【東巻】診断メーカー


ツイッターで人様の診断メーカー結果まで強奪してしまい、誠に申し訳ございませんでしたのネタ
伊豆さんの『報われないのはわかってたけど』zettさんの『「僕らにとっての世界の終わり』
自分の結果『『素直じゃないとこも可愛くてよろしい。』『誰のものだとお思いで?』せっかくなので、全部ぶちこんでみました!

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巻ちゃんは、男だ。
髪はさらさらのふわふわで、綺麗な光沢を放つ美しさを保っており、肌は白くて滑らかで、長い手足はしなやかで、目元のホクロは
色っぽくて、口元のホクロはエロいけど、紛れもない男だ。
趣味はグラビア鑑賞だと、公言する男。
――ああ、こんな相手に恋をしてしまうだなんて、報われないに決まっている。

だが、それでも。
報われるだとか報われないだとかで、自分の気持ちが動くのであれば、悲恋だとか玉砕覚悟の告白なんて、言葉は存在しやしない。
オレが、巻島裕介を好きだと言う現実。
それを伝えるだけでも、大きな意味があるだろうと、オレは巻ちゃんへの告白を決意した。

巻ちゃんは、優しいから断るのにも苦心をするだろう。
きっと少し困った顔で、「悪ィ…オレ、お前の事そういう対象として思ったことはないショ」と言うに違いない。
…まて、何故想像だけでオレは泣いてしまっている。
いやこれは涙ではない、青春の汗だ。
そして巻ちゃんは続けるだろう、「でもオレは、お前と友人として付き合って行きたいと思っている」
……ああ、なんて残酷で優しい巻ちゃん、ありがとう。

次の想像は、露骨に嫌な顔をする巻ちゃんだった。
「ありえねェ」とだけ言い捨てて、背を向けられる。
……ダメだ、これは泣いても許されるだろう。
多分二日ぐらいは泣く。そうすれば、口は悪くても根のいい荒北や、何気に人をフォローしてくれる新開が、それなりに察してくれるだろう。
そうして、思いっきりグチって、昇華をさせてみよう。

その次の想像は、全力で笑い飛ばしてくる巻ちゃんだった。
「お前、そういう冗談言わねぇと思ってたショ!」
楽しそうな巻ちゃん、だけどオレはこわばった笑顔でいるしかない。
…想像の中の絵面のオレがあんまり可哀想で、オレはやはりそっと涙を流した。

ああ、結局昨日は眠れなかった。
ひょっとしたら、巻ちゃんに会えるのも今日が最後になるのかもしれない。
オレはオレの想像の中、10種類の告白パターンを考えて、巻ちゃんがオレを振っても、笑って受け流せるようシミュレートをこなしている。
…もちろん、10回どれも、涙が溢れたのは許して欲しい。
せめて、友人としてのライバルとしての、存在は許されますように。

「巻ちゃん、好きだ!」
さあどうする、巻ちゃん。
安心してくれ、嫌がられても泣かれても、気持ち悪がられても煙たがられても、オレは見苦しくないやり取りを準備してきたぞ。

「…オレも」

「………は?」
ダメだ、これは通じていないに違いない。
どうしよう、こんなパターンは想定外だ。
「ち、違うのだよ巻ちゃん オレのいう好きは、そういう好きではなくてだな……」

ほんの少し、身を屈めた巻ちゃんの唇が、オレの頬をかすった。
「…こういう、好きっショ?」
イタズラめいた、笑顔。

―――巻ちゃん、巻ちゃんっ!巻ちゃん!!!
何か言いたいのに、オレは呆けたように立ち尽くすだけだ。
今、何があった?
あまりにひどい妄想ばかりをしていたので、これは脳が自分を救おうと夢を見ているのか?

思いっきり頬を引っ張れば、痛かった。
それでも信じられなくて、今度は両頬を思いっきり横へと引っ張ってみる。
痛い。
…夢、じゃ…ない?
「クハッ ぶっさいくな顔」

吹き出した巻ちゃんの声が、まるで呪縛をとく魔法のように、オレの心を溶かしていく。
巻ちゃんとあって、世界はこんなに鮮やかなのだと知った。
そして、今日。
巻ちゃんがオレを受け入れてくれた世界は、こんなにも美しいのだとオレは知った。

「…で。 好きと言っただけで満足か?」
「満足だけど……足らんな」
「じゃあ続きを言えよ」
「オレと、東堂尽八と 付き合って下さい!」
「…ん…」

巻ちゃんが小さく頷くと同時に、オレは巻ちゃんに抱きついていた。
「巻ちゃんっ!巻ちゃん!! 今日、オレ達の世界は一つ終わったな」
「…は? 告白してきて終わったとか、不吉なコト言ってんなよ」
「ちがうぞ、終わったけれど、はじまるんだ オレと巻ちゃんのライバルとしてだけの世界から、恋人とライバルという新しい世界に」
はち切れそうな嬉しさを隠せず、巻ちゃんに向かえば、巻ちゃんの耳たぶはこっそり赤くなっていた。

「……大げさだし、古臭ェショ ライバルとか今更だし、世界とか…昨日も今日も変わんねぇ オレはリアリストなんだよ」
喜びに満ちた表情で、オレは鼻で笑う。
「…何だよ」
「いや、巻ちゃんが『恋人』の部分は否定せんのだなと思って」

オレの台詞を耳にした瞬間、巻ちゃんは見事に真っ赤になった。
ああ、素直じゃないところまでカワイイだなんて、巻ちゃんはずるい。

「オレの巻ちゃん…生まれてきてくれて、ありがとう やはり今日からは、新しい世界だよ 巻ちゃんが、オレのものだ」

唇を噛み締め、巻ちゃんが少し上目遣いでこちらを見る様子も、もちろん可愛らしい。
オレの言葉に、混乱させられているみたいだけれど、それでも愛しい恋人はこっそり呟いた。

「…じゃあ、お前は誰のものだよ」
「もちろん、巻ちゃんだ!!」

誰のものだなんて、聞かなくても解っているくせに。
言葉にさせて、安心したがっている巻ちゃんに、たまらなくなった。

もう遠慮は必要ない。
伸ばした手で、巻ちゃんの腰を掴み抱き寄せる。
背骨をなぞるように撫で上げれば、巻ちゃんは今までに聴いたことのない、艶やかな吐息をついて
「…尽八ィ…」と俺の名前を呼んだ。