捻くれ者のスキ



扱いにくいだとか、ヒネクレ者だとか裏がありすぎて笑顔が胡散臭い
だなどと評されている焔の錬金術師殿だけれど、一つ踏み込んで
その懐に入ってしまえば、ものすごくからかいやすく解りやすい人物
だった。

「ねえ大佐 俺の欠点ってどんなトコだと思います?野郎の友人には
結構性格褒められるんスけど 女の子にはどこがウケが悪いんでしょ
うかね」
たまたま皆出払っていて、監視役がいないとなれば急ぎでない書類は
できるだけ後回しにしたいという傾向が一致している俺と大佐は、
コーヒーを啜りなんとなく外を眺めて茶飲み話に興じる。

「女性は繊細なものだぞ お前みたいに図々しくて人の心考えない奴
なんか敬遠されて当然だ」
 フフンと鼻先で笑った顔は、なんだか指南してやってるぞと得意げ
で小憎らしいけどかわいいくて、こちらも負けじと返す。

「そうですか じゃあ図々しくアンタのココロ考えないように色々本音
暴かせてもらいますよ アンタは俺のそんな所が好きですよね」
見事にコーヒーを噴き出した大佐は、むせながら必死で否定してきて
るのに、その頬は紅い。

「だ、大体お前は煙草臭いしっ!」
「…抱き締められてるときの俺の匂いで 大佐は好きでしょ?」
ますます頬を紅潮させて、口をパクパクさせるなんて…ホント今まで
付きあってきたどの女の子より、感情ストレートだよ国家錬金術師で
エリート上官殿。

「お前が甘やかすからっ!私がだらしなく見えるしっ」
「ブッ…笑わせないで下さい それ逆切れって世間では呼びます」
「…お前といると私が私でしかいられない 傍にいると居心地好くて
色々考えたくなくなって…何もできなくなってしまう」

ぽつりと返された言葉は、本人それはまだ憎まれ口のつもりなの
だろうか。俺に取っちゃ、最上級の殺し文句にしか聞こえない。

「それっていつも片意地張って頑張ってるアンタが俺と居ると 素で
過ごせるって意味っスよね…嬉しいです」
これ以上可愛い言葉を吐かれちゃ、二人きりという状況で理性限界。
自重するべく、まだ半分ほど入ったマグカップを机に置いて俺は空い
た両腕で大佐を抱き締め、その身を腕の中へと納めた。

「俺は大佐といると俺以上の存在になれるんです アンタと釣合える
だけの大きな人間になりたい アンタの役に立てる人間になりたい
…大佐の盾になれるぐらい強い男になりたいって」
「お前はお前のままでいい 私が気に入ったのはジャン・ハボック…
今のお前なんだから」
 
ああもう、最後の最後まで心を射抜いてくれる台詞をありがとう。
でも、それはやっぱり俺が大佐に並べる男になりたいと思わせてくれ
る原動力になってしまう。
大佐と出会えて、大佐の傍に居られて、大佐と時を同じく過ごせる
幸せ。

「…で 最初の話に戻りますけど俺の欠点について話してたんじゃ
なかったでしたっけ」

 素直じゃないから「好きって言って」と頼んでも絶対口にしてくれ
ないのに「欠点を言って」といえば斜め上に、かわいく答えてくれる
アンタはやっぱりすごく解りやすい。
 俺の台詞に『あれ?』といった顔になってる大佐が、どうしようも
なくツボで俺は笑いを堪えるのが大変だったというのは、ここだけの
秘密にしておこう。

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ううっ最終回日々カウントダウンですが!こんなバカップルな会話を妄想させてくれる再会が
あるって信じてる…!