【東巻】箱学モブ男の報告

合宿後、部室
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お久しぶりです皆さん、モブ男です。
はじめましての皆様は、箱根学園自転車競技部の1年、東堂先輩と巻ちゃんさんがつきあうきっかけとなった合宿で、振り回された後輩Aとでも認識ください。

僕ら新入部員はそれまで、巻ちゃんさんは『東堂先輩の彼女』と思っていただけに、相手が男手あったことと、実はつきあってもいなかったという事は衝撃でした。
結局合宿中に、全員の目の前で巻ちゃんさんを好きだと絶叫した東堂さんは、うろたえて混乱している巻ちゃんさんを見事、言いくるめで「ゲットだぜ!」しています。

総北と箱学、意図せぬ共同合宿から2週間、特にレギュラー候補でもない僕がキャプテンに呼び出され、与えられたオーダーは、
『東堂先輩の24時間を探れ』というものでした。
腕組をしたキャプテンが言うには
「オレは大丈夫だと思うのだが、荒北がなにやら心配していてな」とのこと。

…荒北お母さん、合宿が終わってもマジお母さん。

東堂先輩には、僕がクライマーであることを利用して、『クライマーの頂点たる山神の一日を、新人クライマーに教えてやってくれ』と伝えてあると言われました。
実は面倒見のよい東堂さんから、すでに1日行動を共にする許可を得ているとのこと。

……得んでいいのに……そうすれば、24時間密着・これが東堂先輩の一日だ!なんて知らずにすむのに、とは言えません。
了解しましたと、昨日の夜は消灯寸前に、布団持参で東堂先輩のお部屋へ訪れ、お泊りです。

電気が消える直前の東堂さんの言葉は、「お休み 巻ちゃん」という、もちろん僕宛でない言葉だったのは言うまでもありません。


目を閉じていても、まぶしい光が世界を白く染めています。チュンチュンと、雀の鳴く声が響き朝の訪れを告げていました。
隣でゴソゴソと動く音がして、僕は飛び起きました。
そういえば昨日は、東堂先輩の部屋に泊めていただいたんだった!!
「お、おはようございます!……何をされているんですか?」

箱学は、寮生活ということもあって通学を考えなくて済むこともあり、朝練の時間が早めに設定されています。

スマフォを開いた東堂先輩は、なにやらタップを繰り返していたのですが、こんな朝早くからメールなどを送っても、相手に見られない可能性が、
高いのではないでしょうか。
まるでニュースでも見るように、真面目な顔をした先輩を後ろからこっそり覗けば、見ていたのは地図のようです。

さすが先輩、朝からどこか遠出する道のりでも………表示されているのは、千葉、だと……?
しかもその中心には「自動位置情報確認」と記載された、ポインターが点滅しています。

「と、東堂先輩……それ、GPS機能……です…よね……?」
誰の何を確認しているのですかと、聞くまでもないのが怖い。
「うむ 今日も巻ちゃんはまだ自宅のようだな!これがもし七時半になっても動かぬようなら、改めて今日のスケジュールの確認で電話をせんといかんからな」
「つかぬことをお伺いしますが、巻ちゃんさんは、東堂先輩に毎日居場所をチェックされていることを ご存知なのでしょうか」
「フ…モブ男よ… オレと巻ちゃんの心の繋がりを、これはあえて機械化しただけというもの!許可など無粋なものはいらんよ!」

――あ、これ許可とってないですね。

「もし巻ちゃんさんの居場所を、チェックして …東堂さんの知らない住所にいたらどうするんですか?」
何気なく尋ねた質問は、地雷でした。
「巻ちゃんがオレの許可なく知らぬ場所?ありえんな! もしそんなことがあったとすれば、それは巻ちゃんが変質者に監禁されている危険性が……
…そういえばモブ男…お前も巻ちゃんを……」

うぉぉぉぉぉっ!!!忘れてた!!!あの告白劇の後、ドピンクラブラブオーラ全開の先輩と巻ちゃんだったので、忘れてた!!
僕は東堂先輩に、「巻島先輩っていいかも」って相談したことになっていたんだった!!!

