好きだから

女タラシでお調子者で、ヘラヘラしてて ちょっと成績が悪くて
いい加減なところだってたまにある。
指折りキューの悪いところを数えてみて、この望みのない恋を
諦めようとしてみたけれど、浮かんでくるのはそれを否定する
言葉ばかり。

キューの女タラシは口先だけじゃなくて、きちんと万人に向けら
れている。…ミケみたいに明るく可愛い訳じゃなく、サトみたいに
控えめで女の子らしいわけじゃない、私にだって優しいし。
好きな人には一途だし、誰かを邪険にしたり差別なんてしや
しない。

お調子者だけど空気が読めないわけじゃない。皆が揃って暗く
なりそうな時に、誰より早くそれに気付いて皆を浮上させようと
さりげなく頑張るのだって、いつもキュー。

成績はたまに平均以下だったりするけれど、それは色んな事に
興味を持ってるせいなだけで、教えてあげれば飲み込みは悪く
ないんだし、何より日頃の会話の回転の良さがそれを証明して
いるから、誰もキューをバカ呼ばわりなんてしたりしない。

面倒ごとには顔をしかめて不参加で、いい加減なようだけど、
それでも困っているのを見かけたらさりげなく手助けしようとして
くれるし、こちらの何気ない行為にも、まっさきに気付いて小さく
俺を言ってくれるのもいつもキュー。

見掛けは文句なし、銀河町伊達男コンテストなんてあったら
絶対上位に入れるだけの物を持ってるし、運動神経だって悪く
ない。口先では色々言いながら、家の手伝いだってきちんと
してるし私の妹弟達の面倒だってみてくれる。

…ダメだね、頑張って嫌いになれる理由を考えようとしてみても
次から次へと好きになる理由が溢れてきちゃう
仕方ないか、好きなんだもん。

 キューに相応しい女の子になれる自信は、ちょっとないけど
幼馴染で近くに入れるこの立場、大事に思って傍にいるから。

「イバちゃんの さりげない気配りっていいよな」
突然の夕立に走っていくキューに、差し出したタオル。
振り返って受け取ったキューの笑顔は、やっぱり普通に格好
良くて、…くやしいけれど今日も見惚れてしまった。