『a sequel』
「じゃん?」 一緒に寝ていたはずのハボックの姿がないことを確認したマスタングは、枕を抱きしめたままベッドから降りた。 「じゃん、居ない?」 パタパタとスリッパの音を発てて家の中を歩き回った。 「じゃん?」 「大佐!?」 ハボックは慌てて駆け寄り、マスタングの体を抱きしめる。 「熱があるのに勝手に出歩かないでください」 「‥じゃん、居ない。ろい寂しい」 がばっと勢いつけてマスタングの体を一旦引き離すと、ハボックは 「大佐が素直だ。つか子供のときと同じ口調」 そっと手のひらを額に当てると、先ほどより熱が上がっていた。 「疲労による発熱ってけっこう恐ろしいな」 などと見当違いなことを呟きながらハボックはマスタングを引き寄せると、 「じゃんと一緒、離れるのいや」 ぎゅっとハボックのシャツ裾を握り締めて、額を肩に寄せた。 「わかりました。一緒なんですね?」 「うん!」 うわー、これ。素のときにやって欲しいつったって本人絶対やってくれないから貴重だよな。 ぎゅっと自然に手を握りなおしてリビングに連れて行くと、 「大佐」 「大佐違う、ろい」 きゅっと枕を抱きしめて上目遣いに見てくるマスタングをハボックは凝視する。 「マジ‥持つのか俺、」 軽い眩暈を覚えながらもハボックは、マスタングに呼びかけ直す。 「ロイ、ここで寝ような。一緒に居るから」 「うん。じゃんと一緒、起きてる」 枕を抱きしめたままマスタングは、ソファに腰掛けた。 「寝るまで一緒に居るから」 「だめ、さっき居なくなった」 頬を膨らませてマスタングは反論する。 「‥‥じゃ、こうしよう」 そう言ってハボックは、リビングにおいてあるブランケットを取ってきてソファに足を投げ出すように座り、マスタングを引き寄せる。 「これなら一緒に居られるよな」 「うん」 頷いて枕をテーブルに置いて、マスタングはハボックの胸の中にすっぽりと納まった。それを見てハボックは優しい笑みを浮かべてブランケットを彼の上に掛けたのであった。 数分も経たずに寝付いたマスタングを眺めながらハボックは―――― 熱バンザイ? マジ何これって、大佐可愛すぎる。普段なら絶対自分から名前で呼べなんて請求してこないのに請求してきて一緒をねだってくるなんてさ。‥‥ちょっとばかし意趣返ししていいよな。熱下がってから 「とりあえず動けないから、俺も一緒に昼寝するか」 見える額に口付けてからからハボックはマスタングを抱きしめて眠ったのであった。 「う‥ん?」 「あ、ロイ起きたっすか」 「ハボック?」 「なんだもう元に戻っちゃったんスか」 「もと――に!?」 現在の体勢に気づいたマスタングは、慌てて起き上がったものだからそのままソファから落ちそうになった。 「っと危ないなぁロイ」 「ハハハハハボック」 「はい、どもらないでロイ。ロイが呼んでってねだったんですよ?」 「俺が?」 「そう、俺が居ないから寂しいって言って一緒に居てっていってきたんですよ」 「〜〜〜〜〜〜〜〜ハボック、忘れてくれ」 ブランケットを被り、マスタングはくぐもった声をハボックに届けた。 「いやですよ、あんな素直で可愛いロイの姿なんて滅多に見られませんから、夜以外で」 「それが一言余計だ!」 がばっとブランケットを捲りあげるとマスタングは真っ赤にした表情のまま反論したのであった。 「それじゃ、もっと俺に甘えてください。もっともっと甘やかしてあげますから」 「――善処、しよう。だから暫くほっといてくれ」 「メシ・作りますからそれまでに落ち着いてくださいね」 「お前はすでに俺を甘やかしすぎだ」 そのマスタングの言葉を背後に聞いてハボックはキッチンに行ったのであった。 ***************************** 想い、重ねて様からリクいいよのお言葉頂いたのでならば…!と「大人ロイのまま つい子どもロイの 口調でうっかりハボに甘えてしまったロイとそれをネタにロイをからかいまくるハボック」をお願いしちゃいました! (これ以前に子ロイネタを書かれていてぽやんとしたロイが可愛かったのですよ…!) ぽやんな大人ロイも可愛いですが…それをからかうハボがたまりませんっ!ありがとうございました! |