出会いと別れと再会と

人の優しさや情を知れば知るほど、弱くなると思っていた自分の殻
を破ってくれたのはヒューズだった。
大事にしたいものが増え、それを守りたく思えばそれ故に弱みができ
自由が制限されると思っていた自分に、大事なものができるというの
は強くなることだと教えてくれたヒューズ。

あの一見傍若無人に見える強引さは、きちんとこちらの反応や考え
を見越し計算してからの行動だった。
そう気づいた時には、既に相当親しくなってからで…あいつの頭の良さ
には、きっと私が年を経ても どこまでも敵わなかっただろうと思う。

そして私に対して、『甘えても良い』ではなく『甘えてくれ』とはじめて
言ってくれたのは、年下の部下だった。
私とヒューズがどこか対外的には無意識に計算をしながら表情を
作ったり行動したりするのに対し、ハボックは、まっすぐでバカが付く
ほど直情的で遠慮と言うものが無く、ずけずけとこちらの心に踏み
入ってきていつの間にか私にとって、なくてはならない人物になって
しまっていた。

私の手足となって働いてくれる部下としてのハボックを、最大限にどう
活かすか計算できるしたたかさ、戦闘で背中を任せられる者が傍に
いてくれる安心感と強さを、与えてくれた。

年下のクセに、部下のクセに図々しく…それでいて温かな居場所を
作ってくれるハボックに頼るようになっても、自分が弱くなったとは
感じずに済むようにアイツは笑ってくれていた。

それでも。
ハボックが負傷と共に戦線離脱して覚えたのは、少しの安堵だった。

目の前で大事な人間の命の炎が途絶えていこうとする刻の重みと、
何があっても傍にいると告げた人間が、決してどう足掻いても手の
届かない場所へと私を置いていってしまう心細さを二度と味わいたく
ないと思ってしまう、自分は怯弱だ。

自分を護ろうとする強い意志を持った青い目と頑強な体が視界になく
とも、一度ハボックのおかげで手に入れた心の剛さはもう折れない。
遠くにどこかで存在してくれているだけで充分だという身勝手な憩い
から、ハボックが戦場を離れるという事実を受け止められた。

待っているの言葉に嘘は無かったが、仮にハボックが故郷で私から
離れた幸せを手にしても恨む気持ちは微塵も抱かず、寂しさはあって
も祝福できるだろうという想いも、嘘はなかったつもりだ。

…だが。

「…ククッ…何 気取ってるんスか」
電話越しの声を聞いた瞬間、それらの思いはすべて強がりだったのだ
と気付いてしまった。
一瞬ではあったが、涙が出そうになるほど懐かしく嬉しく優しく……
そして包み込んでくれる、強さを持ったハボックの声。
単に追いかけて来るだろうと思っていた男は、私の想像を遥か上回り
自由にならぬ脚であるというのに、追い詰められた時に既に声だけと
いう形であっても前で待ち構えていてくれた。

ほんの僅かな時間であったが、すべてを擲って会いたくなる気持ちの
後に訪れたのは、紛れも無くハボックは私とともに居てくれるの確信。
これからも……未来も。

自己犠牲に酔っていたとは思わぬが、はじめて考えた自分個人の為
の未来は、ハボックとともにありたい。ハボックと一緒に生きる為に
平和な世界を望むために最善を尽くそう。

そう思える強さを、電話越しの存在だけで与えてくれる相手への気持ち
を愛と呼ぶのだろうか。
ふとそんな思いに囚われたが、部下や仲間の前でさすがにそれを口に
出す度胸は無い。

周囲に見咎められぬよう小さく立てた受話器へのキス音は、確かに
届いたようで低く馴染みの有る心地好い声は「次合う時は …音だけ
じゃなく大佐からしてくれるのを楽しみにしてますよ 唇にね」と告げた。


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勢いで書いたので色々読みにくかったりするかと思いますがご容赦下さい
コミック見る限りだとハボの声は全員に聞えているようなので、二人きりの(つもり)会話は
二人きりじゃありませんが、みんな聞かないフリをしてくれていますということで

…そしてアップするのを忘れてました未整理ファイルで発見 私の行動は本当に勢いのみだ