オマケのオマケ


ちょっと待て、落ち着いて考えよう。
給料日は3日後で、俺の財布の中身はここの支払いに300センズ足りない。
常連でもない店で、ツケは頼めないし…。
そうだ、ブレちゃんを呼ぼうと胸元を探って、思い出す。

……アドレス帳、机の中だ。
私服はロッカールームに入れていたから、帰宅時に苦労しなかったとはいえ
本日の業務終了は、大佐から無理やり部屋から追い出させれの打ち切りだった。

畜生しかたがない、最後の隠し財産を使うか。
屈み込んで、靴に何か異物が入ったかのような振りで中敷をめくる。
そこに挟んである、いざという時用5000センズ。
これで、当座はしのげ給料日まで持つ……としても、理不尽だ。
だって中佐がおごると言ったんだぞ?

翌朝大佐に色々確認する前に、中佐に請求金額をつきだしてやろうと出勤して
みれば、ファルマンから不思議そうな一言が返る。
「ヒューズ中佐なら、もう仕事は済んだからと中央にお帰りになりましたが」
「……あんのオヤジめーーーっ!」
つい勢いよくコブシをぶつけてしまった、スチール棚の壁面が歪んだので、慌て
て反対から叩いて直す。
――デコボコが余計目立つようになったのは、気のせいだ。

足音荒く席に着けば、触らぬ神に……といささかビクついた風情のフュリーが、
折りたたまれたメモを差し出してきた。
「何 これ」
「ヒューズ中佐からのお預かりものです」
飲み食い代は次回にでも払うとでもいうのだろうか?とメモを開けば
書かれていたのは、『昨夜の飲み代をロイにたかる方法』

その1 「昨日ヒューズ中佐に、大佐についてどうだとか色々聞かれて…」と
さりげなくロイに言ってみる

その2 慌てて詳しく聞かせろとロイが言ってきたら、目線を泳がし「いや ここ
じゃちょっと」とかわせ

その3 ロイが「夜 飲みに行かないか」と間違いなく誘ってくるだろうから、
「昨日 中佐がおごってくれるって言ってたんスけど、大佐が途中で連れて
帰っちゃったから それの支払いで財布空っぽなんです 給料日までどうしよう」
と呟いてみる

その4 「その件もあるし 色々聞いてみたいことあるしお話が途中だったのも
あるんで中佐に連絡してみていいっスかね…」と尋ねてみろ

確実に、ロイは俺とお前を会話させないよう給料日まで毎食おごってくれるだろう
それでは検討を祈る!
                               愛の使者 マース・ヒューズ


…脱力。でも何か、やってみたら実際この通りになる気がするものすごい説得力
が含まれているのはなぜだ。
掌の上で踊らされてる気もしないでもないが、ロイが好きだからロイに悪いよう
にはしないと言っていた中佐だし、俺にはわからぬ色々含みもあるんだろう。

面白そうだから、ノッてみるか。
メモを細かくちぎってゴミ箱に捨てた俺は、大佐の執務室へと向かった。


***************************
拍手下さった方々が、そろってハボックのお支払いの心配を下さいましたので
おまけのオマケ(笑)
…結局ヒューズはお金全然出してないねw