まだ寝起きまもなくで、カチューシャをしていない先輩は、前髪が乱れ顔にかかっている分、美形の冷たい雰囲気が増しています。

ヤダ、怖い。

泣きたくなりそうな気持ちを奮い立たせながら
「あ、憧れていましたけれど、そんな巻ちゃんさんが先輩を選んだんですから 僕にはたちうちできません!キッパリ諦めました!!
東堂さんを選ぶって、巻ちゃんさん見る目ありますよね!」
と必死で叫ぶと、先輩はいつもの快活な様子に戻りました。

「そうか、そうだろう!オレと巻ちゃんの絆には誰も入り込めんよ! …『あ、おはよー巻ちゃん! さわやかな天気だな!』」

良かった!!!僕の誤解溶けた!!!これだけでも、今回のオーダーを引き受けた甲斐がありました。
時計を見れば、朝の六時。
朝一の電話をかける東堂先輩は、もうこちらを見ていません。

あれ?先ほど七時半過ぎて動かないなら電話とか、言ってましたよね、…この電話は定期連絡とかで、東堂先輩にとっては『電話』に数えられていないのでしょうか。

………それはさておき、勝手にGPS問題は解決していないです…よね?
これは…一応キャプテンに、報告しておいた方がいい点かもしれないので、レポートに記入をしておきます。

東堂先輩は、待ち受けの照れくさそうに微笑む、巻島さんの画像にキスをして、スマフォを戻しました。
――なんかその写真、隠し撮りっぽい角度なんですが……、お二人は恋人同士なのですから、僕の勘違いですね、そうに決まっています!

朝食の時間、食べる直前に東堂先輩は、自分のメニューを早速巻ちゃんさんに写メしています。
今日のメニューはご飯、なめこの味噌汁、大根おろしつきの焼き鮭とほうれん草のおひたし、だし巻卵に緑茶の和食メニュー。
箸を割る僕の横で、
『もしもーしオレ東堂! 巻ちゃん今から朝食なんだが…』の声が響きます。

えーっと今、写メ送ったばかりですよね!?…たとえ恋人でも毎朝の食事まで報告されたら、ウザいよなあ……。
一応これも、報告レポートに入れておいた方がいいのでしょうか。

授業開始から終わりまでは、さすがに学年が違うのでチェックができません。
しかし僕の授業が早めに終わり、休み時間に入る前に移動中の廊下で、この声は響きました。

(あ、ここは東堂先輩の教室だ)

『巻ちゃん?珍しいな!巻ちゃんから電話くれるとは』
「え」
思わず脚を止めて振り返ったのは、まだチャイムが鳴っていないからです。

すかさず「東堂!お前また巻ちゃんか!!授業中は携帯を切っておけっそして着信あっても出るな!!」
……先生、お疲れ様です、そしてまったく動じないクラスメイトの先輩方、訓練されすぎです。
これも、報告しなくてはいけませんね。

箱学の昼食はお弁当制で、購買でのパンやおにぎり購入組や、食堂での食券組に別れます。
自転車競技部は、全国王者の名前に惹かれ入部する者が大半で、ほぼ部活に専念するために寮生活なので、がっつり量を食べられる食堂で
顔を合わせますが、東堂先輩の周囲には誰もいません。

あの人好きする人が何故…?と入部しばらくは思いましたが、今では暗黙の了解だったと理解しました。

『巻ちゃん?今日のお昼は食べたかい オレは今からだ!パスタはいいぞぉっ』
これ以上はない幸せ顔を見ると、邪魔をしちゃいけないという気持ち半分、リア充滅せよ半分の感情がうずまくので、近寄りたくないのでしょう。
解ります。

もうこれは当たり前の日常ですので、レポートに記入する必要ありませんね。
「あ、もちろんいいといっても、巻ちゃん以上にイイものはないがね!!」
スマフォの向こうから『大声で誤解されそうな台詞 叫ぶなっショォォォ!』という声が響きました…お疲れ様です。
ひとしきり怒鳴られた後、スマフォをたたみ東堂先輩は、箸を取りました。

