オマケ


シーツに全身潜り込んで、丸くなってる大佐を宥めようと頭の辺りを
撫でたり背中を軽くたたいたりしていると、布下の緊張が少し溶けてきた
のが分かった。
口下手な俺がへたなフォローを言葉にすれば、この温かい時間を壊しかね
ないだろうと、無言のままあやす動作を続けているとぽそりとくぐもった声
が呟かれた。
「…だれ、に聞いた お前を騎士と私が呼んだなどと…」
「誰って…アンタ自身にっスよ」
「私がっ!? いつお前に そ、そそそんな恥ずかしい事を言った!いや
言った…けど…あれは絶対周囲に誰もいなかった独り言だし……」
勢いよく起き上がった大佐は、顔を出したがまだシーツをぎゅっと握って
いつでも潜れる体勢で座っている。
「……?何のことかわかりませんが 俺にチェスを教えてくれた時大佐が
言ったんスよ この駒は俺みたいだって…もしかして酔っ払ってて覚えて
ないんスか」

「……覚えてない」
「チェスの中でもこのナイトだけは特別で 普通は前に駒があれば進めない
のに騎士だけは敵も味方も越えて動いてく…俺みたいだって」
「い…言った…か?」
「ええ 『敵ばかりか味方まで吹っ切って特攻というのがイイだろう?』
さしずめ私がキングなら お前がナイトだなってニッコニコしながら……
結局ルールや動きとかってのが面倒で ゲーム自体は諦めたんスけど」
「それはあくまでもあれだ 駒の特性がお前の行動に似てるって……深い
意味は…ええいっ にやつくなっ!」

――聞いた当時は素直に嬉しかったし、誇らしかっただけなんだけど大佐の
こんな可愛い反応見せられちゃニヤつくななんて方が無理です、サー。
俺の内心の応えが聞こえたかのように、「にやにやするなっ」と飛んでくる
ふかふか枕。
そんな行動までおかしくって、つい声を立てて笑ったら大佐はますます顔を
紅くし睨み付けてくる。

「お前のにやにやがムカついたからへこませてやるっ! あのホムンクルス
の女だがなっ」
「…ソラリスのことっスか?」
「そうだっ!アレは貴様が気を失ってるときに最期を迎えたが そのいまわ
の一言は私に対する『好きよ』だったぞ!」
「…へぇ そうっスか」
「何 平然としているんだっムカつくだろうがっ!」
「いやまあ…気にはなりますが… 大佐のどこが気に入ったとかは?」
「…私の迷いのない目がどうのとか言ってたな」
「ああ、ソラリス見る目は確かっスね 俺も大佐の目が一番好きですし」
「違うっ!なに誉めてるんだ貴様はっ…!!あの女はお前が色仕掛けに
ホイホイ乗ってくるタワケだと思っていたんだぞ見る目なんてまったくない
に等しいだろうがっ…」
「ハァ まあそうともいえますね」
「……もういいっ 知らん!」

そういってまたシーツ蓑虫状態に戻ってしまった大佐をかかえ、膝上でその
ままぎゅっと抱き締めると布越しに小さく「苦しい…馬鹿力を私に向けるな
猪突猛進騎士め」呟かれ、俺はまた声をたてて笑ってしまった。

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突発で作りたくなってしまったネタを浄化できて、やっと滾り沈静ww
これを漫画で描きたいなとか思ってたのですが、本にしたら絶対一週間後にはやんなきゃよかった
と身の程知らずぶりに落ち込んでそうですので、すぐにアップできるサイトやっててよかった!すっきり
ちなみにこれを漫画にした場合、ロイがほとんどシーツにくるまってるので、皺の立体感とかのぞけば
ものすごく楽だろうなあと思ったり(笑)