心理テスト5
(シリーズですが続き物じゃありません)



お礼を言いたい人が多すぎるからと、兄弟手分けをして各地を廻っている
というエルリック兄弟は、それでもロイの元には二人揃って挨拶にと訪れ
ていた。

「まあ…アンタには色々 一応世話になったし?」
エドワードが頭を下げるのに、ニヤリとした笑いを返し「いやいや 君も
大人になったものだ」と流すロイの大人げの無さは、幾分かの照れ隠しが
含まれていると周囲の者はわかっているが…それでも顕著に反応してしま
うのがエドワードであり、それを収めるのが弟だった。

何とか話題を逸らせぬものかと目で訴えてくるアルフォンスに、ハボック
がやれやれとばかり、寄りかかっていた窓辺から腰を上げた。
「大将 例の幼馴染にプロポーズしたんだって?やるなあ」
覿面に紅くなり、挙動不審となったエドワードを弟がフォローする。
「あの…なんでご存知なんですか?」
「…追跡調査でリゼンブール行ったら 通りすがるたびに皆が教えてくれ
たぞ」
田舎町特有の親切心は、時として凶器だよな〜とにこやかに言うハボック
は自分にも覚えがあるのだろう。

「花束も何も持ってなかった それが大将らしいって皆噂してたぜ」
「…少尉はアームストロング少佐の妹に薔薇の花束持ってったって?」
反撃の糸口を見つけたと返してくるエドに、ハボックは苦笑して頷いた。
「…白の薔薇?なんかイメージ違うよなあ」
「俺のイメージって?」
「なんか少尉はどっちかって言うと赤薔薇っていうか…」
「あーマスタング准将に送るならそっちかもな」

「…参考までに聞くけど 薔薇10本の花束を作るとするあなたが思い浮か
べる白薔薇赤薔薇の割合はどれぐらい?ついでに准将も答えてよ」
「…さっきも言ったけど准将相手なら赤薔薇10本 女の子相手はなぁ…
趣味わかんないからとりあえず半々かな」
少佐の妹相手のときは、好みを聞いて花束を用意したというハボックは
無難な答えだ。
「私もか…?女性相手なら10本ではなく赤薔薇1本を ハボック相手なら
…まとめて白い薔薇というところか」
茶飲み話かと気軽に答えたロイは、激しく吹き出したエドに首を傾げた。
「何だね?」
「兄さんったら…名指しでって人が悪いよ えっと…僕らが放浪中に聞い
た心理テストなんですけど…その…赤はその人のS度、白はM度を表すだ
とかで…」
少年らしく心持頬を赤らめたアルが、目線を逸らし笑い続ける兄に代わり
答えた。

「二人とも女相手だと普通なのに 相手限定ですっげー偏ってるし…」
笑い転げるエドワードを尻目に、無表情かつ無言で見詰めあうハボックと
ロイの心境は謎だった。