みんな仲良し


「おかしい…こんな筈ではないのに…」
ソファに沈みクッションを抱えて一人呟くロイを、ハボックは「はいはい」
と軽くいなす。
普段はカッターシャツしか着ないロイの、黒いロングTシャツ姿は貴重
で、その姿を見られるものはそれだけで心が許されている証拠だ。
「大佐には大佐しか出来ないことがあるんだから、料理や給仕の一つ
二つできなくったっていいじゃないっスか」
クッションを取り上げ、ロイの背中と背凭れの間に差し込ませ、やっと
安心して皿が置けるとハボックはテーブルへ手を伸ばした。

「そうそう 大佐がワイン注ぐ役なんてやったらグラスきっと割れて
ますよ!」
「いやいや幾らなんでも…零すぐらいですよ」
テーブル越にさもありなんと頷く、ブレダとファルマン。
上官であるホークアイ中尉やアームストロング少佐が料理に給仕と
働いているのに、それより階級下の者たちが平然とくつろいでいられる
ばかりか、チャチャを入れてくるほど気心が知れたメンバーなので
ロイも、既にこの顔ぶれには隠し事はしておらず、自分が家事方面に
関してまったく才能がないことも、ハボックと恋愛関係にあることも周知
の事実だ。

「こんな筈でないといえば…ロイ〜お前は自分より小さくて細くて
美脚でハリのある太腿を持った長髪レディと結婚する予定じゃなかった
のか?…なんでよりにもよってこんな図体デカイ大きい逞しい足かつ
短髪男とデキてるんだよ」
ツマミの乗った皿を置いたハボックが、屈んだところをヘッドロックした
ヒューズはいい気持ちにほろ酔い加減だった。

二人の仲を認める認めないを、アンタに言われる筋合いはないと以前
は反発していたハボック。
だが、ロイの士官学校時代どれだけヒューズが苦労していろんな意味
で護ってきたかをきいて、現在は「娘さんを俺に下さい」な心境だ。
鬱陶しい絡みも、娘思いのパパ同様ロイを案じてるんだなと理解し、
苦笑しながら「お義父さん酔っ払ってしょーがねーなー」状態で、され
るがままだ。

「…なんでと言われても…… なあハボック…?」
周囲の視線を一心に浴びたロイが、困ったようにハボックへと顔を向け
助けを求める。
「そこで俺を愛してるからと即答してくれないんスか」
「えっ…あ…いや それは尤もな理由だが…この場合の原因の追究
にはなっていないし」
何気なく話題をかわしているが、ロイの頬は赤くハボックの台詞を否定
しないのが、何よりの肯定だった。

「運命だったんスよ」
ヒューズのヘッドロックを、さりげなく外しロイの後に立ったハボックが
さりげなくロイの両肩に、大きな掌を置いた。
「運命か…」
ぐびり、とグラスにまだ結構な量が残っていたブランデーをヒューズは
飲み干し、ハボックの台詞を繰り返す。
「…運命じゃ…しょうがねえよなあ」

ハボックとヒューズのやり取りを聞いたロイが、改めて乾杯だとグラス
を掲げ、全員へと微笑んだ。
「ハボックだけじゃない 中尉も、アームストロング少佐にも、お前にも
ブレダにファルマンに、フュリー…皆に出会えた運命を…私は幸福に
思う…ありがとう」

「まあ、悪くない運命ですね 上官とのが書類をためこむクセさえなくし
てくれれば」
部下の誰ともない呟きに軽い笑い声が起こり、全員で乾杯とグラスを
干して、楽しい慰労会ははじまった。





 
ガンガンオンライン公式の、荒川先生書下ろし軍部絵+DVDヒュロイ出会い編から妄想
(まだ出会い編はみてないのですが)
 右側に黒Tロイその後ろにハボ ロイの横がヒューズの部分に集中して、左側実は
うろ覚え(笑)幸せなマスタン組イラストでした…!カラーで見たいなあれ