交換条件/オマケ


「大佐…俺は大佐のおっしゃった事きちんと果たしましたよね?」
ニコリと口だけで笑うハボックが、ロイに迫る。
肩を抱いたハボックが、幸い他の者たちが不在であるのをいいことに
ロイを個人執務室の方に連れ込み、後ろ手で入口に鍵を掛けた。
ゆっくり落ちてきた金色の前髪が、目の中に入りそうで思わずロイが
目蓋を伏せれば、その隙をぬってハボックが唇を重ねる。
ハボックの左手がロイの後頭部を身動きできぬよう固定し、口腔に舌
を潜り込ませた。

「んっ……」
ねっとりと絡め取られる感触に、ロイが眉を寄せてハボックを押しのけ
ようとすれば、いっそう強い力でハボックが唇を貪った。
「…んんっ…」
しっかりと抑えつけられたことに反発し、首を振ろうと抵抗を重ねるロイ
は、ハボックの右手が服の上から背を辿り、腰の辺りをまさぐり始めた
動作にピクリと震える。
「あっ…バカ……今…勤務…中……」
「さっきは場所で今度は時間っスか大佐 そう何度もワガママ聞いて
あげれませんよ」

クスクスと笑いを含んだ声は、そのまま耳朶近くにより細い息をロイ
の耳孔に吹き込んだ。
「ひゃっ…やだっ…」
反応を楽しむハボックが、耳後ろの薄い皮膚を舌で擽りロイの力が
抜けた瞬間に素早くベルトを外し、ズボンを下ろした。
「…ヘタに全部脱がすより オーバースカートの下が素足ってエロい
かも」
滑らかな素肌の感触を楽しむハボックの節だった指が、内腿をすべり
愛撫を施すうちにロイの呼吸がだんだんと浅くなる。

「…仕事中のエッチって興奮するタチ?」
歯でロイの耳朶を挟んだハボックが、怯えたように後ずさるロイの腰を
グイと引き寄せ、その両脚の間に自分の腰を割り込ませた。
「ちっ…ちが…お前がっ…」
「…俺が…何スか なんでもかんでも俺のせいで大佐、俺に流されて
いるだけってコト?」」
 酷薄な表情で薄く笑うハボックを見たロイが、唇を噛み締め睨みつけ
るが、その昂りの周囲をゆっくり弄る手をハボックは一向にとめようと
しない。
 悔しさから無言になったロイの、中心をきゅっと握ったハボックは
冷たい笑みのまま続けた。

「ほら大佐…ちょっといじっただけでこんな蜜トロトロ… 興奮してない
のにこうなんだ?…エロいなあ…」
「あっ…やっ…!なんで… お前ばっかり……」
「俺ばかり?」
「余裕なんだっ! わ、私のほうが年上だし絶対お前より経験豊富だし
上官…なの…に…ふっ…ぅ…」

 ビクビクとハボックのほどこす愛撫に反応してしまう体が、悔しくて
たまらないロイが涙目で俯くと同時、ハボックの冷然としていた笑みは
拭われ、嬉しそうなそれにとって変った。
「…余裕、なんて全然無いっスよ」
ロイに聞こえぬようハボックは小さく呟き、ゆっくりとまたロイの弱い
箇所あちこちへと指を走らせ、掌で撫で、唇で啄ばみ舌で弄り震える
体を躍らせる。

落ち着いて見えるという理由を強いてあげるなら、自分がロイの前で
培ってきた忍耐力のおかげだろうとハボックは自嘲した。

――同性で、自分じゃ手に届かないエリートで、年上で女好き。
どの条件をとっても手に届かぬ人にずっと思いを寄せていた自分の
忍耐をこの人は余裕と思ってくれているらしい
ならば、そう思わせておいて…俺にアンタへの主導権握らせて?

ひたすらロイを気持ち良くさせることだけに専念したハボックに、ロイ
が涙を零して「私だけを乱して遊ぶな このオヤジ趣味!」と怒鳴るの
が三十分後。
「やっ…ハボ…もう許し…て…お前が…欲しい…」とロイが懇願するの
は、そこから更に一時間後のことであった。