特別な人、特別な一言


人を好きになったなんて初めてで、しかもその相手は博愛主義で、
だれかれ問わず笑顔をふりまいているような人物だ。

戦って相手を倒して、自分の価値を確かめたり相手の存在を確かめ
たりする自分とは、正反対なのに傍にいたいと思ってしまった。

いくつも年上とは思えないぐらい、笑顔が可愛くて。
他人が何をしていてもどんな事を話していても、自分に関わってさ
えこなければ、まったくどうでもよかったのに。

健二さんが何かを話していると、何を話しているんだろうと気になる。
その合間に笑ったりすると、あの人の笑顔はどんな理由で作られて
いるんだろうと、気が気じゃない。
キングカズマとして戦っているときは、いつも以上に他人なんて
どうでもよく感じているのに、健二さんが自分の横で拳を握って
観戦してくれていると、なんとなくいいとこ見せたくて、張り切っ
てしまう。

ゲームが終わった後、すごいねと顔を輝かせてくれる笑顔は誰にも
見せたくないぐらい、年上なのに可愛くて。
ゲーム上の世界と現実なんて別物だと割り切っていたのに、OZ
でのなんてことない待ち合わせですら、3日も前からソワソワして
用もないのに、何度もログインしてしまう。

僕にとって特別なあなた。
でも誰にでも優しい健二さんにとって、誰にも人見知りしないお兄
さんにとって、僕は単なる弟のような存在にしかすぎないって気付
いているから、どうしていいかわからない。

「……やだなあ 僕にとっても佳主馬くんは特別だよ?」

僕がキングだから?年が離れている友人だから?ナツキ姉の親戚だ
から?

「そうじゃなくて…えっと ごめんね自分の気持ち伝えるのが下手
だから うまくいえないんだけど…佳主馬くんが佳主馬くんだから
…って理由じゃ駄目?」
「…駄目じゃない」
「よかった むしろ僕なんかを特別だった言ってくれる佳主馬くんの方
こそ…色々すごくて 珍しいとおもうんだけど」

モニター隅に浮かぶ、リアルタイムカメラの映像に映る眩しい笑顔
を、思わずプリントスクリーンで保存。
理由にならない理由で、こんな短い一言でこんなに元気をくれる。

ああやっぱり、この人が僕にとっての特別だ。
幸せに笑う健二さんは、今日も僕に幸せをくれる。