わんこの抗議 オマケ


 ムカつく、生意気、何様だ。
悪し様に罵れば、見下ろす瞳はもっと面白がるだろうというのが目に
見えて、無言で睨んでやってもハボックのその余裕の表情は変わらな
かった。
ほんの少し図体がデカいからって、いい気になるな。
言っておくが私が小柄なわけじゃない、同年代の平均身長+αぐらい
の背丈はあるし、体重だって同様だ。

「…軍人が一般人と同程度の体重ってマズくないっスかね?」
「う…うるさいっ お前のような筋肉ダルマと違って私のような頭脳
派はこれぐらいで適正なんだ!」

 だいたい、何なんだお前は。
人懐っこくて、御しやすい犬のフリをして慣れ親しんだ顔をしておき
ながら、時折誰もいなくなるとこうやって私へと牙を剥く。

「頭脳派を主張するなら文官らしく 大人しく後ろに引っ込んでて
くれませんかね 大体司令官のクセに前線に立つだけでも異例だって
のに しかも先陣切るなんて…なに考えてるんスか」
 心持ち低くなった声に含まれているのは、瞋恚の感情。
細められたその目の奥は、笑いを形取ってるくせに静かな怒気が含め
られていた。

「…ハボック お前は今怒っているのか?」
「やっと気付いたんスか 鈍いにも程がありますね」
「…何故だね 私はうまく指示して結果だって万事上場だったでは
ないか」
「…アンタが足首ひねって怪我した以外は…でしょ」

――ああ、それでコイツは腹をたてていたのか
うむ、確かに飼い主を護れと命じておきながら、その当人が飛び出し
ていったせいで怪我をしたとあっては、命じられた身としては不本意
で仕方がないだろう。

 仕方がない、しばらくハボックの言い分につきあってやるか。
溜めているものを吐き出せば、コイツもすっきりするだろう。


見下ろしてくる部下の、雄くさい冷笑。
…危機感のない上役は、相変わらずその真意を理解していなかった。

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ロイサイドということで