うたたね

「大佐っ!」
寝台の上で丸まるロイから、布団を剥ぎ取ったハボックはまだ眠っ
ているロイの肩を軽く揺さぶった。
「ほら起きてっ 今日はいい天気っすよ三週間ぶりに晴天の休日
なんだから布団干さないと」

薄く目を開けたロイは、ちらりとハボックを見た後またゆっくりと
目を閉じつつ寝ぼけた口調で答える。
「…や ねむい…」
「やじゃないですっ! 他の家事は面倒見るから、布団干しぐらい
は大佐担当って決めたでしょう」
「…新しい布団買って…やるから…」
「そういう問題じゃないっス!」

経済観念のないロイの言葉に、軽くキレたハボックが強引に両脇を
掬いロイの体を起こし上げる。
「うー……」
無理やり覚醒させられそうになるロイは、起用に拘束を外し体を
反転させ、ハボックの首筋へと抱きついた。
「えっ…ちょ……大佐」
「ハボも……一緒に…寝よ?」
日頃は頭脳明晰を謳われているロイ・マスタングだが、有事でない時
の、寝汚さは人並み以上で、言葉遣いはどこかたどたどしいのに、
しがみつく力は日頃より強かった。

このお誘いは純粋な睡眠の誘いで、寝ようの誘いではないと解って
いても、ハボックの頬は染まる。
「そ、そういってごまかそうたって駄目です!大佐だって暖かい干した
ふかふかのあったかい布団は魅力でしょ」
「……お前が一緒だと あったかいから…いらな……」

途切れ途切れのロイの言葉は、最後まで語られず小さくなっていき
呟きが聞き取れぬようになったと同時に、ロイはまた眠りに落ちて
いった。
「…もー…反則でしょ…」
あんな言われ方をしたら、起こせやしない。
さっき、コーヒー沸かしたばかりなのに朝食もまだお預けだ。
洗濯だってたまってるし、鍋だって洗っておきたいのに。

抱きついたままのロイごとベッドに潜ったハボックは、抱きついて
離れないロイの額に軽く口付け、自分も休日の眠りを楽しむことに
した。

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ハボックにとっては二度寝のうたたね ロイは本気寝