「おはようございます」 ブザーとノックの音で慌てて飛び起きて、時計を見てみれば ハボックが迎えに来る筈の時間の、まだ1時間半も前だ。 …あいつめ、来週の会議の時間と間違えたのかと寝ぼけ眼 をこすりつつ玄関に向かうと、合い鍵を持っているハボックは 敬礼をしながら、もう靴を脱ぎあがりこんでいた。 「……まだ、早いぞ」 お前が間違えたんだ、もう少し寝かせろの意味で呟くと 「そっスね これだったら時間あるから朝ご飯食べれます」 一人足早にキッチンに向かったハボックは、抱えていた 紙袋から卵やら牛乳やらハムやらを並べると、私を食卓に つくよう促した。 「ご飯?」 「ここんとこいっつも貰い物のクッキーとかばっか 朝執務室 で食べてるじゃないスか 俺が今ぱぱっとメシ作るんで食べ て下さい」 「寝起きは食欲がない」 「そう言っても数時間後に空腹だってわめいてるでしょ ほらホットミルク 今 ハムエッグ作りますから」 そういいながら、皿の上にきっちりバターを塗ってあるパンが 置かれ、切ったトマトが添えられる。 作ってもらったものを手つかずなのも悪いかと、一口ミルク を啜ればうっすらとコーヒーが入っていて、飲みやすかった。 「このトマト、美味いな」 「でしょー?完熟なのを朝市で買えたんですよ こっちじゃ あまりここまで大きくて赤いの見ないっスよねー」 振り返ったハボックは、私がパンに手をつけていないことに 気付くと、そのパンを取り上げ焼きあがったハムエッグを 挟みサンドウィッチにしてまた渡してきた。 「これなら食べやすいでしょ?」 こうまでしてもらって、食べない訳にはいくまいと、もくもくと 口に運べば、その様子をハボックは何やら楽しげに見詰め ている。 「…お前は食べないのか?」 「俺は食ってきましたから あ、口元にトマトの種がついて ますよ」 伸びてきた武骨な指が唇を拭い、ハボックは躊躇いもなく その指先を自分の舌へと運んだ。 「そんな恋人にやるようなふるまいを恥ずかしげもなく行なう のは どうかと思うぞ?」 「…ここまでやっても 通用しないってある意味凄いっスね」 ウザすぎる愛情表現と言われるハボックには、これぐらい 鈍い方がいいのかもしれない。 愚痴めいたハボックの言葉を聞いた、マスタン組その他の 面々は面白いから静観しておこうの結論に達していた。 ************* ロイ視点での続編をのお話を頂きましたので(笑) ハボのアタックを鈍くてかつ天然にかわすロイ |