お仕置き

「くふっ…」
声を出せば負けを認めてしまうとでも言うように、ロイは喉奥
から洩れてきそうになった嬌声を飲み込んだ。
見下ろしてくる青い瞳は、冷たい海のように酷薄でその醜態を
哂うかのように細められている。

「気持ち良いでしょう?アンタが俺に触られるのが嫌だって言う
からわざわざ買ってきてあげたんスよ」
低く、耳に心地よい落ち着いた声。
普段であればロイに甘い言葉を投げかけるハボックは、どこか
嘲りを含んだ声音で、手元にあるコントローラーのボタンを
強の方へ押した。
「あっ…あっ…やっ………」
ひくりと背筋を震わせたロイは、自身の秘部に無理やり納めら
れた玩具の振動が、更に大きくなったのに耐え切れなくなって
悲鳴を漏らした。

 ほんの少しのつまらないやり取りで、思わず口にしてしまった
『私に触れるな』のロイの一言は、ハボックに冷たい怒りを
齎せた。日ごろであれば、二日三日もすればなし崩しに仲直りを
している筈なのだが、意地を張り続けていたロイはハボックが
差し伸べてくる手を悉く拒み、その夜ハンストをするかのように
食事まで拒んだ瞬間に、ハボックの怒りは爆発した。

「アンタが俺に腹を立てているのは分かりますけどね 嫌がらせ
の為に自身の健康管理まで怠るっていうなら話は別ですよ 俺に
も考えがあります …アンタから許しを請うてくるまで許して
あげません」
鍛錬で引き締められた太い腕が、抵抗するロイを寝室まで引き
引き摺って連れ込み、有無を言わさず服を剥ぎ取ってベルトで
後ろ手に拘束をした。シャツをしどけなく羽織る以外、生まれた
ままの姿に剥かれたロイは、外へと逃げるすべを封じられた。
 そのまま力尽くで、事を成すつもりかとハボックを睨み付けた
ロイは目の前でハボックが取り出してきた道具を見て、小さく
息を呑んだ。

「ハハッ大佐みたいにお上品な人でも 知ってるんスね」
わざとロイに見えるようにスイッチを入れれば、卑猥な肉色を
した下世話な道具は、モーター音とともに蠢きロイの顔色を
失わせた。
「ハ…ハボック…!」
「謝ります?わがまま言ってゴメンナサイって」
「だ…誰がっ!」
「そりゃ良かった せっかく用意したんですから俺もアンタに
使ってあげたいですしね」

 やめろと抵抗するロイを寝台へと押し、バランスを失ったロイ
が柔らかいベッドに倒れこむと同時膝裏を掬われ腹部に付く迄
持ち上げられた。
自分でも目にしたことのない、最奥を灯りの下で曝され羞恥で
硬直したロイは、ハボックが躊躇なくその蕾に舌を這わせてきた
のに小さく悲鳴を上げて、逃れようともがくが不自由な体勢で
それが適うはずもない。

ちゅくちゅくと猥らな水音が、ロイの耳に響く頃には望まずとも
秘部はひくつき、昂ぶりが角度を持ち始めていた。
快楽に流されるにはロイのプライドは高すぎて、紡げるのは反発
の言葉だけだ。
「くっ…あぁ… やっ…離せ…ハボック…」
「言いませんでしたっけ?許しを乞うてくるまで容赦しないって
…さて…もう良いっスかね」
ニィと目を細めたハボックが、ロイの蕾を指先で擽るとひくつき
誘い込むようにきゅっと窄まる。
そのまま指を潜らせてくるかと、目を閉じ唇を噛んだロイはそれ
以上の質量が侵入してきたことに、激しく背を反らせた。
「やっ…!な…痛っ……やだっ……」

自分の状態を見る事を避けようと顔を逸らしていたロイの瞳に、
唇の片端を上げたハボックが映った。
その指先が動くと同時、埋め込まれた道具が震動はじめロイの
躰は崩れそうに力を失う。
「ひっ…あっ……やっ……」
焦点が合わぬ見開かれた眼は、それでも美しさを失っておらず
ハボックの昏い笑みを深くさせた。
「気持ち良いだけじゃオシオキになりませんからね」
そう言ってコントローラーをポケットにしまい込んだハボックは
道具箱から薄いプラスチック製のテープを取り出し、溢れ出した
蜜で濡れるロイ自身に、ぐるぐると巻きつけた。

「これで勝手にイケませんね …どこまで意地張ってくれます?」
ロイの乳首を指先でくりくり捏ねて、その感触を味わい楽しそうに
ハボックは見下ろした。
「…うるさっ……ヒァッ!」
「まだ憎まれ口を叩けるんスね ある意味その性格は尊敬に値しま
すよ」
言葉と裏腹に、ロイの言葉にムカついたらしいハボックはポケット
からコントローラーを取り出すと、スイッチをを一段強へとスラ
イドした。
「あっ……いやっ…やだ…っや……」
解放されず小刻みに揺れるロイの竿を、じゅぶりと咥えたハボック
は快楽で歪められたロイの顔が、涙をこぼしたのを見て嬲る指を
一度止めた。

「ほら もう言えるでしょう『我侭言ってごめんなさい』言えれば
ご褒美あげますから」
「だ…誰がっ……ひぁぁぁっ!!やーーっ やだっハボッいやっ!」
無言のまま最強にまで動かされたスライドされたスイッチは、ロイ
の脳裏を真っ白に灼き尽くす。

しゃくりあげた泣き声で、うわ言に近い悲鳴を上げるロイはそれでも
許しを乞おうとせずハボックを苦笑させた。
「…俺も我慢限界なんで…抜きますよ」
電源をオフにして、玩具を抜き出した後ロイの窄まりは充血して色
艶やかにひくひくと収縮していた。
もう拘束も必要なかろうと、解かれた手はシーツの上をさまよい
浅い呼吸を繰り返す。
その艶やかな細い躰を、ハボックは持ち上げ向かい合った形で自分
の膝上に座らせた。

「あっ………」
無意識に逃げようと、抱えた背をそらせたロイの耳朶を甘噛みし
たハボックが囁き掛ける。
「ねえ大佐 …イキたい?」
どうせもう、聞こえていないだろうと返答を期待していなかった
ハボックであったが、ロイはこくりと小さく頷き思いもがけない
言葉を返した。

「……あっ…ハボ…………好きっ……」
ぎゅっとハボックの首にしがみついたロイは、途切れがちに、それ
でも繰り返しハボックに好きと言い続ける。
「…ったく…ズルいっスね…」
苦笑を刻んだハボックは、それでも我をなくして許しを乞う代わりに
告白を続けるロイに、うれしさと愛おしさが沸いて堪らなくなった。
ぐいと腰を引き寄せ、手早くロイを戒めていたテープを外すのも
もどかしく、狭いロイの肉襞に猛った剛直を押し込んだ。

「あっ…あっ…ハボッ…ハボッ……」
ずちゅっずちゅっとくぐもった音が結合部から洩れる。
何度侵入しても、狭くて熱いロイの中はハボックを容易に絶頂に
まで導いた。
「…大佐 …そろそろ俺も限界っス」
「んっ…くぅっ……あっ……ハボ…好き…」
 深く呼吸したハボックが、ぐいと腰を更に深く引き寄せ突き上げ
ると、滑らかな足の指まで反らせロイは白濁を吐き出し、ハボック
も同時に達した。


「…道具を使っても駄目となると……次は薬…か?」
体力を奪われすうすうと寝息を立てるロイは、隣にいる男が自分の
寝顔を見ながら物騒な言葉を囁いたのに気づく様子もなく眠り続け
ていた。