昼休みの会話


ほんの少し暑さを感じる程度の陽射しは、木陰に入るとその眩しさ
だけが存在して、気持ちを明るくさせる。
ときおり吹く風が、訓練後の少し残った汗を浄化するかのように
心地好い。

アボカドとエビのサンドウィッチを大佐に取られた腹いせに、大佐
の鳥から揚げを3つ奪い返すと、納得のいかない顔をされたが
「俺にとっての等価交換は これぐらいっスよだってアボカド食べ
たくて買って来たのにセットだったのに そののたった一個を大佐が
食っちゃったんスから」
と言えば、大佐は自分の行動が原因かと素直に諦めた。

…そこで、カロリーと原価を一つずつ計算しだすのは、食後の楽しい
一時にどうだろうと思うのだが、…大佐のそういう行動も面白いから
まあいいかと、腕を組んで、その計算式を一緒に見下ろしてみる。
…ダメだ、全然解らん。

「うむ…確かにカロリー的にはそう大差ないかもしれんな」
「え、マジっスか」
野菜(アボカド)メインのサンドウィッチと揚げ物じゃ、比較にならない
ぐらい揚げ物の方がカロリー高いと思ってた俺が驚くと、大佐が
同じく驚いた顔をした。
「何スか?」
「…お前ならアボカドのカロリーが高いぐらい知ってそうだと それに
こっちはマヨネーズやらバターやらも使ってるしこの鳥唐揚は一口で
そう大きくないしで 計算できないか?」
「あー俺の住んでたところだと アボカドなんてオシャレな野菜は
そうそう売ってなくって…たまに入荷しても『鰐梨』なんて怖い名前
で売ってたから食べたいとか思わないまま成長したんスよ だから
カロリーとか知らないっス」
「まあ確かに、あれの外見は子供の食欲をそそらんな」
「大佐はガキの頃から食ってたんスか?さっきの勢いすごかった
っスね」

奪われたサンドウィッチの腹いせプラスからかいで、空になった
ランチボックスをさせば、大佐の顔が少し紅くなった。
「…マダムの店では、こういった料理が少なくなかったからな」
「思い出の味っつー訳ですか 納得」

新鮮度を保つのに苦労しそうな、エビの入ったサンドウィッチが軍の
購買で売られる事はあまりない。
俺が他にカレーパンとドーナツとベーグルサンドを持っていたのも
あって、大佐は遠慮なくそのサンドウィッチを奪ったのだろう。

「で、お前が始めてアボカドを食べた時の感想はどうだったんだ?」
「まだ食ったことないっス」
「……は?」
「だから 今日初めて食べてみようかなーなんて思ってたら大佐が
食っちゃった」
これみよがしに掌を空に向け、肩を竦めるポーズを取ると、大佐は
瞬時に眉を寄せ、ものすごく困った顔になる。

「え…と……これ、食べる…か?」
大佐の手元にあるのは、あと二口になってるサンドウィッチ。
そこだけ食べても、アボカドの味はわかるのかなと思いつつ、せっかく
だからと齧ってみたそれは、濃厚で初めての味だった。

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大佐がお詫びにその夜10個ぐらいアボカドを買って、ハボのお家にいけばいいと思います
…しかしアボカド10個って一度に食ったらもんのすごいカロリーだ
ハボなら消化しそうだけど、ロイはほっぺに行きそうで心配(笑)そしてこれだけイチャイチャ
なのにこの段階で二人できてないっていう