「懸命に叫ぶ巻ちゃんも堪らんな… 知っているかモブ男 引いている時の巻ちゃんの表情は、怯えたようで…嗜虐欲をそそりかねん…」

――知りたくありませんので、うっとりした顔で言うの、やめて。

食事が終わった東堂先輩に、女性陣が調理実習の差し入れと称した、お菓子を抱えてきています。
謝辞を述べる爽やかぶりが、今の台詞を聞いた後だと怖い。
僕にもと、おすそ分けを頂いたスコーンは、普通に美味しかったです。

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部活時間
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さて授業は終わり、部活時間です。

先日までは、東堂先輩が練習前に電話をしている姿を、彼女に連絡をしているのかと勘違いしているものは多かったのですが、今では相手を全員が承知しています。
…まあ、彼女ではないにしろ、現・恋人である訳ですが。

ところで東堂先輩は、公式によると巻ちゃんさんに電話をしているのは、週3日程度なのだとか。
『うっそだー』と内心で思っても、さすがにストレートに言えるのは、真波クラスの心臓を持っていなければ不可能です。
よくよく聞いていみると、実は巻ちゃんさんが「一日おきでないと電話にでてやんねえ」と言ってきたので、そうなったそうで、…掛けられる日には
その分連絡しまくっているようです。
……巻ちゃんさんも、いっそ毎日でもいいから、一日一回にしておけばよかったと、今頃後悔されているのではないでしょうか…。

練習中の東堂さんは、普通にイケメンです。喋らなければ、贔屓目なしに端整な顔立ちをされています。
汗をかきながら、ローラーを廻している姿だけを見れば、険しい眉の下の双眸はまっすぐ前をみていて凛々しく、女性が騒ぐのも納得です。

この人黙っていれば、男前度八割増しですので、巻ちゃんさんに接するときもそうすればいいのに、と勿体無くてなりません。
でも合宿中、総北を丸め込……説得させたのはこの口上あってこそなのですから、無口だけがいいとも言い切れないのかもしれませんね。

さて先輩にスポドリの差し入れ……あれ?いない

どこにいったのかと探してみれば、わずかな休憩時間なのに、ロッカールームでメール作成中でした。
すげぇ…一秒間に何文字打ってるんだこの人……。流れる指先は、まるで指の運動のように滞りなく、文章を綴っています。
大変失礼だとは存じていますが、本日はキャプテンのオーダー持ちという使命があります。
こっそり後ろから、そのメールを拝見させていただきました。

【巻ちゃん 元気かい?
おっと1時間前に話したばっかりだたね すまんな!
今度のレースはもう申し込んだかな だがその前の週に、またどこかで待ち合わせて二人でクライムをするというのはどうだろう

ただし巻ちゃん気をつけてくれ
この前のクライム中も暑いといって、前ファスナーを全開にしただろう
あれはいかんよ!おかげでおれはピンクの*首[モブ倫による伏字入りました]が横からチラチラと見え、集中力を削がれてしまった
巻ちゃんの白い肌は、汗で濡れ……(以下略)】

――エロメールやないかいっ!!

……あれ………でも、お二人はすでに恋人同士……このメールは普通……なのでしょうか……。

しかし普通に恋人にピンクの乳*とか送るの、一歩間違ったらセクハラですよね。

えるしってるか、ちょうどこんげつからどうせいあいてもせくはらになるんだぜ
…今朝見たニュースが、脳内をよぎりました。あのメールを証拠に訴えられたら、一発アウトなのではないでしょうか…

万が一を考えて、これもレポートしておきましょう。

あ、電話がかかってきた。ワンコールもしないうちに、東堂先輩が画面をスライドさせます。

「巻ちゃん!?めずら…」
『犯罪メールかよ!!!死刑っショ!!!!』
「照れているのかね 可愛いな巻ちゃん!」
『オレの話を聞けェェェェェ!!』
スピーカーになってないのに、はっきりこちらにまで聞き取れる巻ちゃんさんの声。

