓を開ける。

――びぇびぇと大泣きする幼馴染をなぐさめるべく、巻島は冗談のつもりだったのだ。

「尽八ぃ かわりにオレのおっぱい吸うかぁ?」
巻島の脳内では、いくら巻ちゃんでも、男のおっぱいなんておっぱいじゃない!そんなのいらない!!と東堂は答える予定だったのだ。
泣かれるよりは怒りのほうがマシだろうとの、軽い気持ちだったのに。

「吸う!!」
輝くような、笑顔だった。
「…………え…」
「巻ちゃんのおっぱい! 吸う!!!」
「あ、いやちょっと……い、今のは冗談で……」
「……まきちゃん、おれにうそをついたのか……?」
「あ、いや嘘じゃなくて その冗談……」
しどろもどろに、手で抑えるようなジェスチャーをする巻島は、冷や汗でいっぱいだ。

光に満ち溢れていたような表情は、見る見ると泣き顔に変わっていく。
「うぎゃああああっ!!巻ちゃん!!!うそついたああああ!!! おっぱい!!吸わせてくれるって言ったのにいいい!!」
「わ、ちょ!!!待て!!!」
「うわあーーん!!まきちゃんのばかああああ おっぱい!巻ちゃんのおっぱいいいい!!吸うかって言ったあああ!!」
「ちょっ!!わかった!!!解ったから黙るショ!!」
「…おっぱい、いいのか?」
「………とりあえず部屋に帰るまでは、ダメだ」

往来で、大声で巻島のおっぱいを連呼されるのだけは、避けたい。
東堂の叫びをとめるべく、告げた言葉は、更に自分の首を絞めるものだったと気がつくが、もう遅い。
巻島がどう言いくるめるかを、考慮している隙に、年下の幼馴染はかつて知ったるとばかり、リビングの窓外にキレイに靴を並べ、巻島の部屋へ向って行った。

ちょこんと正座をして、巻島の部屋扉正面に座っている東堂は、吸う気がまんまんだ。
これを…諦めさせるのは……難しい……というより、無理だと、東堂と生まれた時から付き合っている巻島は悟る。
「……東堂、あのな オレは女の子じゃねえから、おっぱいまったいらショ」
「かまわんぞ!まきちゃんのおっぱいなら平気だ!」
「いや オレが平気じゃねえよ……」
「巻ちゃんのおっぱいなら平気だ!」
「……大事なことじゃねえから、2回も言うな」

げんなりと、俯いた巻島の様子に隙を見つけたのだろう。
膝を落とした巻島のシャツを、すばやくめくると、東堂はその合間にもぐりこみ、すかさず巻島の胸の突起を舐めた。
「ひあっ!?」
巻島が硬直をして、咄嗟に動けなくなったのをいいことに、東堂はそのままそこに吸い付く。
ちゅうちゅうと音を立てて、いまだかつてない感触を受けた巻島は、全身を鳥肌立てた。
粘膜に包まれて、敏感になった箇所は、まるで内側からも羽根でくすぐられているような、奇妙な触覚を呼び覚ます。

「やっ……や、だめだ尽八 だめっ…」
「まひ、ひゃん まひひゃんの、おっぱいかわいい ぴんく色だ」
「尽八…も……離れ……」
「や!」
意識はしていないのだろう、だが東堂はミルクが出ないのがもどかしいとばかり、巻島の乳首を舌で転がし、また強く吸った。
「ダメショ、じん、ぱち……やっ…」
ガクガクと震え、巻島は涙ぐむ。
力の入らぬ手で、離そうとしてもシャツの内側にもぐっている東堂は、しがみついて、夢中に巻島の胸にむしゃぶりついていた。

「ふぁっ……も……やぁ……」
座ることもままならず、絨毯の上に体を横たえた巻島は、シャツを首筋まで肌蹴られ、かなり際どい姿となっていた。
いやだダメだと繰り返しても、至福のおっぱいタイムに浸っている東堂は、ひたすらに巻島の胸を責める。
右の胸が解放されたと思えば、左の乳首が吸われ、その間に小さな指が突起の感触が面白いとばかり、摘んだり転がしたりと気ままに遊んでいた。
妙な疼きが、体全体を支配し、もう嫌だと本格的に巻島が泣き出したことで、ようやく東堂は止まった。
「まきちゃん、まきちゃん 泣かないで」
――泣かせたのは、どいつだよとは、年上のプライドでさすがに言えない。
巻島裕介の、一生しなくても済んだかもしれない、胸への……当人は性的な意味ではなかったのだろうが……愛撫は、こうして年下の幼馴染によって奪われてしまっていた。
しかも、これは初めてであり、その後大泣きすれば巻島が折れると踏んだ東堂に、何度か経験させられたのは忘れたい記憶である。

