【東巻】巻チャンの美的感覚はやっぱり変だったと確定して東堂が血涙を流した件について



8月某日
大学はかなり前から夏休みに入り、構内にいる人間はまばらだ。
サークルというより、相変わらず体育会系バリバリの部活といっていい、自転車競技部ではあるが、大学生ともなると、財布の都合で事情がある奴も少なくない。
この短い期間にがっつり稼げという名目と、さすがに熱中症はやばいから、各自のスタンスで練習をしろと、今は自由練習の期間になっている。
だがたまたま、オレと金城は特に予定もなく、部の施設の利用中、高校インハイについての話題になった。

「荒北も、行くんだろう?」
尋ねるというより、確認に似た響きで、金城は問う。
「まぁネ 後輩どもに叱咤激励…っつーよりも、示し合わせてたまに会うのに都合いいからネ」
レースなどに出向けば、知った顔に合うのは珍しくないが、やはりそれはそれ。
たまには会ってバカ騒ぎをするのに、予定の都合を確認しなくても、ほぼ皆その日は空けているだろう。

「金城んトコはあと田所ぐらいだろ どうせだしオレらと出発から合流しねえ?」
多分、フクちゃんや新開も歓迎する。
だが金城は
「すまん、会場で合流は望むところだが…巻島を迎えに行かなくてはいけなくてな」
と片手を掲げ、軽く謝罪をした。

「あ、巻チャン帰ってくんだ? 東堂のトコにも連絡行ってっかな」
あの巻チャンバカは、さぞかし浮かれていることだろう。
――いやでも、絶対に自慢メールやらLINEで盛大に連投しているだろう事なのに、オレは見た記憶がない。
たった今、メッセージが来たのだろうかと無言に考えている俺を察したみたいだ。
「いや連絡はよこしてない」
と金城は告げた。

「……連絡来てないのに、なんで迎え?」
帰国するかどうかもわかんないよネ?っていうか、何それ過保護か…のオレの内なる疑問は当然だ。
金城は苦笑を浮かべ、まあそうだと頷いた。
「だが巻島の性格からすると『小野田をサプライズで激励してやるショォ!』とまず確実に帰ってくる 
話を聞くに小野田はまめに手紙を送っているが、巻島の返信はほとんどないみたいだからな」
ズレてはいるが、アイツは義理堅いと金城は言う。

「それにしたって、お迎えはいらねぇだろ 適当に待ち合わせすればいいんじゃねェの」
「……荒北、お前は巻島を知らん アイツは……電車にもろくに乗れない男だ」
「…は?」
真面目な顔を崩さぬ金城は、冗談ではないらしい。
いや元々、ジョークなどをあまり言わない男ではあるが……正直、意味がわからない。

「電車に…って目的地まで切符買って、行く先まで乗ればいいだけダロ」
「普通…ならばな まず巻島は券売機で切符を購入して、改札に行くまでに切符をなくす」
「どうやってだよ」
普通の概念で想像する駅は、切符売り場のすぐ横が改札のはずだ。

続ける金城が言うには、巻島は普段右側の尻ポケットに、手にしたものを無意識に入れるクセがあるらしい。
だがその日は私服で、右側に尻ポケットがないボトムであったのに、巻島は受け取った切符をそのままそこに入れた(つもり)。
もちろん切符は、重力の法則に従って床に落ち、全員が改札を通った後、途方にくれた顔で
「切符がないっショ……」と呟く巻島がいたらしい。

「巻島さん!足元に落ちてるの、切符ちゃいますか!?」
目ざとい関西弁の後輩が、その時は見つけてくれて、なんとか改札を通過した。
その時に移動は西武線だったのだが、巻島は「西部ナントカ線に乗れば付くっショ」と行き先も確認せず、来た車両に乗ろうとして、そこは田所が全力で止めたという。
乗るべきは西武新宿線だったのに、巻島が乗ろうとしたのは西武園線だった。それは西武園にしか行かない。

