馬場くんと樫村くん【小話】


色々あってお互いの部屋で遊んだり泊まったりが普通になってる二人から
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(あー…めんどくせぇな)
軽くついばむようなキスを重ねても、それ以上に進むと身をこわばらせる
アリババに、カシムは吐息をついた。
逃げを打つ体を無理に引き寄せ、それ以上の行為も可能だが、絶対現世では
コイツを大切にすると誓ったカシムには、その選択肢はない。

滑らかな首筋に、乾いた唇を走らせるとアリババの緊張は更に増した。
「あの、おれ、カシムのこと 大事だし好きだけど えっと…」
しどろもどろに小さく首を振るアリババは、自分でも何を言っているのか
理解していないだろう。
だいいち、まだ経験がないアリババに、恐れがあって当然だ。

「わかった」
「え?」
「お前にはまだ早いよな しょうがねえから俺が色々リードしてやるから
アリババ、お前が好きに動いてみろ」
抱かれる側より、抱く側のほうが恐怖心が少ないだろうの提案。

ソファの端にこれみよがしに脚を広げ据わり、からかうように指先でカシムが
アリババを誘う。

「えっと…俺の…好きにしていいの?」
想定外といった風情で、小首をかしげるアリババは、正直かわいいにも
程があると叫びたくなるレベルだ。

(まあ本当なら、お前を抱く側の方が希望なんだが)
それでも「いいぜ」と答えれば、アリババはいそいそとカシムの脚の間に座り込んだ。

あっけに取られているカシムの両腕をとると、自分のそれぞれの肩に置き、
その前でその手を組ませれば、自然と抱きしめる形だ。

「…へへぇ〜」
振り返り、にこぉと微笑むアリババの笑顔はもはや武器だ、凶器だ、兵器だ。

幸い、ポーカーフェイスが得意なカシムは、表情そのままにアリババへと尋ねた。

「…これがお前のしたいことか?」
「なんかいいよね 一緒にいるって感じだろ?」


(――確かに、一緒にいるという感じだよ でもこの密着は俺の忍耐力を
試しているとしか思えねえぞ)

ああヤバい こいつとの道のり、どこまで色々我慢をしたらいいのだろう。
幸せと複雑な大人の事情的欲求にはさまれた、カシムの悩みをアリババは知らない。

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追記
「前にね これアラジンが遊びに来てDVD見るときこれやられてさー
カシムともやってみたいって思ったんだ!」

自称今カレの行動は、思っている以上にアリババに侵入しているぞ!
頑張れ樫村!!