「くしゅん」
「大丈夫か?」

花月は、髪を切ったせいか、風邪をひいてしまっていた。

「大丈夫だよ‥」
髪を切って風邪をひくなんて、なんだか小さい子供のようでなんとなく気恥ずかしい。
筧 十兵衛は、お家柄、少々東洋医学の心得があったが、
仕事でずっと看病をしてやれないのを気に病んでいた。

「病院に行ってこい」

「うん、そうだね」
これ以上長引いて心配かけるよりはそのほうがいいと、
十兵衛が仕事出かけてから病院に行くことにする。

「ええっと、このあたりで病院は・・・・西新宿中央病院が一番近いのかな。
 けっこう大きい病院だな・・」
この病院は、この付近では、一番大きな総合病院のようだ。
症状をいい、受付で内科の受付をすます。

「では、その前に、この問診表を書いてくださいね。終わったら、採血しますから」
「はい・・・」

流石に大きい病院だ。
「ただの風邪っぽいのに、いろいろ検査するんだな・・・」
問診表も書き終わり、採血も終わり、いよいよ往診してもらえると
、指定された階に行ってみる。

「すいません、採血してきたんですけど」

1人の看護婦が歩み寄ってきて、花月に服を渡した。

「はい、じゃ〜これに着替えて、待っててくださいね
下着も全部、脱いでください」
と、渡された病院の診察時の衣服。

(内科の診察って、下着も全部とるんだっけ?)
はて、と首をかしげているところで名前を呼ばれた。

「はい、じゃ〜ここに寝てください」
言われるままに身体を横たえる。
「じゃ、股を開いてね、大丈夫ですから」
大丈夫もなにも、ただの風邪で、何故、股を開かなくてはいけないのだ。

「ま!待ってください!何故、ま、股を開かなければならないのですか!?」
「何故って、君、婦人科の検診だから、しょうがないじゃないか」

え?婦人科?
どこでどう間違えて、婦人科などに来てしまったのだろう。
だがしかし、躊躇してる暇はない。

「あの!僕は男なんですけど!!」
一瞬の沈黙。

「あっ!」
「ほ、本当だ」
医師の右手が、花月の大事な部位をまさぐる。
「う・・・・」
「なぜ、男の君がここへ?」
「僕が聞きたいです!!」
「確かに・・・・・」

「あら〜なにか、手違いがあったようですね」
しゃあしゃあと非を認めず、何事もなく内科に案内されることに、激しく憤りを感じながら、
ここからは、ごくごく当たり前に、世間一般の人が受ける往診をさせられた。

「ん〜風邪ですね」

(だから!最初から、そう言ってるじゃないか!)
叫びたい症状を理性で抑え、薬をもらって病院を後にした。

実に変な体験だ。
非現実的、しかし、紛うことなき事実。
この容姿で、女性に間違われることは、日常茶飯事だが・・・

「やれやれ、あのまま、股を開いていたら、どんな目にあったか・・
皆でよってたかって、見るんだもの・・・」

しかし、女性というのは、強いものだ。
(あんな恥かしい格好を他人にさらすなんて・・・・
 僕は、十兵衛にだけだからいいけど・・・)

「十兵衛に・・だ・・け・・」
そんなことを考えてる自分が急に恥ずかしくなった。
「は、早くかえろ・・・」

花月は、小走り気味に家路を急いだ。
しかし、今回の恐ろしくも有り得ない病院の間違いのことを十兵衛が知ったら、
あの婦人科の医者に殴りこみに行くに違いない。
このことは、自分の胸に永久に封印しよう、いや、もう消滅してしまえばいい、と思う花月であった。

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ふーかさんの昼メロ51番目です。私が毎回思い付きで色んな人を出すので、辻褄合わせに
お手数かけてもうしわけございません(汗)
風邪ででちょっとけだるげな花月が可愛いです。

実は途中まで医者=赤屍さんがご登場??かとドキドキしておりました。
…普通のお医者様でよかった(笑)
しかし、ドクタージャッカルの婦人科ってある意味
安心できそうです。なんかものすごく機械的に物事進めてくれそうで。
…しかし出産の際は ちょっと嫌だ(笑)