最終回余話 3


イシュヴァール政策にマイルズを借りたことで、北方に頭脳派がいなくなり
困るとのオリヴィエの申し出はもっともで、ファルマンはいまだブリッグズ
に居る。
幸い本人もその地が嫌ではないようなので、イシュヴァールが落ち着きマイ
ルズが帰ったら中央に呼び寄せるとの盟約はついているが、現時点での記憶
役が欲しいと抜擢されたのはシェスカだった。

遠慮がちにノックし目線を逸らし、来客だと伝えるのはロイをヒューズの件
で不人情と罵った記憶があるからだろう。
ロイはそうされる行動をした自覚があるので、気にしなくて言いと何度も
告げているのだが…罪悪感はそう簡単に拭えぬらしく、彼女はいつも控えめ
だった。

「よぉーっす!」
「お久しぶりです」
シェスカが頭を下げて退室すると同時、聞き覚えのある声が挨拶をした。

「鋼…ではもうなかったな エドワード」

「ああ今日付けで正式に国家錬金術師返上 手続きついでに挨拶だよ」
「兄さんっ それよりまずお礼でしょう」
立ち上がって二人を迎えるロイに、アルフォンスが深々と色々お世話になり
ましたと頭を下げた。
見た目は変わっても、何もかわらぬ二人のやり取りに和みロイが微笑む。
「ほぇっ…!」
「…何を間抜けな声を出しているんだ」
皮肉なく楽しそうに微笑むロイを見たエドワードは、少し目を見開いて視線
を逸らした。
わずかだが、頬が紅い。
「いや…その…大佐…じゃなくて 准将縮んだ?」
「…何を馬鹿なことを言っている」
「いや だって目線がさ…」
「准将じゃなくて 大将が成長したんスよ」
やり取りを見守っていたハボックの言葉に、エドが合点がいったとコブシで
掌を打った。

「そっかー俺らまだまだ成長期だもんな! おっやぁ?マスタング准将マメ
だチビだ馬鹿にしていた俺と…ほとんど目線変わりませんねえ」
「まだ私の方が指一節分は高い」
「いやあでも 俺はまだまだ成長期だしい?」

(…大人げねぇ…)
自分の約半分の年齢の青年に、本気で言い返す上司に苦笑するハボックが
横を見れば、同じように自分の兄に感じているらしいアルと、ちょうど目が
合う。

「まあ…あれはあれで…仲 いいんだよな」
「だと思いますよ 兄さんがああいう態度に出るのって…ウィンリィとか
好きなのに素直に出れない相手ばかりですから」
にっこり笑う弟の方が、くだらぬ言い争いをまだ行っている二人より、よほ
ど大人だ。
平和なのはいいことだと思いつつ、他人にこの場面を晒す訳にはいかないな
と判断したハボックは、とりあえず長身のメリットを生かし二人の頭を
いーこいーこと撫で、逆上させることで大人の分別を取り戻して貰おうと
両掌を二人の頭上へと伸ばした。

「…俺だってあともう少しすれば 少尉ぐらい伸びるんだからな」
ぱしっと手を軽くはじくエドに、ロイも続いた。
「…背が高いからっていばるなよ」
「はいはい 伸びる伸びる えらくないえらくない」
「「むかつく」」

ユニゾンした二人の声に、吹き出したアルフォンスを見てようやく現状を
鑑みた二人は、互いの顔を見合わせこほんと咳払いをしてソファへと座った。


エドとロイが同じぐらいの身長になった時のやり取りって、きっと可愛いですよねで意見一致しました
ので妄想補完してみました