…ですよねー… レポートにはこう記入しておきます。

*本日朝から十三通目の東堂さんの作成されたメールが、倫理規定にヤバそうなものでした。これは多少の制限が必要かもしれません。
 ちなみに巻ちゃんさんからの返信は、現在二通です。さすがに少々不憫に思いましたが、届いた瞬間の先輩の輝いた顔は、充分満足しているようでした。

怒鳴りつかれたらしい巻ちゃんさんからの、電話は切れました。
「ム……巻ちゃんは今、街中を走っているのか…巻ちゃんは平地が苦手だからな、…頑張れ」
画面を眺め微笑む東堂さんの眼差しは、すごく優し………って、まだGPS機能ですか!
ホントそれはギリギリです!!
「巻ちゃん普段こんなところ訪れていないだろう ひょっとして迷っているのか!?よしオレが迎えに…」

やめて。
とりあえずジャージを引っ張って、荒北先輩の前まで無理やり連れて行きます、オカン荒北さん、この人を怒ってください。
僕には無理です。

…さて、残り二時間のトレーニングに励みましょう。

本日の練習終了、ふらふらになりながらロッカールームにたどり着くと、
【今日の練習が終わったところだぞ 巻ちゃん…】東堂先輩は、十四通目のメールの最中でした。
巻ちゃんさん…本当によく受信拒否しないなあ……。

「先輩、夕飯時間迫ってます 早く食堂へ移動しないと」
「そうか、すまんね これを打ち終わったら行こう」
…液晶画面ぎっしり、上から下まで埋まってる文字ってなんか怖い。

夕飯前にも、また電話をしていました。
これに付き合ってたのですから、巻ちゃんさんがあの合宿で「オレが巻ちゃんに抱いてた思いは、友情じゃなかった 愛だった」と言いくるめられたのも、
仕方がないかもしれません。

携帯を閉じた東堂さんが、やるせない吐息を漏らしました。
「オレが魔法を使えたら…… 今すぐ巻ちゃんのところに行くのに」

やはり離れているのは、せつない気持ちになるものですね…としんみりしかけた僕は、次の台詞でそんな感情ふっとびました。
「いや…違うな 魔法を使えたら保存用巻ちゃんと観賞用巻ちゃんと、いつでもオレと走ってくれる巻ちゃんと…オレにかしづいていくれる出会った頃の巻ちゃん
…箱学生徒の巻ちゃんも増やして…一人ぐらい女性版の巻ちゃんがいても……オレに従順な巻ちゃん……」

…聞かなかった、僕はなにも聞かなかった。なんか段々不穏な巻ちゃんさんが、増えているのは聞かなかった。
聞いていないので、これはレポートに記されません。

「東堂先輩、今日は色々とありがとうございました!」

キャプテンへの報告は、夕飯後と決まっていたので、今日の行動はこれで終了です。
「そうか 何か参考になったかね」
………参考………にしちゃいけないものは、色々見た気がするのですが……それでも、
「東堂先輩の走りはすばらしいと思います!」
「そうか そうか…頑張れよモブ男 王者箱学の看板を常に忘れるな」
「はい!」
巻ちゃんさんが絡まなければ、東堂さんもすばらしい先輩の一人です、ええ本当に。…本っ当に…。


夕飯を食べ終わった僕は、レポートをまとめて福富先輩の部屋を訪れました。
他の最高学年レギュラー陣から冷静なジャッジを下した方がいいと、新開さんと荒北さんもいらっしゃいました。

「先輩、これが東堂さんの行動です」
偏見のない立場でまとめたつもりですが…、これで東堂先輩を規制することになったら心苦しいなと、コピー二部を含め渡します。

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東堂先輩の一日レポート

起床してすぐGPSで、巻島さんの位置情報と移動情報履歴確認。
学校から自宅以外の寄り道をしていたら、速攻電話をする用意をしていましたが、本日は無事。
※注・もちろん巻ちゃんさんは、GPSで追い駆けられていると、ご存知ありません

