オマケ


ハンバーガーだけでもどちらかというとコッテリ系の食べ物なのに
付け合わせがチキンナゲットやフライドポテトだというのでは、
流石に栄養的にないだろう。
嫌いではないらしいが、並べてるだけではスティック野菜を手に
取らないロイの為にクルトンをわざわざ作り、作り貯めしておいた
ゆで卵を潰してミモザサラダを用意するハボックは、レタスを毟り
つつそういえばとロイと出会って間もない頃を思い出した。

東部はイシュヴァールという戦場が間近であったためか、街中に
軍服を着たものが日常的にそこらに溢れていて、セントラルのよう
にファーストフードを買いに行くのにも、わざわざ私服に着替える
必要はなかった。
ちょうどその日は、テロ事件情報やら指名手配犯らしい男を酒場
で見かけたという情報やらが次々と舞い込み、マスタング組全員
が昼食を食べる余裕も無いまま15:00を迎えようとした。

最初に力尽きたのは、見掛けに添った食欲を見せるブレダだった。
「……もうダメだ……朝飯食ったの…5:00だぞ……頭が働かねぇ
……腹減った……」
低い声が呟きを終えるより前に、同調するようにフュリーの腹部
からきゅるるるると腹の虫が鳴く。

夢中になると食事がおろそかになるロイは、そこで初めて世間一般
の昼食時間から現在大いに外れていると気付いたらしい。
「幸い 今は少し落ち着いている ホークアイ中尉とブレダと
フュリー 今のうちに食堂で何か詰めておけ ファルマンとハボック
はすまんが二人が帰ってきたら交代だ」
「…こんな時間 食堂にはもうろくなメニュー残ってないっすよー」
情けない声のブレダに、なるほどと改めて時計を見直したロイは
小さく吐息をついた。
「仕方が無い では大変だろうが30分で帰ってこられる範囲で何か
食べて来い」
「あのー大佐… それでしたら俺が何か買ってきましょうか?」

咥えていた煙草の先を揺らしたハボックは、そろそろ書類業務から
解放されたいと顔に描いていて、ロイが苦笑した。
「そうだな……この近くで人数分の食事が揃えられるか?」
ブラハも加えたら、かなりの食料が必要になるぞと指差し数える
ロイに、ハボックは「いざとなりゃ何でも食えますよ」と軽く肩を竦め
答えた。
「大佐と中尉には…まあサンドイッチでも買ってくるとして…俺らは
ハンバーガーとポテトのセット辺りでいいか?」
「なにっ!?」
振り返った方向とは逆…つまりは上司側で聞えてきた抗議の叫び
に、ハボックは怪訝な眼差しを向ける。

「…サンドイッチもダメっスか?…じゃあ…」
「いや違う!…私もそれが……あ、いやそうじゃなくて…ただで
さえ忙しいのに わざわざ他の店に行くこともないだろう!」
「でも大佐 普段高い飯食ってるんスからジャンクフードとかダメ
なんじゃ?」
「駄目じゃないっ!むしろ……あ、いやその…たまにはそういう食事
も悪くないしなっ!うんそうだ 今日はこの時間まで昼食が遅れた
詫びに全員の食事代ぐらい出してやるぞ」
「太っ腹っスねぇ…」
ちらりと横目でホークアイを見たハボックは、彼女が軽く頷くのを
確認した後、ロイから1万センズを受け取った。
「……大佐 他の金はないっスかね?」
「うん?足りないのか」
「違いますよ 多すぎです ランチセットだと安く買えるからあんまり
小額の買い物で万札出すの歓迎されないんで」
「……全員分でも余るのか!…すごいな 儲けは出るのか?」
心の底から感心しきった表情で、目を輝かせているロイはハボック
の目にどこか可愛く映り、ハボックの困惑を招いた。

…あの時はどんだけ世間知らずだこの人と思ったんだけど。
多分 自分じゃ店に入ることができないし かといってまだ俺らとも
それほど打ち解けてはなかったから、ハンバーガー買って来いとは
言い出せず、久しぶりに食べれると浮かれてたんだろうなあ。
そういや大佐を童顔だとか幼くすら見えるだとか(殴られるだろうから
伝えた事は無いけど)思った事はあっても、可愛いと初めて思った
のはあの時だったかも。

変なきっかけだと思いつつ、ファーストフードで上機嫌になるという
上司自体が変なのだからこれはこれでいいかと、ハボックは思い出
し笑いをしコーヒーを入れる準備を進めた。

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多分周囲はみんな ロイはファーストフードなんて食べないと思い込んでいて
士官学校ヒューズが買ってきてくれる以来食べれなかったロイは 数年ぶりの
ハンバーガーとポテトだった設定で(笑)