「もうお前は、手を引いて歩かれたくなかったら、とにかくあと付いて来い」
小声で注意をしたというのが、田所の優しさだと、荒北は思う。
自分がその場にいたら、無言で背中をひっ捕まえて、歩いていたに違いない。

「まあ…確かに心配…だネ」
「それだけではないぞ」
今度はしっかり左の尻ポケットに切符入れたっショ!と巻島は得意満面だった。
だが構内から出ようとすれば、自動改札は切符を入れたにも、関わらず無情にもバタンと、巻島の目前で閉められてしまった。
「ショ!?……ショッ? ……ショォォ?」
すたすたと進んでいく総北メンバーだが、小野田一人がが気づき、慌てて引き返す。
「巻島さん!」
「小野田ァ!」
「どどど、どうしましょう!?」
「ど、どうすればいいショ!?」
二人してワタワタと、周囲を見回すが、あいにく駅員が不在だ。

「だ、大丈夫です巻島さん! きちんと切符は買ってるんです!こ…ここは強行突破で……」
「そ、それしかないショォ」
ごくり、と喉を嚥下させ真剣な眼差しで見詰め合う二人の横に、異変に気づいたらしい駅員が近寄ってきた。
「どうかされましたか?」
「ショォ!?」
「あ、あわわわわわわ」
妖しい相談をしていた、このタイミング。

見るに見かねたらしい金城が、わざわざ引き返し駅員に頭を下げた。
「すみません、切符を入れたのですが 弾かれてしまったようで」
「あ、よくあることなんですよ ポケットとかに入れてると、擦れとかで磁気情報が歪んだりして…失礼」
入口に返されている切符を見た駅員が、千葉からいらしたのですねと問いかけ、『はい』と答えればそれで終了だった。
「どうぞこちらからお通り下さい」
と有人改札口に誘導され、巻島はようやく改札を出れたのだという。
「座るとすれ易い箇所のポケットだからな」
……後輩の某電波のように、人の話を聞いておらず、団体行動から遅れるというのであれば、好きに遅れろ自己責任だと思う。
だが連れとして、この行動をする奴がいたら……だめだコレ、目を離しちゃいけないと、思う訳だと荒北は納得をした。

******************
結局、当日金城と田所は、六時間遅れて日本に戻った巻島を、ずっと待っていたのだと言った。
「すげぇな…東堂もバ過保護とか思ってたけど、お前らもかヨ」
六時間と言えば、1/4日だ。
約束をしていたって、キャンセルをしても罪にはならない時間だろう。
もうすぐ到着するとの連絡を受け、田所パンの文字をすかさず見つけていた東堂は、
「来たようだな」と小さく呟く。

車の扉が開き、元総北チームの姿を確認するより先に、音もなく東堂は、巻島の出口に移動をしていた。

「巻ちゃん!!巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん!! ひどいではないか!何故オレに一言帰国すると告げてくれん!」
「ショ…ショォ……」
「オレが……どれだけ………」
畳み掛ける饒舌ではなく、無言の東堂はさすがにこたえたのだろう。
巻島はいつものように寄せた眉根のシワをさらに深くさせ、
「すまなかった 日程がはっきりしなかったし、帰って来てからびっくりさせようと思ったショ」と東堂を覗き込む。
「…怒ってるかァ…?」

――巻チャン、ヤルねェ 東堂がそんな顔されて、そんなポーズ取られたら怒りを継続できないと、よくご存知なこって

案の定、怒りが分断された東堂だが、今度は巻島のヘソについて言及をはじめた。
もっともこちらは、羞恥混じりの説教で、よくある男の嫉妬心だと思えば、まあとめるのも野暮ってもんダロ。

