「…なあ あの絃カマって料理はできんの?」
仕事にデータの分析が必要だと、マクベスの元を訪れてきた
銀次と蛮は、マクベスが某企業のスパコンにダイブ中はする事も
なく、雑談に興じていた

「花月ハンをその呼び方すんのやめてーな 今おらへんけど
帰ってきたら即効で針と拳圧が飛んでくるで…でなんで料理?」
「いやパラレルでお嬢様育ちしてる絃巻きを見かけたって話を
銀次から聞いて、…女ならまあ良妻賢母っぽい躾されてそうだ
けど ここでは見かけはともかく野郎だろ?」
「ん〜俺もカヅっちゃんの料理してるとこ見たことないやー」

マクベスの後ろからモニターを覗き込んでは解らないと首を
かしげ、ごろごろ横に転がっていた銀次がクッションを抱え
ながら顔を上げた。
「…できねえって事か?」
「そうじゃなくて カヅっちゃんがエプロンつけてにこっと
すると周囲が一斉に『とんでもないっ!自分がやります!!
あ、ああ、あの、でもその姿のままいてくださると励みが出ます
お願いします!!』って動き始めるんだよねー」

「…なんや想像つくなぁ 十兵衛はんなんか亭主関白っぽい性格
やけど 花月はんに料理して欲しいとか思わんかったんかな」
「…十兵衛は知らないけど俊樹は『エプロンを着けた花月はとて
つもなくいいっ!だがそれで指先をケガしたらどうするんだっ
花月がエプロンを着ける行為だけで充分じゃないかっそれ以上
のことさせるんなら俺がやる!』って力説してたよ…十兵衛がその
時反論しなかったのは脱力してたのか同意だったからか…どっち
だろうね」

少し休憩とばかり、ゴーグルを額に上げたマクベスは伸びを
しながら銀次の方へと向いた。
「でも花月君なら具材を絃で切断とか綺麗にやりそうですけど」
「周りが色々言いながら料理をさせねぇようにしてるって事は
味付けが下手だとか火加減が無茶苦茶だとかじゃねぇの」
「そんな花月はんも どじっ子萌え〜とかいって新しい追っかけ
ゲットできそうやけどな」

「あら花月さんはお料理できますよ?」
にこっと笑って、マクベスの横にお茶を置いた朔羅が銀次へと
向き直った。
「できるの? でも俺ヴォルツの頃とかに全然見たことないよ」
「できるんですけど…周囲がうるさいんですよ」
「?」
首を傾げ疑問符を表情に並べた銀次に、朔羅が苦笑して続けた。
「卵を割ると十兵衛が後ろで『すばらしい…花月は卵の割り方
まで美しいな』それを箸で溶いていると今度は俊樹が『さすが
花月だ!流れる一連の動作…見惚れるばかりだっ!』味付けを
していると祭蔵が……」
「…うん、なんとなく解った」
「せやな…料理が無事できても…今度はそれの奪い合いや感想で
…鬱陶しいやろうなあ…」
「ええ それで結局花月さんは私と二人きりの時しか料理をしな
くなったんです あ、このことは十兵衛と俊樹の二人には内緒に
してくださいね たまに花月さんとお菓子を作ってたりしてるの
ですけど 後ろに二人がいたら邪魔ですから」

実の姉にまで『鬱陶しい』と言われた十兵衛と俊樹は、花月が
料理をすること自体を飽きてしまったと思っているらしいと朔羅は
にっこり笑ってそう告げた。

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突発で短文 花月は料理はできるのか…もんのすごい一流料亭
並みの和食を作れるか、もんのすごい見た目はまともなのに独特
な味付け(不味いともいう)のどっちか両極端そう