朝食前に巻島さんに写メと電話。
確認をしたところ、東堂先輩は、一日おきなら電話をしていいと言われているらしく、朝イチに挨拶の電話。

移動教室で、東堂先輩の教室前を通過したところ、チャイムがなる前に巻島さんから着信あり。
授業中にもかかわらず、東堂先輩は大声でワンコールでお返事。先生が「また巻ちゃんか!」と叫ぶ。
その後なにやら俯いていたので、おそらくメールを打っていたようです。

昼食:食堂から写メと電話。なにやら巻島さんに怒鳴られていました。大半は聞き取れず。

練習休憩前、休憩後、巻島さんにメール。
そのうちの一通は、いたずら電話ならぬいたずらメールのような内容で、一部倫理的に妖しい内容。
白い肌がどうとか、ピンクの[モブ倫]がどうとか、他者に見られたら危ない文面。
巻島さんから『死刑っショ!!』の着信アリ。

GPSで巻島さんの位置、再度確認。
部活終了後にまたしても、GPSの追跡機能を見て、いつもと巻ちゃんの動きが違う、千葉まで行くと東堂先輩が言い出したので、荒北先輩にお任せしました。

一度寮の部屋に戻り、またしても巻島さんにメール。
液晶画面ぎっしり、上から下まで文字で埋まっていました。
何か巻島さんに関するギリギリな独り言を言っていましたが、僕は聞いていません。

ここでまた、巻島さんに電話。どうやら出なかったらしく、8分おきに画面を凝視しながら数回。
何回目かで、返電あり。
東堂先輩は、たまたまスピーカーを押してしまったらしく、聞こえてきたのは
「あ…悪ィ東堂 ミーティング中で出れなかったショ」
「心配したぞ 巻ちゃん!!オレはいても立ってもいられず、今から千葉へ行こうかと!」
「そう思ってそうだから、悪ィって謝ったっショ」
「オレは…オレは巻ちゃんを思うと…!」
「わかったわかった」 

…多分、巻島さんは悪くないのではないでしょうか。

まとめ 起床時から夜までに送ったメール、十八通。電話した回数、十八回。
そのうち犯罪に触れそうだった内容、数回。(猥褻的な意味やら法律的規制の意味で)

以上です。
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僕の差し出したレポートを熟読している、荒北先輩がハッと短く吐き捨てました。
…なにやら呆れているようですが、まあ当然ですよね。
後輩だから手が出せなかったとはいえ、途中で報告し、多少の歯止めが必要だったでしょうか。

少し身を竦ませた僕に聞こえたのは
「なんだヨ 別に付き合う前と変わってねぇじゃねーか」
「……え」
「そうだな、尽八が裕介くんに迷惑をかけてはと心配だったが大丈夫だな」
「えぇ!?」
「ああ、モブ男 手間をかけたなありがとう よし問題無しのようだ!」
「えぇぇぇぇぇぇっ!?」

レポートを、バサリと机に置いた先輩がたの表情は、至極まじめです。

「も、問題なし…ですか…?」
「ねぇヨ」
「これで…大丈夫なんですか?」
「尽八が裕介くんへの思いを自覚する前は、もっとヤバかったよ 裕介くんのメールが二時間ないと、寮を飛び出そうとしていたし」
「巻チャンがレースで他のヤツと笑って話してっと、呪いかけそうな顔して睨みつけてたのに認めようとしねェしな」
「ふざけて金城にしがみついた巻島を見て、東堂が無表情になっていた時は……驚いた…」

キャプテンが驚くほどの顔、想像したくありません…。

近況報告、以上です。

隣の隣の部屋から、ガラッと窓が開く音がして
「愛してるぞ巻ちゃぁぁぁぁんっ!!」の声が響きました。

「ッセ!!ボケナス近所迷惑だ!!!」
まけじと窓に寄って、叫び返す荒北先輩の声は、大丈夫なんでしょうか。まあ近所といっても、ここら周囲は山だらけなんですが。

今日も箱学は、通常運転です。