一つの証/オマケ


「そういえば お前指輪を渡す前に妙な表情をしていたな」
シラフに戻った翌日、流石に職場では嵌めれないがと自宅で
指輪をつけたロイが、ハボックへと向き直った。

「あー…さすがっスね」
少し苦笑するハボックは、慧眼に恐れ入るとばかり言いよどむが
隠すつもりはないようで、いきなり頭を深々と下げた。
「ハ…ハボック!?」
「指輪渡す前に、一つ別に懺悔したいことがあったんス」
真摯な声音に、ロイは対応がわからず続けろと促す。

「俺は…確かに最初は大佐のこと 勝手で軽い上司だと思って
ました」
「それは夕べ聞いたぞ」
「だけどそれはその…本当に短い期間だけで、すぐに大佐の良い
所って幾つも発見できたんです 意表を突かれた笑顔は超可愛
いし 実は部下のこと何より大事にしてるし 無茶するのだって
出世狙いだけが目的じゃないって」
うつむき訥々と呟くハボックは、微笑んでいるのにどこか泣きそう
な表情をしていた。

「だけど…俺は卑怯だから アンタの良いところを誰かに告げるん
じゃなくて自分の後ろに隠して…人に見せないようにしていた
大佐の見方は、本当に大佐の良さをわかった奴だけでいいって
勝手な理由をつけて」
ようやく顔を上げたハボックの目に、小首をかしげたロイが映る。

「…別にお前が私の良さを啓蒙する必要などないだろう 第一焔
の錬金術師の肩書きだけで寄ってくる胡散臭い奴だって大勢いる
…私の中身に関係なくな」
「だからっ!…そこを俺とかがフォローすべきだったのに…」

フゥと小さく息を吐いたロイは、首を振った。
「二度は言わんぞよく聞け バカだな 私の笑顔も部下を思う心も
お前たちだからだ …妙な話を巻き散らかしてそのフォローとして
興味のない相手にまで笑顔や心配を振りまくなんて私は心から
ゴメンだ」

さっぱりキッパリ…他はいらないとの気持ちよいぐらいの切捨て。
ヒューズ中佐が聞いたら「お前はそこを我慢すりゃ 幾らでも味方
増やせるのによ」と困ったようなそれでいて温かい微笑を浮かべ
そうだと、ハボックは思う。
「…何度も惚れ直させてくれますね アンタは」
――残念だけど、俺は中佐のように器が広くないから…自分達
だけでいいと言ってくれる大佐の言葉に、素直に感動だ。

「罪な男だな私は」
フフンと鼻先で笑うロイの顔は、照れくささを押し殺した表情で、ハ
ボックはその顔は反則に可愛いと、別の感動を噛み締めていた。


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ラブ度低いですがこういうハボロイも好き