勝手にやってろと、オレのついた吐息に気が付いた金城が、爽やかに口端を上げる。
「言っておくが、巻島のアレは天然だぞ」
「マジでか」

オレ達の会話の向こうでは、スプリンターズが挨拶という名のどつき合いをしている。
……あれが挨拶なのか、筋肉バカども。
普通の感覚で言ったら、通報ものだぞ。

「しかも、だ」
めずらしく金城が、ニヤリとイタズラめいた笑みを浮かべた。
コイツがこんな顔をするとは、珍しい。
どうしたのだろうと、黙ったままでいると、金城はわざと周囲に聞こえるよう少し声を大きくした。

「なあ荒北聞いてくれ 巻島は、迎えに行った俺をわからなかったんだ」
ビクゥと背筋を瞬時に伸ばし、慌てて振り返った巻島は手をワタワタと「違う、違うっショ!」と首を振っていた。
「オレは、巻島の名前まで読んだのに 他人だという顔をされたな」
「え そりゃひでェな」
運転をしていたという田所も、その話は聞いていなかったらしい。

巻チャンが少し、泣きそうな顔になった。
――趣味が悪いかもしれないケド、少しかわいい。
無言で連写してる東堂、撮影音してないんだけど、それ改造アプリか犯罪か。それとも動画か。

「……金城の顔は、平均的日本人の顔だから、名前呼ばれたけどオレの気のせいで、それで、会いたいと思ってたから別人がそう見えたのかと思ったショ…」
―――待て、待て待て。

ちょっと待ってツッコミどころが満載すぎて、咄嗟に言葉が出ないんだケド。
あ、よかった、オレの価値観が変だったわけじゃない。
周囲を確認すれば、連写していた東堂はもとより、新開ですら自分の耳を疑うように止まっていた。

巻チャン、今なんとおっしゃいました?
金城が平均的日本人?
いやいやいや、口調が落ち着きすぎて、坊主頭なせいで、年より老けて見えることは、否定しないけど…こいつ、客観的に見て、イケメンだよな?
動じていないのは、笑顔のままの金城と、
「相変わらずボケてんなあ!」と豪快に笑う田所ぐらいだ。

「……巻チャンさあ……金城が平均って言った?」
「言ったな」
当人たち以外で、一番近くにいた東堂にとりあえず、確認をしてみる。
「……金城って、客観的に見て端整な顔っつー部類に入るよな?」
「オレほどではないけどな!」
うん、東堂がこういうからには、やはりイケメンの一員になるのだろう。

「巻チャン、ちょっと聞きたいんだけど」
「何ショ?」
「オレらの中で、中身関係無しに顔だけ見て、純粋に一番のイケメンって誰?」
とりあえず、巻チャンの美的水準を、確認しておきたい。
……オレとか御堂筋とか……、金城が平均だというのであれば、どうなるんだ。

「……荒北、顔に自信があるからってそーいうのひけらかしたら、よくないショ」
困り顔の巻チャンのいう事は、日本語なのだろうか。
誰か、通訳をくれ。
「巻島は、この中ではお前が一位を張るぐらいのイケメンだと言ってるぞ」
――金城、通訳サンキュー だけど今度は意味がわからん。
「まあ…どうしてもっていうなら……荒北と田所っち……どっちもハンサムだよな一番…どっちかなあ…」
あれなにこれ、褒められているみたいだけど、欠片も嬉しくない。

慣れているらしい田所も、苦笑をしている。
「巻ちゃん!!美形と言えばこのオレだろう!?」
東堂の必死のアピールに、巻島はこのうえもなく、優しい微笑を浮かべた。
「東堂はえらいよな、そうやって自分を卑下することねぇんだから……オレもいつも、見習いてぇって思ってるショ」
慈愛の瞳だ、聖母の笑顔だ。
……でも巻チャン、東堂……凍ってるヨ?

