犬猫出会い
ますにゃんぐだけでも充分にパラレルですが、今回は更にいつもの設定と異なるにゃんぐ話です


黒い毛玉が、飛び出してきた。
いや黒いもふもふは、単なる毛玉ではなく、生き物のようだ。
ばんざいをして腹を見せた状態の、小さなソレは落ち着いて観察して
みれば、黒い子猫。
ぷるぷると震えてるその様子を、ハボックは困惑して眺めていた。

だだっぴろい自然公園の番犬兼マスコットとして、ワン・ハボックは
自由に行動することが許されている。
公園管理人達も集合住宅では飼えないペットの代わりとして、管理棟
の脇にハボックの寝床を作り、餌を与え、時折構いつつも仕事中だと
いうのもあって、適度に放置してくれていた。

「わ、わわ、私を煮るなり焼くなりして好きに食べるといいニャッ」
「……はい?」
「あ、でも…丸齧りは痛いからイヤだにゃ……」
腹見せ状態の子猫は涙目だが、ハボックとしても対応が難しい。

「痛くにゃい食べ方で た、食べるといいと言ってるニャ!」
「食べろと言われても……俺エサに困ってるわけじゃないし」
だいいち、このちみっこい猫は食えるほどの肉はなさそうだ。
「にゃ……じゃあ…私は……どうしたらいいんだにゃ……」
うっすらと涙を滲ませていた目から、大粒の涙がぽろぽろと溢れ
だした。
とりあえず鼻先で黒猫の身体を転がし起こし、普通に座らせるがその
涙はとまらなかった。

「あの…なんで俺に食えとか言ってきたんスか?」
「ヒック 私は……ヒュッ…ヒュ…ヒュ、ズの所へいかないと…」
…ヒュズとかいう奴の所へ行くのに、俺が食う??
「ヒュズって?」
「わ、わたしの…飼い主」
よく解らんが、飼い主の所へこの猫は行きたがっているらしい。
「えーっと……迷子?」

俺の問いかけに、いっそう盛大に泣き出した黒猫の話をまとめると
どうやら飼い主だった人物はヒューズという名前で、事故にあって
亡くなったらしい。
「わたしのせいにゃ……」
「…アンタのエサを買いに行く途中で、子供を庇って事故にあったん
でしょう?アンタのせいじゃないっスよ」
「でも、でもヒューズは私をきっと探して……」

それで、俺に「食え」の発言になった訳か。
「ヒューズって人が、向うの世界で待っているとしたってアンタが
きちんと寿命を迎えて幸せな状態で来てくれることを望んでいると
思いますよ」
「にゃ……」
「それとも、その人はアンタが泣きながら追いかけてくることを望む
ような人でしたか?」
ぷるぷると、黒猫は小さく首を振った。

涙を拭うように黒猫の顔をべろりと舐めると、小さくクゥッとお腹が
鳴った。
「…俺のもらったメシの残りですけど……」
アジフライの半身を差し出せば、黒猫はいいのかと言うように、俺を
見上げた。

「んでね、アンタの飼い主がお迎えに来るまでここで待ちましょうや
俺の寝床、余裕あるし公園の人達マスコットに猫も欲しいって言って
ましたし」
「…いいのか?」
「俺はワン・ハボック よろしく」
「ロイ・マスニャングにゃ よろしく」

金の毛並みの大型犬と、大人になっても子猫めいたサイズの黒猫は
今日も仲良く、来訪者たちの目を和ませている。

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りょう様と、猫とわんこのお話をしている時にアジフライを
差し出すわんこ…という会話になりまして、そこからの妄想でお話となりました。
ただでさえイロモノなにゃんぐですのに、軍部設定でもないパラレルのパラレル
ご容赦ください(笑)