「…これを… 俺に?」
差し出された箱を手にするより前に、輝く俊樹の顔。

尻尾があったら、ちぎれんばかりにブンブンと振っていたであろう
満面の笑みに、花月の頬もつい緩む。

平日である2/14に、花月の元を訪れるのはたやすいが
それもあさましく思われないかと、妙に
繊細なところのある俊樹は、カレンダーを
目にしては、吐息をついていた。

 おそらく、次に会ったときにでも
花月は「遅れたけれど」と言って
チョコレートを差し出してくれるだろうが、
やはり男心としては当日に受け取りたいものだ。

 ルックス・スタイルはいい線をいっている俊樹。
こっそりと、配達中にチョコレートをくれる人も
いるが 所詮ほどこしだろうと気軽く受け取り
すでに紙袋いっぱいになっている所へ
ばったりと出くわしたのが、花月であった。

「花月…?」
「あ、俊樹 お仕事中ごめんね
 せっかくだから 今日渡したいなって思って」

 包み紙はブランド名の入ったものではなく、
包装紙として市販されているものだ。
「…ひょっとしてこれは手作りか?」
「うん …でも俊樹すごくいっぱい
チョコレート貰ってるね …あんまり甘いもの
好きじゃないのに …ごめんね 他のものにすれば
よかったかな」
「そんな事はない すっっごく嬉しいぞ!」

 勿論俊樹が喜んでいるのは『花月がバレンタインデーに
手作りチョコをくれた』という事実だ。
 だが、それを見ていた花月は
『俊樹は甘いものをそれほど好きではないけど、
チョコレートは大好きなんだ』と判断する。

 そんな二人の会話を、ほほえましく周囲が眺めている
という事実に俊樹が気付いたのは、花月と分かれた後であった。
 勿論、その後さんざん からかわれる羽目になるのだが、
それでも俊樹は幸せそうであった。

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 ふーかさんが俊樹は?とあったので、
私めがチャレンジさせていただきました。
…というか、原作で最終章ほぼスルー状態の
俊樹が不憫で不憫でしょうがなかったので、
幸せそうな俊樹を描いてあげたい!と心底の
願いがかなって幸せです。

 きっと俊樹が義理チョコと思い込んでいる中には
本命チョコもはいってるでしょうが、俊樹は気づかないんだろうなぁ。