帰り道

 帰り道偶然みかけた、クロちゃんの背中に
しがみついて自転車に乗ってるミケ。
 楽しそうに笑って、嬉しそうに自転車をこいでるクロちゃん。
「あ、サトーッ!」
 私に気づいたミケが、ぶんぶんと勢いよく手を振り、
バランスを失ったクロちゃんが揺れる。
「今日もマスターの所で会おうねーっ!」
 お日様背負った、ミケの笑顔につられ私も笑って手を振り返した。

「ほら これ」
 目の前に差し出されたのは、暖かい缶ココア。
顔を上げると、そこは商店街のマモルの店の前だった。

「…ここ寄ってる」
マモルが軽く指差したのは、自分の眉間。
 …泣き出しそうだった、自分の心を読まれたのだろうか。
 ミケを羨ましいと思ってしまう、自分の浅ましい心がキライ。
 クロちゃんの気持ちに、多分本人より先に気づいてしまったのに
友達ですらいられなくなるのが恐くて、背中ばかりを視線で
追いかけてしまう、いじましい自分が嫌い。
 横に並びたいと思っても、そんな力も勇気もないくせにと
行動前に諦めてしまう自分が…きらい。
 
 ミケを大好きなのに。多分好きというのが度合いで
計れるなら、クロちゃんよりもミケの方が好き。
 明るくて、前向きで、一生懸命で、元気で…
数え上げたらキリがないぐらい、色んなところに憧れている。

…なのに、なんでそんなミケに嫉妬してしまうのだろう。
 頭の中で自己嫌悪がグルグル回って、何も見えなくなって
いたところで差し出された、缶ココア。

「…今 飲んでもいい?」
「どうぞ」
 爪を短くしてるので、プルトップをうまく引っ掛けられずにいたら
マモルが開けてくれた。
 甘くあたたかな液体が、心の黒い部分溶かしてくれる。
「おいし」
 黙って頷いてくれたマモルの優しさが嬉しい。

「ミケがマスターの所で先行って待ってるよ」
「うん」
「…一緒に行こ?」
 マモルはこくりと縦に首を振った後、スタスタと前を歩いていく。
会話はないけれど、そんな二人連れで歩くのも悪くないね。
 
 暖かい缶ココアの残りは、店にいた皆に
「一口ちょーだい」と飲まれ、気づいたら空っぽになっていた。
…その缶は捨てられなくて、洗って今は鉛筆立てになっている。

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最近本誌での マモ×サトフラグがこれでもかと立ってますv
 キュー×イバも、今号本誌(海の家の話)で再フラグで
楽しみvv