豹変した十兵衛の様子に、混乱しきった
花月の背後から伸びた腕。
 首筋に埋められた十兵衛の鼻先がひくつき、花月の
体臭を楽しむように嗅ぐ姿に、背筋が慣れぬ感覚を
拒否しざわめく。
「お前の香りは、何より俺を酔わせるな…」
 がっしりとした縛めは、逃げを許さぬ物で
花月の動きを封じる。

「じゅ、十兵衛… ね、今日はもう寝よ…んっ…」
 普段に無い酔っ払った様子の十兵衛への気遣いは、
十兵衛自身の妨害で止められた。
 骨ばった人差指が、花月の唇へと入り込み口腔を
触診でもするかのように、這いまわる。
 顔を背けようにも、残った指で顎を強く固定され、
花月の小さな反抗も許さぬかのように、一層強い力で
十兵衛へと引き寄せられた。

 「んっ…」
 口中を支配していた指から、自由になったと錯覚した瞬間
呼吸さえ奪う性急さで、口付けられた。
 気管を圧せられ苦しい体勢と、くちゅりとしたみだらな水音に、
抗議の意味もこめた花月の視線は、その抵抗を一層楽しむ十兵衛の
嗤いにねじ伏せられた。
「寝よう…とは随分と積極的だな そんなにあせらずとも
ここでお前を味わうのも可能だぞ」
言葉の意味をしばし考えた後、ようやく意味を解した花月の頬に朱が走る。

「ちがっ…十兵衛の体調が悪そうだから、寝た方が良いって…」
「…酒を醒ますには 勿論運動の『寝た方がイイ』のだろう?」
 揶揄するその表情は、勿論花月の本意をわかった上での支配だった。

 いつのまにかシャツの下に入り込んだ指先が、小さな突起を摘む。
熱をそのまま伝える舌が、背筋を辿りもう一方の手が花月の下腹部を弄る。
「……っ」

 まっすぐに自分をみつめ気遣いながら行為を進める
十兵衛しか経験のない花月は、すぐに力が入らなくなり、
割り入った膝に全身を凭れ、その熱にじわじわと浸透される。

 空気に直接晒された花月の肌の、ひんやりとした感触を
楽しむ十兵衛。
剥き出しになった下肢と、捲り上げられただけのシャツの対比は
この上も無い淫猥さで十兵衛の牡を刺激した。

 体を支配され、思考をめぐらすことは出来なくても
『コレは十兵衛ジャナイ』という思いは脳裏から消えない。
「嫌っ…も…やめっ…」
無意識に漏れる拒否の言葉と裏腹に、
十兵衛の愛撫で花月自身は透明な蜜が溢れ、ぴくりと痙攣した。
「ココ…はそうは言っていないようだが」
 蹂躙する指は止まることなく、見知らぬ人のような台詞。
「あぁ それとも『やめないで』とのおねだりか?
…お誘いにおねだりとは、花月はイヤラしいな」
深みのある、大好きな声が、大好きな人の姿で、自分を貶める。

「あっ あん… も、もう…やっ…」
「もう我慢がきかなくなったか」
緩急をつけて、花月の中心をせめるその掌を半泣きで
外そうとしても許されるはずが無く。
 これは十兵衛でないと自分に言い聞かせても、
一度放たれた嬌声は留まる事を知らず、解放されるまで
意味なさない声を紡ぎつづけた。

 花月の蜜で湿らされた指をそのまま蕾へと潜ませられる。
くちゅくちゅという水音が、呼吸と共に響く。
喉でくっと嗤う十兵衛が、耳朶を甘噛みし囁きかけた。
「わかるか…?ココはひくついて俺の指を離さんぞ
ほら 猥らな音だ」

 しゃくり上げて、首を振る花月の双眸から流れる雫を
舌で拭いながらも、十兵衛の指は動きつづけた。
 探るように内壁を伝う指の数は、いつのまにか二本に増え
花月の敏感な個所で、折り曲げられ刺激を与える。
「ほら…また勃ってきた… 花月はここをいじられるのが好きだな」
弄りながらの口調で、指を引き抜くと同時に
猛る十兵衛自身が蕾へと沈められた。

「あっ!…あんっ… や…十兵衛っ…!」
  押し込められた秘部への圧力と、止まる事無い愛撫に
快楽で意識が虜にされる。
小刻みに震え、すがるように十兵衛の名前を繰り返す花月。
 目を細め熱い昂ぶりを抽出する十兵衛。

 熱い飛沫を体内に感じると同時に、花月も数度目の白濁を
吐き出し、意識を飛ばしてしまった。


「………………」
 陽の光が眩しく背中が痛いと目が醒めれば、なぜか僅かなスペースの
台所の床の上で。脱ぎ捨てられた衣服の脇に、疲れ果てた表情で眠っている愛しい人。
シャツ一枚のその艶っぽい肢体に、あきらかに情事の名残。
(……っ! 俺は……一体何をっ……!!)
 悶々と昨夜の出来事を思い悩んでいた十兵衛は、花月の
目が醒めると同時にチャンポン呑み禁止令が出されるのであった。

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イラストふーかさん 文は私めです。
昼メロでエロは初めてだっけ?とりあえず私は 小部屋設置にしておきます(笑)
よっぱらい十兵衛のお話…の筈ですがエロだけのお話に
なってしまった気も… あれ?でもうちの十兵衛は基本
下克上侍なので、いつもこんな感じか…。