「なあ裕介くん、ちょっと聞いてみたいんだけど去年のインハイ、見かけだけだったらどこが一番顔面偏差値高かったと思う?」
新開まで、珍しく巻チャンに絡むのは、やはり理解できねえ感に突き動かされてだろう。
「そりゃ……京伏……だろ あそこはホント、かっこいい男ばっかりだったよなあ」
「マジか」
「え?なんかおかしなこと言ったか?」

ちょっと待って、オレの価値観がぐらぐら揺らぐ。
……あそこは、偏見嫌い、ウゼェ悪印象を除外しても……イケメンと呼べるレギュラー……該当者すげぇ少ないだろうよ…。
「巻島 ちなみに京伏の一番は?」
「そりゃあ 御堂筋っショ!すらりと伸びた手足にあのフォーム…!…性格は最悪だけど、かっこいいショ……」
瞳をキラキラと握りこぶしで語る巻チャンは、いい笑顔だ。

その傍らで、ぶるぶる震えた東堂が、無言で泣いている。
――いや、うん…。普段ならオレはここぞとばかり、東堂をからかうが……さすがにこれは……。
「巻ちゃん……」
「東堂……、そんな気にすることないショ …泣くなよお前はイケメンじゃなくても、女の子にすげぇモテてるんだから…すごいっショ!中身をみんな評価してくれてるんだぜ?」
「巻ちゃん!オレは!スリーピングビューティの異名を持つ美形!!」
「……それ、お前以外誰も言ってないよな?森の忍者だよな」

「裕介くんにとって、東堂の『指差すやつやってー!』って例のアレ、お笑い芸人の持ちネタっぽく思ってるだって あと天はオレに…も自虐っぽいトークネタに思ってるらしいよ」
新開が、田所経由でこっそり耳打ちをしてきた。
普通の会話にしないのは、いくらなんでもここで追い討ちはかけられないからだろう。

「それに東堂…気にすることないショ オレ、イケメン苦手だし」
―――なんだろう、この会話。
いっそ真波クラスに電波であれば、ハリセンで頭をぶっ叩くなり、蹴りを入れるなりができるのだが、なまじ会話が理解できてしまうだけに、怖い。
っつーかマジで、東堂の様子が怖くて伺えない。
東堂の自信過剰というか、鬱陶しい俺様というか、たまには挫折しろバァカなんて気持ちは、巻チャンが英国に行くそうだと、寂しそうに告げた東堂を見た瞬間に、霧散した。
その久方ぶりの再会で、これは……。
聞いているコチラの、心臓に悪い。
おい、何とかしろヨと新開に目線をなげるが、無言でかわされた。……まあ投げられても何とかいく話題と、いかない話題は存在するよな…。

「荒北とか田所っちとか……正直 初対面のとき、すっげぇ眩しくてオレ挙動不審になっちまったもんなァ」

……そうそう、初めて会ったとき巻ちゃん絶対こっちに視線合わせなかったよネ。
あれ、オレが怖くて、ビビられてンのかと思ってたヨ…
おどおどと東堂の背後にしがみ付いてるし、東堂はそれで幸せそうだし。
「でも東堂はその顔だったおかげで、オレ咄嗟に言い返せたっショ カチューシャださいって! オレは蜘蛛だって」
やめて、さすがにやめて。
これ以上塩は塗りこまないであげたげて。フォローの言葉も思いつかないのに、巻チャンすごい幸せそう。

反論すらしなくなったか、東堂……哀れだ。
…オレが東堂に対してこう思うなんて、普段ならマジありえねえ。

「言いそびれてたけど、あの時はすまなかったショ 東堂のカチューシャ、かっこいいぜ!」
「ううっ……このタイミングで言われても……嬉しく………」
ぼとぼとと、大粒の涙を流す東堂に、巻島もさすがに笑顔を消した。
「え…えと……わ、悪かった……そんなに傷つけること言ってたのに……オレ……今まで謝んなくて……なんか、勝手に…もう許してもらった気分になってたショ…」
しょぼんとした巻ちゃんに、東堂は怒涛の勢いで抱きつき、ひたすらに首を振っている。

