お友達から


ふとした話の流れから、ブレダとハボックは士官学校
での席が近かったことから友人になったのだとの
話になり、それが一段落すると会話はいつもの客人の
方に向けられた。

「ヒューズ中佐と大佐は やっぱ席が隣だったとかそんな
感じっスか?」
ハボックが聴いた瞬間の、二人の表情は周囲の予想を
越えた大げさなものだった。

わずかに停止した後のヒューズは、ブフッと耐えきれない
ように吹き出すと、笑いをこらえて小刻みに震え 同じく
瞬時停止したロイは、見事なまでに頬を紅く染める。

「おおっ…!」
口が悪い輩には厚顔無恥などと評されてしまう、ロイの
ポーカーフェイスがこうも剥がれてしまうのは珍しいと
部下たちに注視されたロイは、ヒューズが口を開きかけた
のを見て慌ててヒューズに向き直った。

「いや俺らは……むぐっ」
「言うなーーーーっっ!!!」
必死でヒューズの口を掌で塞ぐロイは、必死だ。
だが、そんなロイの様子を見ては真相をかえって知りたく
なるのが人間というもので、無言に視線を交し合った
ハボック、ブレダ、ファルマンと消極的ではあるがフュリーが
見事なチームワークでロイの背後に寄った。

ファルマンがロイの掌を剥がすと、ブレダがその腕を引き
固定し、ハボックが腰を抱えヒューズとの距離をとり、
フュリーがロイとヒューズの合間にすまなそうな笑顔で
入り込む。

「言うなよヒューズッ! 言ったら…んむっ…んーっ!」
ロイが叫びでヒューズの言葉を遮ろうとすれば、ハボック
の鍛えて厚い皮を持つ手がロイの口元を覆った。
「むーーーっ!」
「はいはい大佐 俺ら忠義厚い部下は大佐のこと何でも
知りたいんっスよー 大人しくしていてくださいねー」

「いやあここまで見事な連携技を見せられたら 黙って
帰してもらえないよなあ なあロイちゃん?」
にんまり人の悪い笑顔を浮かべるヒューズは、一言
「押し倒された」とだけ答えた。

「…押し……えぇぇぇっ!?た、大佐が中佐を襲ったの
ですか!?」
「それは…予想外な」
「へぇー大佐ってそういう手段を取るタイプだったんです
ねえ」
わざと曲解させて言っているのだろうと悟っているブレダ以外
が、大真面目に感想を洩らすのに対し一人拘束役を続行
しているハボックは無言のままだ。

かえってその反応が怖いロイが、口を開かないハボック
を恐る恐る見上げるとハボックはにこやかに口端を上げた。
だが、その目は笑っていない。
……怖すぎる。

首を横に振ってようやく掌を外されたロイは、顔どころか
首筋まで紅くなり、ふーふーと荒い息を吐きながらヒューズ
を睨みつける。
「ヒューズ!!誤解されるだろうがっ!」
「えー何がー? 俺嘘は言ってねえもん」
「嘘だっ!あれは確かに結果として押し倒してしまう結果に
なった……いや…違うぞハボック……そうじゃなく
…だからっ!」

自分の行動の恥を晒すのをよしとしないロイが、無言で
上手く説明しろとヒューズに顔を向ける。
勿論ロイのそんな視線をものともしないヒューズは、ちら
とその横に居るハボックに目をやった。

長年の付き合いで、今度はハボック込みでからかってくる
だろうと察したロイは、「よよ、用事を思い出したっ!
庶務課に私宛の書類が届いてる時間だなっちょっと取って
くるとしようっ!」と脱兎の勢いで廊下から走り逃げ出し
ていった。

「…案外 お前さん落ち着いてるな?」
「まあ中佐のことだから あえて大佐の反応で遊んでるん
だろうと」
「っちぇーお前さんが大人になっちゃって俺はつまらんよ」
そう言って肩を竦めたヒューズが、学生時代の廊下角でパン
フラグ事件を語った。

「かわいい!大佐可愛いですねっ!」
握りこぶしで騒ぐフュリーを後ろ目に、ハボックは部屋外
へ抜け出した。
「…あれ 少尉はどこに…」
「購買にでも行ってパン買ってるんじゃね?」
にやりと嗤うブレダは、同じ想定結果にたどり着いたらしい
ヒューズにカメラを指差され、OKサインを指で作るとその
決定的瞬間を収めるためハボックとロイの後を追った。

(ヒューズ中佐以上の仲に…!)
曲がり角から伸びる大柄な影と、独特な髪型でハボックの
存在を悟ったロイは、廊下の途中で歩みを止める。
「…ハボック…だよな?…何をしてるんだ」

そこから前へ進んでこないロイに焦れたハボックが、全力の
タックルをかけてきて、勢いのままロイはその胸に抱かれる
形になった。
「えっと…これで…フラグ成立…なんスよね」
「お前な…今更…… まあ、うん そう…だな」

当人たちにとってその体勢になってしまったことは幸せな
誤算であったが、その場面を写真の撮られてしまったのは
不幸だったかもしれない。

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Rさんにハボがこの馴れ初めを聞いたときの続きは…とのお言葉を頂き
挑戦 すみません黒ハボになるどころかロイと同じレベルになりました(笑)