眩しさと憧れと


「日本はさーアメリカのどこが好きなの〜?」
日本に遊びに来ているイタリアは、今日もイタリアには存在しない
たらこパスタやら、秋のキノコ&イクラスパゲティやらを食べて
は満足しているようだ。
当初はこんなパスタ、俺の国にはないよと騒いでいたが、一度口に
してからは、日本のアレンジはすばらしいねと絶賛していた。

自分が始めて外国で「SUSHI」という名前で売られている、カニコ
を緑に染めて軍艦にしているものや、カリフォルニアロールと
呼ばれる海苔を内側に巻いた巻き寿司を見たときの感覚に似ている
だろうと、日本は微笑んだ。

「そうですね…まっすぐどこまでも自分の主張を曲げられない所
とか」
「…あれは子どもの我がままに近いときもあるけどなあ〜」
イタリアの台詞は的を射ていて、日本の微笑みに少し苦笑が混じ
った。
「その我侭を実現のために貫きとおせるのが…すごいと思うのです
よ 一昔前ならいざ知らず、現在ですとどうしても私ですと周囲の
顔色を窺ってしまいますし 我を通してまで主張するよりはすべて
を和したうえで 波風たてぬようしておこうと思ってしまいますので」

「俺は別にアメリカに反感とかないけど めんどくさい事言い出す
奴だなあとか たまに思ったりするよ〜…ご飯おいしくないし」
なにやら思い出したらしい、イタリアの主張は最後の一言に尽きる
かもしれない。
「えっと…でも今では外国の方がお寿司の第一歩として召し上がる
ことの多いカリフォルニアロールを思いついたのも、アメリカの
方のおかげですし」

「ヴェェ!?あれってアメリカが考えたんじゃなかったの?」
「考えたのはアメリカさんの国で店を出したわが国の人ですよ
実は自分も当初はアメリカの人が考えたものだろうと思っていた
とは、微塵もうかがわせぬ表情で日本は続けた。

「アメリカの方は海苔を黒い紙にしか見えなかったようで…わざわ
ざ剥がして食べられていたので海苔を内側に巻くようにしたんです
…食べれるものですと説明しても嫌がられたとかで」
「日本の巻き寿司を作るの、前見せてもらったけどあれ海苔のおか
げであの丸める道具にご飯くっつかなくなってるよね?」
「カリフォルニアロールを作るときはラップを利用してますよ
…ですから、あのお寿司はあちらの方の嗜好があってはじめて
誕生し世界へ羽ばたいていったのです…わが国の人間でしたら現地
のシェフの方にこれはそのまま食べれるものだと説明されたら恐る
恐るであっても食べてしまうでしょうから…そこで折れないで残す
自己主張…すばらしいですよね」

この場合素晴らしいのは、そこで挫折せず外国の人間にも食べられ
る寿司を開発した日本のほうじゃないだろうか。

「あー君達二人で何を食べてるんだい!」
チャイムも鳴らさず、庭の縁側から飛び込んできたアメリカに日本
とイタリアの動きがぴたりと止まった。
「あ、アメリカさん?」
「アメリカも遊びに来てたの〜?」
「突然来て驚かせてやろうと思ったのさ!ほらおみやげさ」
差し出してきたのは、蛍光オレンジやら緑のクリームが目に沁みる
ホールケーキ。

「ヴェ…確かに自己主張…すごいよね」
無言で、ひきつった微笑を浮かべる日本の応えはなかった。

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米日というより、単なる米日食べ物事情になってしまった気が…
魔改造にかけては、日本のほうが数段上なのにね
例・カレー →インド人曰く「カレーじゃないけど美味しいもの」
  ピザ   →イタリア人曰く「ピザじゃないけど美味しいもの」