「違う……違うのだよ…まきちゃぁぁぁぁぁあんっ!!」
「あの、でも…オレ相手がイケメンだったら、変な髪とか言われてもきっと、黙って何も言い返せなくて、東堂と今みたいに……」
「違うんだ!そうじゃないんだ!!!」

さすがに見かねたらしい金城が、東堂の肩にそっと手を置いた。
「東堂……安心してくれ、こいつの交際相手を選ぶ趣味は、トータルして面食いと呼ばれるレベルだ」
……うん、まあ結果としてはそうなるネ。
巻チャン内では『イケメン=御堂筋・…………オレ<普通以下(?)=東堂』でも、結局東堂を選択してるんだから。

だからお前は、客観的にいい男だという言葉は、今の金城から出る言葉だからこそ、重い。
…今オレが言ったら、東堂の内部崩壊がリアル心配になるわ、うん。

きっと眦を上げ、東堂がこちらを振り返る。
……なんかもう、涙じゃなくて目が真っ赤で、血涙に見えるよヤバいだろ。
ホラーかこれは。
「荒北……すまなかった……」
ものすごく、愛想の悪い、どん底の絶対零度の低い声。
「なにが」
「オレは……高校時代……何も考えずお前をブサイク呼ばわりしていた! それがこんなにも、心を傷つけるものだったのだな!」

……いや、別に。
オレも同じぐらいバカって手前ェに言ってたし、だいたいオレの口悪い仲間だと、うっせブサイクだの普通に言って言われてしてたし、正直妹だってたまに言うぐらいで、
…むしろ謝られる方が、気持ち悪ィ。
「すまなかった!何も考えずにオレは!ブスなどと!!!ひどい事を言った!!!」
「ゆ、許してやってほしいショ荒北…… あの、イケメンは妬まれやすいんだよな」

――やめて巻チャン、オレと東堂のSAN値はもう0よ!
見えるじゃねェわ、正座してぶるぶる震えてる東堂、マジで血涙だわ。

「東堂ォ……」
巻チャンが、そっと東堂の涙を指先で拭った。
正面に屈みこみ、少し責任を感じたみたいに、無邪気に手を差し出す。
「山頂、行こうぜ?アイツら頑張ってるショ!」
「巻ちゃん……」
めずらしい。
東堂が巻島と目線を合わせようとせず、すこしうつむいたままでいる。
「だがやはり、ヘソ出しはならんよぉぉぉぉぉっ!」
「ショォォォ!?」
巻島が防御する隙も与えず、東堂の掌は巻島のシャツから腹部に入り込み、
「こんな!白いすべすべの肌を晒すなど!!腰を丸出しにするなど!!衆人監視の中何を考えているんだ!」

――あ、もう復活してるわ
こりゃ放っておくか。
ベプシマンの着信音が、鳴った。
「フクちゃんもついたってさあ おれ迎えに行ってくるわ」
「オレも行くか?」
「いや、人数 少ねえ方が移動しやすいから、ここで待っててくれ」
「了解した」

背中越しにまだ「ならん!ならんよ!!」という声と「ショオォ!」という声が響く。

炎天下の中、元気なこって。
まあ結局、美的感覚がずれてようが、狂ってようが、相思相愛なら問題はないだろ。
オレの初めてのイケメン認定は、御堂筋と同格レベルというありがたくないものだったが、東堂ザマァのネタは一つ増えたと、オレは鼻歌混じりにフクちゃんを迎えに行った。

オマケ:
「ちなみに巻チャン 中身コミだとイケメン認定どうなんの?」
「そりゃあ 断トツに田所っちショ! それに金城だって、男気あふれて、面倒見良くて、同じぐらいかっこいいショ!」
「あとは?」
「京伏の石垣…だっけ? アイツちょっと会話する機会があったけど、いい奴でかっこいいって思ったな」
……巻ちゃんの、人間性判定は、まあ普通らしい。

――トータルすれば面食い、だがその思考回路は髪色と同じぐらい複雑で、これにつきあえる東堂もすげえと、オレは心から感心をした。