10年後。

忙しいと、あまり幼馴染の相手が出来ない日が、巻島裕介には続いている。
それが一ヶ月続いたある日、中等部の三年生になっていた東堂が、巻島の部屋に窓から乗り込んできた。
東堂は中学生になった頃から、女性の目を気にするようになり、オシャレだカッコイイ自分だにこだわるようになったと聞き、弟が兄離れをした気持ちで
見守っていたが、それでも日々何気ないやり取りは続いていた。

口数が少なく、それでも巻島から離れないのを疑問には思っていたが、こういった無礼な行動は主義に反すると、今までになかった。
「尽八…?」
「巻ちゃん、久しぶり」
「あ、ああ……」
「夜遅いからな、ご家族を起こしては申し訳ないから、こちらからお邪魔した」
巻島の部屋は、二階だが隣家との塀を足場にすれば、そこから雨避け伝いにベランダに辿れ、巻島の部屋まで侵入可能だった。

少し休憩を取ろうと思っていた巻島は、珈琲でも入れてこようと立ち上がったが、強い力で手首を引かれ、引き止められた。
「…なんだよ」
「なあ巻ちゃん オレは今 悩みと心配を抱えイライラしている」
「……そうかヨ」
何が言いたいのかは解らぬが、まあ甘えたいのだろうと、巻島が東堂の頭を撫でたが、表情は変わらなかった。

「巻ちゃん」
「だから何だよ」
「おっぱい 吸わせて」
「…………………………は?」
「巻ちゃんの、おっぱいが吸いたい」

ちょっとこの子何言ってるんですか自分の幻聴ですか幻聴ですよねそれとも悪い夢見てるんですかいやいやなんか疲れているんだ自分そうに違いない。

誰にともなく、敬語で語りかけている巻島が聞かなかったことにして、へたくそな笑顔を作る。
「ほ、ホントに東堂は疲れてるショォ 早く帰って休め、な?」
「…オレが幼い頃、何度も巻ちゃんのおっぱいを吸っていたって 誰かに相談してもいい?」
巻島の笑顔に対抗したように、東堂が笑わぬ目付きで、嘘の笑みを作る。

「八歳年下の幼馴染に、胸を吸わせてたって…周囲が心配するよね?」
「東堂……おま……何……言って……」
「言ってるだろ 悩みのせいでイライラしてるから巻ちゃんのおっぱい触りたいって」

呆然と巻島が動けぬのをいいことに、東堂は巻島の肩を押した。
ぐらりとバランスを失った体は、用意に寝台に倒れこむ。
身構えるより、意識をするより先に東堂は、手早く巻島のシャツをめくり、外気に晒され立ち上がりかけている胸の粒に舌先を絡めた。

「ひぁっ……なにっ……!?」
「何とか、まだそんな事を言ってるんだ」
わざと痛みを与えるように、東堂が強く巻島の乳首を摘んだ。
「やっ…!尽八!!なにを……」
びくびくと体を震わせ、涙目になった巻島を見て、東堂がようやく微笑む。

「…なんだ、巻ちゃん 本当に忙しかったんだな」
「…?」
「ずっとオレと会わないようにしてるから、恋人でもできたのかと思った そしたら言ってやろうと思って こんなにエロくて感じやすいおっぱいで、女の恋人なんて無理だよって」
興じるように、目を細めた東堂に、揶揄されたと羞恥で顔を染め、巻島は唇を噛む。
悔し紛れに
「クハッ…じゃあ男の恋人ならいいのかよ」
言い返してやれば、東堂の目つきが獰猛に変わる。
「許さんよ」
言うなり、東堂は口端を歪み上げ、巻島の胸を音を立てて吸い上げた。
「はっ… あっ…東堂…やめ……やっ……」
「男でも、女でも……巻ちゃんのおっぱいは、誰にも譲らん これは、保険だ」

そう言って東堂は、ポケットから携帯を取り出し、涙目でしどけなく横たわる巻島を撮影した。
白い肌はほのかに上気し、そそり立った乳頭は色濃く、一見すれば事後のようにしか見えない。
「…巻ちゃん、見てくれ ほらこんなエロいぞ」
撮られた映像を見た巻島は、東堂の行動が読めずに、ひたすら困惑するしかない。

「東堂…お前……なに…考えて…」
「巻ちゃんを、ずっとずっと永久貸切り予約しただけだ …ここを間違っても他人に触らせたりしないでくれ」
きゅっと、搾乳でもするように先頭を摘んで、東堂は「好きだよ」と巻島の耳朶近く囁いた。