閉店後、まだ始発が出る時間ではないので、残っていたホスト達は
暇つぶしがてら、雑談に興じていた。
 先日まで店内に鎮座していた、巨大な熊のぬいぐるみは
どうしたかの銀次の問いかけに、差出されたのは、デジタルカメラ。

「あ〜 コレ 十兵衛の所のカヅっちゃんだよねー 可愛い〜」
 デジカメ画像を眺めた銀次が、鏡に尋ねる。

「…これ、どうするの?」
「んー? どうしようかな とりあえず十兵衛と約束したから
…商売には使えないよねぇ」

「ケッ、アンタなら裏ルート使って どうせこっそり さばくんだろうが」
 冷めた言葉の蛮ではあるが、鏡の力量はそれなりに評価しているらしい。

「信用ないなぁ これでも、やる事はキッチリそれなりの手続きを踏むよ
…と、いう訳で銀次くん そのカメラ上げるから被写体にならない?」
「え!? いいの??」
「うん 十兵衛でもわかるように、一番使いやすいカメラ渡しただけで、
普段はそれあまり使ってないんだ。データは落としたし モデルを
勤めてくれるなら構わないよ?」
「なるなる! わーいっ!蛮ちゃんタダだよ!!タダでデジカメ貰えるよっ」
 目をキラキラと輝かせ、しっかりカメラを握り締める銀次に、
返ってきたのは冷たい視線。

「…銀次 お前が自分でブロマイド作って、客に売り捌いたら
カメラ分なんてあっという間に元が取れるぞ」
「…でも… 蛮ちゃん俺達元を取る前に、カメラ自体無い訳だし…」

 指名では、1,2位を争う銀次と蛮だが、破壊魔の異名からか、貧乏神に愛され体質のためか、何故か常に貧乏だった。

「じゃぁ こうしよう。 別に銀次くんの写真は商売で欲しかった
訳じゃないけど、いっそホストブロマイドを作って売っていく…ってのは
どうかな」
 商売でなければ、何に使うのだろうかという疑問はさておき、鏡の提案に蛮も真剣な眼差しへと変った。

「売上6:4…じゃどう?」
「7:3だ 元手はほとんどかかんねぇんだ それ位貰う」
「O・K」
 
 元手0でいい利鞘になると、新たな商売をはじめた鏡であったが、
十兵衛の写真を撮るのには、散々苦労をするのであった。

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お久しぶりのかがみん。 以前、新宿東口の目立つ箇所に
ホストクラブ1〜5位までの写真を並べたでっかい看板があったけど
すぐ撤去されちゃっていたのを思いだしてのお話です。

 十兵衛は素での笑顔は最高ですが、カメラの前で作り笑顔が
出来ないんじゃないかなぁと。