くりすます


 「ワンは何か欲しいものないか?」
 サンタさん姿のままにゃふにゃふと袋を幸せそうに抱えていた大佐
がふと顔を上げ、俺に聞いた。

「あー…欲しいもの…っスか?」
金遣いが荒い…というより俺との価値観がまったく違うらしい大佐の
買い物はすごいとしか表現しようが無く、財布を心配してしまう。
いや、実際は大佐は高級取りで俺なんかよりよっぽど豊かなはずなん
だけど、……どうも年下にたかるみたいな気分になるというか。
「じゃあ今日俺と夕飯食べて下さいよ 今日はクリスマスなのに運
悪く当番になった奴と交代してやって一人ぼっちの淋しいメシになり
そうなんで」
 案の定にゃんぐ大佐には困った表情が浮かんだ。まあ、そうだろう
成人バージョンの大佐がこんな重要イベントの日、約束を入れない
筈がない。

「いいぞ お前につきあってやる こんな所で一人ぼっちは可哀想
だからな」
「…へ?いいんスか 今悩んでたみたいだし無理しなくても…」
「いや先ほどプレゼントを配っていたら何人かに『お返しに今夜
食事にでも』と誘われてな どうも苦手な奴ばかりだったので今日は
約束があると断ってきたから…姿をここで見られたら嘘かと思われ
てしまわないかと考えていたんだ」
「……普通に夜勤が入って俺と約束あったじゃ駄目っスかね メシは
ここでになっちゃうからチキンとケーキぐらいになりますけど休憩の
時にひとっ走りして買ってきますし」
「おおっ お前はたまに頭がいいなハボック!」
「…微妙な褒め言葉と受け取っておいていいんスかね それ」
「にゃ?私は普通に褒めてるぞ」
「まあ いいや…っていうか大佐約束とか本当に大丈夫なんスか?」
「クリスマスは貰ったお菓子を持ってかえって いっぱい食べる日
だから別に 約束してないし平気だ」
「…倍奪いサンタは年中行事なんスね…いや倍じゃなく三倍か…」

 おそらく、袋を担いだサンタ大佐の姿があまりに幸せそうなので
目にした者達は皆「ああ大佐はクリスマスを喜んでいるのだな 多分
誰かとの約束をしているのだろう」と推測アンド互いに牽制しあって
…結局俺の漁夫の利となったのだろう。

「じゃ…俺のプレゼント チキン丸焼き買ってきて晩飯に二人で喰う
…ってのはどうスかね?」
「丸焼き!!」
わくわくと尻尾をピーンと立てた大佐の顔を見た俺は、少し嬉しくなる。
 どうせ約束をしてる彼女もないからと代わってやった報酬はチキンと
ケーキを奮発してもお釣りが来るし、思いがけない一人きりじゃない
クリスマスに感謝で、楽しく夜を迎えられそうだ。