誤解とエロと真実と
注*こんなタイトルですがエロじゃなくギャグです

ドイツの前で横たわる、ごくごく薄いベージュが混じった毛並みをした
大型犬。
これはイタリアが
「俺んち原産の犬なんだけど こいつ全然やる気なくてさ〜ドイツなら
しつけも上手いだろうから頼むよー」
と置いていったものだった。
このマレンマ・シープドッグはその名の通り、羊を管理したり護身する
賢く独立精神の高い、イタリア原産の犬だ。
…本来であれば。

だが目の前の犬はやる気がなく、ふせって上目遣いにドイツを眺める
だけで、お座りもお手もまるでやる気がない。

「だから!まず腰を上げろっ後ろ足前足を使ってこその四本足だろう
お前のその体勢では寝転がっているだけだ!」
ドイツが前足を掴み上へ持ち上げても、離すとすぐに床にへたる。
立ち上がらせようと強引に後ろ腿を引っ張り上げても、直後にまた
寝そべってしまう。

「…まったく…このやる気のなさは飼い主に似たのか…?」
根気強さに定評のあるドイツであるが、誰かを前に軍事訓練をして
いる気分になり、小さく溜息をついた。
「仕方あるまい…こうなれば 実力行使だっ!」
犬というのは、身分差社会に適応しているものである。
強引に背後から腰を抱えたドイツは、マウントポジションをとることで、
自分の方が力関係で上だと示した。

コンコンッと軽いノックの音がして、ドアノブがかちゃりと廻る。
「あのドイツさん…先月の…………」
何らかの書類を抱え、室内に進んだ日本が目にしたのはドイツが
犬の腰を掴み膝立ちになっている光景だった。
「あ、あの…………」
「なんだ日本 なにか……?ち、違うぞっ!これはっ!!」

硬直した日本の様子を、訝しげに眺めていたドイツは今の自分がどの
ように見えているかを悟った。
――折り悪く、先日イタリアが「あのね日本〜俺ドイツん家で人と犬が
色んなエッチなことしてる本見つけたんだよー」と報告していた直後
である。

「その…私は人の趣味は 色々アリだと思っているので…大丈夫
です!」
「何が大丈夫なんだっ! 違うっ!」
「いえ、気になさらないで下さいっ 私は何も見なかったことにします
ので…また改めて参ります」
言い捨てるように踵を返し、立ち去ろうとする日本の背に必死なドイツ
の叫びが追う。
「見なかったことにするなーーーっ!きちんと見てそして状況を尋ねて
くれっ!!」

体格差から容易に追いつかれた日本は、俯きながら色々想像して
いるらしく、頬の赤みは先程より増していた。
「えっと…その…わ、私は気に、しません、よ…?」
「…ハァハァ…俺が気にする とりあえず話を聞け」

尚ぐうたらの代名詞にもなれそうだった大型犬は、マウントポジション
を取られた直後、混乱したドイツによって片腕に抱えられたまま全力
疾走されるという恐怖を味わい、以降ドイツの命令には絶対服従と
なったそうである。